「深海の船」を読んで。

映画監督の西川美和さんが小学館「STORY BOX」にて連載されている、ノンフィクションノベル『深海の船』。

同じく映画監督の岨手由貴子さんがSNSでリンクをシェアされていて、すぐに読んで、心ぶん殴られた。


皆さまも、ぜひ読んでみていただきたいです。たぶん一瞬で読めちゃう。


とにかくわたしには、ものすごく胸に刺さって。


その刃が抜けない。

心がザワザワする。



ここは自分のnoteなので本音で書くけれど、
私は自分がキャリアを語れるほど売れてないんよな、そんな働けてないよな、という引け目を常に感じていて
でも親であることには無名も有名も関係ないし、感情は人と比べるものでもないしな、というのも本音で
その相反しているけどどちらも素直な強い感情がせめぎ合って、いつも妊娠・出産を経ての仕事への気持ちとかをハッキリと語ったりはできないなと思っていた気がする。


でもやっぱり、妊娠・出産を経てわたしなりにだけどこの業界や働き方に色々と思うことはあるし、考えることもあって、
それもあって自主企画で子育てをしながら映画を撮ろうと動き出したりしていた。


ノベルに書かれていた

“映画の現場は天候やらトラブルやらさまざまな要因で予定が立ちづらく、〜子供の有無にかかわらず、みんな人生設計がたたないんですよね。”

というのは本当にまさしくそう!と思うし、


“「好きなことをやってるんだから(やりたいんだから)我慢しよう」とか「こういう働き方だから子供を見られなくても仕方ないのよね」と、周りにも自分にも言い聞かせていましたが〜”

というのも、わかる。

なんというか、暗黙の「この業界で完全に両立なんて絶対無理っしょ。今はどっちなのか、選ばなきゃ。」という意識が自他ともにあるよね。もはや潜在意識レベル。


そして

「全ての人が子供好きではない」

というのはわたしも前からすごく感じていることで。


何を隠そう自分は割とそのタイプなので
子供嫌いではないけど、大好き!でもない。もちろん我が子は可愛いし愛しいけど、いまだに他のお子さんに対してはそういうドライな感覚もあったりするし、
それもあってか、親同士であっても「何かあったら頼ってね!お互い子供を預かり合おう!」みたいな声掛けを自分からは出来ずにいるような気がする。


だからそういうの出来る親御さんたちすごいなーーと尊敬するし、
こんな考えだとわたしはどんどん孤立していくのかな。とか思いながらも、なかなか自分の感覚を変えるのも難しいわけで。

娘も慣れていない人だと人見知りしまくるのもあり、
結局自分不在でも頼れるのは夫、両親、保育園、とか限られたコミュニティになってしまって
それが自分の一人行動・働き方の範囲を狭めているのだろうなとも思う。


でも一方で、

今の年齢の娘と、今しかない時間を余すことなく一緒に過ごしたい
子どもはいずれ家族から自立していくから、今はできるだけ側で、この掛け替えのない時間を共に過ごしたい

と思う気持ちも本音で。

ここでもまた、相反する強い本音と本音のぶつかり合いを起こしながら、
その時々で悩みながら、家族に相談しつつ選択しながら、生活している気がする。


兎にも角にも、

西川さんも仰っているように子育て世代のキャリアのことってすごくセンシティブで、且つ子供はおらず業界第一線でバリバリに働いている方も、
子育て真っ只中で日々に追われている方も、
どちらも自分のコミュニティでめちゃくちゃハードに働いているから、ゆっくり他者の話を聞く時間なんてないし相手の境遇を想像するしかないんだよね。

あまりに暮らす世界が違いすぎて、対立する、というほど相手の生活や気持ちを知ることもない。


でも

今回その個人の想像を超えたリアルな生の声を皆さんのインタビューから知ることができて、西川さんが正直に語ってくださっている本音もとてもリアルで、
わたしはこういうのを読みたかった!!!とてもとても貴重な文章!!!!と感じた。


優秀な人材が、妊娠や出産を期に「この業界では子育てをしながらキャリアを積むのは無理」と見限って離れていくのは、
その時の現場にとっては大きな痛手だけれど
人間は忘れていく生き物だし、なんとなく代わりを見つけていって物事は風化していくのだろうし、
そんな中でこの根強い課題を問題提起しできるだけ改善していく(そうできると信じる)ためには、この西川さんのノベルのように人の目に留まるもので発していくのは本当に大切で素敵なことだなと思う。

話題をオープンにすることで、個人の課題ではなく社会の課題として捉えることができたりする。

それによって、他者の知らなかった一面を知ることができるとも思う。

自分が経験していない人生や価値観を、知ることができる。


知る、というのは人々が尊重し合うための何よりもの一歩だと思うから。


そもそもわたしは端くれ過ぎて、業界の人間かもわからないくらいだけども。笑

イチ社会人として、イチ親として、日頃から思うことが色々ある中でこの文章と出会えて、
すごく心えぐられながらも少し心は救われていて、出会えてありがたいなと思う。

にしても西川さんの言葉はものすごく力があるな。
パワー!とかいうスッキリした言葉では片付けられないくらい、渦巻く、重たく濃いものがある。
文章の感触も、西川監督映画みたい。


と、バーっと書いてしまいましたが今日はこのへんで!(唐突)

では、また〜!


近藤笑菜

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近藤笑菜 Emina Kondo
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