1995
僕ら今はしゃぎすぎてる夏の子どもさ
胸と胸 からまる指
嘘だろ 誰か思い出すなんてさ
あの頃何千回と聴いた懐かしい曲がラジオから流れてきた。
わたしは瓶底めがねをかけた垢抜けない中学生だった。
あの頃あんなに聴いた曲なのに、新鮮に聴こえた。
夢見がちでミーハーだったわたしは、今家族が食べた朝食の食器を片付けている。
淡々と過ごす日々。旦那は優しいし、子どもは愛しい。
ラジオを消してテレビをつける。
ニュースに見覚えのある顔。
胸がきゅっとした。
中学の頃好きだった人。
背が高くて頭が良くて、鼻詰まりの声がたまらなく好きで仕方なかった彼だった。
わたしは彼に夢中だった。
自分に自信なんかなかったけど、気持ちを押さえきれなくて告白してしまった。
彼は走って逃げていった。
それ以来ぶりに顔を見た。
思わず左手薬指を確認してしまう。
独身?みたい
今はあの頃のわたしじゃない。
だからわたしから振ってあげよう。
でも少しだけ
頑張って逃げてください。
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