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妊娠そしてNIPT -出生前診断を受けるということ-

息子の時にも出生前診断という選択肢があったが、まだNIPTはそこまで知られていなかった。
そして「この子は大丈夫だろう」という気持ちがなぜだかあったし、
何かあったとしても初めてちゃんと育ってくれているお腹の中のその命を諦めることが考えられなくて、
結局受けなかった。

子どもを育てるということがどんなものかわからなかったし、
正直受けるべきか受けないべきか、よくわからなかったというのが本音だった。
恥ずかしいけれど、どんな子でも絶対に育てる、なんて気概に満ちた考えで出生前診断を受けないと決めたわけではない。
と今なら思う。
どんな子でもありのままを受け入れるのが親だ、なんていう一見綺麗な価値観も、その時の私は持っていたのだけれども。

時は過ぎて38歳の年になった時。
私の周りの親しい同世代の友人でここ数年で妊娠・出産している人はほぼ100%みんなNIPTを受けていた。
血液をアメリカに送るだけで性別まで初期にわかってしまう、
すごいなぁ、
友人の話を聞いて、そんな理解だった。
みんな、心の奥でどういう思いでNIPTを受けたのかはわからない。
でもみんな、とっても元気で可愛い赤ちゃんを出産していた。

息子を2年育ててみて、
育児というのは可愛いだけでは済まないこと、
自分の生活、人生を地面の底から180度変えてしまうパワーを持っていることを実感した。
そして、次に生まれてくる子にもし障害があったら、
今いる息子が大きくなった時に苦労をかけてしまうかもしれない。
そんなことを夫に話し、
「今回は出生前診断受けようか」
となった。
今思えば、その決断がどれだけ重いものなのか、全然私と夫はわかっていなかった。
けれども、その重さを本当に理解してから受けられる人なんて、
どれくらいいるのだろうか。

出産しようと思っている産婦人科へ健診に行った時すでに9週だった。
NIPTは10週から受けられる。
結果が出るのは2週間後。
NIPTが陽性だった場合には確定検査である羊水検査を15週以降に受ける。
羊水検査も結果が出るのは約2週間後。
日本の法律では妊娠を自分の意志で中断する、つまり、中絶できるのは
21週6日まで。
すなわち、NIPTで陽性が出た場合に、羊水検査の結果を待って最終決断するにはたったの数週間しかないのだ。
家族全員の人生、命に関わる問題を、たったの3週間とか4週間で決めなくてはならないのだ。しかも何食わぬ顔で日常生活を送りながら。
そんな試練に慣れている人など、いない。
だからこそ、判断するのに十分な情報なんて集められるわけもなく、
最終的にはその人や家族達の人間性、価値観、環境で決めるしかない。

一連を経て私はようやく気付いた。
誤解を恐れずにいうと出生前診断の本質は、人工中絶なのだ。
中絶するのか、しないのか、
それを決めるための検査だ。

もちろん、陽性であっても産むと決めて、ただ何かあった場合に産後適切な措置を取れるようにするための検査という側面もある。
でも、陽性であっても産む、と最初から心に決めていても、
実際陽性となり、産後生きられる可能性や、他の合併症の話が出てきた場合など、いえ私は初志貫徹でいきます、なんて言えるような簡単な話ではないと私は思う。

一方、病院側としては出産時のリスク等が事前にわかるのでメリットもあると思う。
また今の制度だと、非認可施設でもNIPTを受けることができて金額は大体20万円ほど。受けられる施設はどんどん増加しているようだ。いいビジネスにもなっているんだと思う。
NIPTの存在は全く否定しない。
けれども、ある時SNSで目にしたNIPTの広告。
「5.5万円から受けられます」
「13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーの中からどれかおひとつ」
衝撃だった。
そして、その命の重さと真逆を行くような、まるで、デパートのショッピング感覚の広告。
怒りとかそんなものではない、なんとも言いようがない、とてもとても悲しい気持ちになった。

出生前診断の持つ意味の重さを置いてけぼりにして、
安心材料としての手軽さだけを全面に押し出すのは違和感しかなかった。

どれかおひとつを選んでそれが陰性であっても、他の2つの可能性は?
どれかおひとつを選んでそれが陽性だった時の、その後は?

5.5万円という手軽さを出しておいて、
いざ受ける際にはどれかおひとつを選ぶのは意味がないことを説明し結局全部受けることにしてもらうようなビジネス戦略なのか。

私は10週の妊婦健診で胎児のNT及び全身の浮腫みを指摘され、
その後のNIPTで21トリソミー陽性、
羊水検査で陽性確定、
20週で中期中絶をした。
2023年1月末の話だ。
まだまだ心に色んなものが残っている。
何が正解かもまだわかっていない。

この経験を少しでも誰かの役に立てたらと思って、
そして誰にも言えない心の中を吐き出す場が欲しくて、
noteを初めてみました。
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引き続き宜しくお願いします。






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