2つの「四季」~ヴィヴァルディとピアソラの場合~

もう明日に迫りましたが、行きたいコンサートの1つ、ヴィヴァルディの「四季」と、アルゼンチンの作曲家ピアソラの「四季」を一気に聴くという、盛りだくさんな内容。

7/8(日) 14:00開場 14:30開演
タンゴ・バロック~2つの「四季」コンサート~ @鯖江市文化センター
http://comfort-sabae.com/events/



チラシには「パブロ・エスカンデによる新感覚室内楽」とあって、パブロ・エスカンデ誰よと思って調べたら、ピアソラと同じアルゼンチン・ブエノスアイレス出身の若い作曲家だそうで。http://www.pabloescande.net/

いろいろな編成で演奏されるそれぞれの「四季」ですが、今回は彼が編曲したバージョンの2曲を、世界初演ということです。出演者も変わった経歴の人が多くて、尺八弾く人がいたり、作曲家自身もチェンバロ&ピアノで参戦したり。



言わずと知れたヴィヴァルディの「四季」は、春・夏・秋・冬の4曲でできています。1曲ごとに、雰囲気の違う曲が3つセットになっていて(1楽章、2楽章、3楽章と呼ばれます)、楽章の間に拍手をすると「コイツ、シロートだな笑」と隣のクラシックオタクに心の中で馬鹿にされて悔しい思いをするので、どんなに気分がアガっても楽章間での拍手はガマンしてください。

なんでそんな気を使う楽章があるかというと、ヴィヴァルディの「四季」にはもとになる詩がありまして、そこに表現された四季折々の情景や物語をきめ細かく表現するためなんです。まとまりとしては1曲なんだけど、速さや明るさ、リズムもガラッと変えたい、本でいえば1章、2章…と区切るみたいな、そんな感覚です。
詩:http://sakura-minnesotajournal.blogspot.com/2015/02/blog-post_9.html

ヴィヴァルディの「春」を聴くとき、私がいつも思い出すのは、気温がまだ10度もいかないくらい、長い冬の厳しさが少しゆるみ、やわらかい日差しが差し込む3月の終わりはウィーン、サングラスにノースリーブと短パンでひなたぼっこをするウィーン人です。いろんな意味で寒いやろ。日差しが嬉しいのは分かるけど。

あと歯医者の待合室。これから恐ろしいことが待っているという現実と、やたら明るく上ずった小鳥のメロディのコントラストが、得も言わずグロテスクであります。



いっぽう、ピアソラは南半球のアルゼンチン出身ですので、1年の始まりは「夏」でございます。「四季」も、夏から作曲して秋、冬、春と続きます。なんでもこの「夏」、夜遊び好きなピアソラが、ある収録の前日に「おぇー!収録明日やげ!!」と気づいて一晩で仕上げたそうです(笑)。

アルゼンチンといえば情熱的なタンゴです。ピアソラ自身も熟達したバンドネオン奏者で、タンゴをこよなく愛していました。タンゴにクラシックやジャズの手法を交え、新しい表現を追求していたのですが、当時は地元の人たちから異端だと言われ、命さえ狙われたとか(汗)。しかし聴いてもらえれば分かる通り、その音楽に独特の哀愁と興奮を感じられずにはいられません。



そんな2人の作曲家、共通するのは時代に負ケズ、時代の先を行こうとする反骨精神です。ヴィヴァルディは、神と教会の厳格な世界から、人間的な感情や自然の欲求が解放されることを求めた18世紀に。ピアソラは、第二次世界大戦後、独裁の南米から逃れ、自由を求めたさすらいの音楽家として。激しさとおだやかさ、強弱、速さとゆるやかさが同居する2人の作風は、そんな疾風怒濤の時代を反映するようです。

ちなみに、ギドン・クレーメルというヴァイオリン界の重鎮が、すでにこの2つの「四季」を交互に演奏するという珍プレイを残している模様。動画はそのアレンジよりピアソラの春(参考:https://diamond.jp/articles/amp/14719?page=4&skin=amp )。

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