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母の口紅
今朝、娘が化粧をしていた。
「この口紅、ばぁちゃんのだよ!じいちゃんが片付けしていて、もらったの。私、小さい頃、ばぁちゃんやママが付けていた赤い口紅に、憧れていたんだよ。」
と、赤い口紅を付けていた。
娘の言葉に私は驚いた。
母と口紅‥イメージが湧かない。
ばぁちゃん、私の母が亡くなって3年目になる。
母の化粧をしている姿は、ほとんど思い浮かばない。
専業主婦だった母の、化粧台には、近所の雑貨屋で買った安物の化粧品。普段使わないものだから、何年も使っていた。
化粧する姿を見た記憶すらなかった。
家事と内職で荒れた手、口紅だって、一本しかなかった。
そんな母がおばあちゃんになった頃、父の仕事の手伝いをするようになって、人前に出る機会が、増えて、毎日化粧をするようになった。
それでも、小さなポーチに入るだけの簡単な化粧品でささっと、化粧を済ませていた。
お付き合いも広くなり、海外のお土産で、ブランドの口紅をいただくようにもなった。
そんな口紅も使わないからと、私たち娘に惜しげもなくプレゼントしていた。
今朝、娘がばあちゃんの口紅と言って見せてくれた口紅も、ブランド品ではなく、安物の口紅だった。
そうか。
娘に言われて思い出すと、晩年の母は毎日化粧をして、仕事をしていたのだった。
私の母は化粧気のない地味な母だった。
でも、子供の頃の孫から見るばぁちゃんは、真っ赤な口紅を付けていたんです。
私自身も、普段農作業なので、化粧はほとんどすることはない。
出かける時も、ちょこっと塗りたくるだけ。
昔、母からもらったブランドの口紅もそのまま化粧台に眠ってる。
それでも、たまに付ける口紅を、娘はじっと、見ていたんだね。
まだ、小さかった娘にとって、口紅を塗る姿は女性としての憧れを感じていたのだろう。
娘の持っていた母の口紅は、真っ赤ではなく、母らしく抑えた色でした。
大人になった娘は、母や私よりもしっかり化粧をし、口紅も派手な色を使っています。
「この口紅の色、私に合わないからママにあげる!」
と、今度は娘から口紅をもらうようにもなりました。
大人になった娘。
憧れていた真っ赤な口紅を塗って、美人さんになりました。