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『トップガン マーヴェリック』(2022)

 1986年に上映された、ジェネレーションXの代表的な作品である『トップガン』の続編。
 そして、2022年9月現在、世界的にもっとも興行収入を上げている映画、『トップガン マーヴェリック』です。
 実はトム・クルーズのことがあまり好きではなかったので、観る気はなかったのですが、、、たまたま友人と他の映画を鑑賞したさい、マーヴェリックの予告編を見て、一気に興味がわき、観てきました。

感想|シンプルだけれど引き込まれるストーリー


 結果、最高でした。
 捻りやどんでん返しなどはなく、とてもシンプルなストーリー構造で、この後どうなるか想像がつくほどでした。けれどシンプルな分、俳優の演技や戦闘機のアクションといった迫力ある映像がとても見ものでした。
また、キャラクター一人一人の個性がはっきりしていており、キャラクター同士の確執や友情の演出も的確で、観客を満足させる映画だと思います。

 前作を知っている観客に対するファンサービス的なオマージュもあり、だからといって過去にのみ焦点を当てているわけでもなく、新規のファンも楽しめる映画です。

 以前、フランスの俳優ファブリス・ルキーニはアメリカ映画に関してこう評しました。

『アメリカ映画は大きな資金で小さな物語を作り、
フランス映画は小さな資金で大きな物語を作る』

 実際、今回の『マーヴェリック』では、友情、家族愛、そして献身という小さな物語を、最高の戦闘機パイロットを育成するトップガンという大舞台で展開させます。

 個性や自由を強調するジェネレーションXの代表者であった前作のマーヴェリックが、今作ではトップガンの教官となり、新しく成長する世代に何を伝えるか、が映画の鑑賞ポイントの一つだと思います。

映画を貫通する哲学

 トム・クルーズはスタントを使わず、危ないアクションシーンを実際に演じることで有名な俳優です。彼は俳優がアクションシーンを実際に演じることで、より成熟した演技が誕生する、という哲学の持ち主なのです。そのため、彼はグリーンスクリーンを通してアクションシーンを撮影することを批判したりするのですが、その批判は逆にCGを利用して撮影する俳優たちから「実際は危なくなくても、危ないように演じるのが俳優の仕事だ。」と批判されます。
 とにかく、このトム・クルーズの哲学は今回の『マーヴェリック』の制作過程でも表れています。
 『マーヴェリック』の俳優たちは三ヵ月の訓練を受け、本物の戦闘機に搭乗し撮影しています。水没する戦闘機から脱出する訓練まで受けたそうなので、かなり強度な訓練だったことが伺えます。しかし、俳優がグリーンスクリーンではない、実際の空で撮影することで、より臨場感ある映像を観客は観ることが出来ます。
 『マーヴェリック』は、「映画館の大画面で見るべき映画」という評価がなされています。ただ、実は配給元であるパラマウント・ピクチャーズはコロナ禍の公開日延長による損失で、作品を自社のOTTで公開しようとしていました。しかし、それを阻止し続けていたのがトム・クルーズです。スタントではなく、俳優が演じる時より良い演技が誕生する、という哲学と同じく、OTTの小さな画面より、映画館での大画面による鑑賞がより良い体験を提供する、という哲学をもとにです。
 技術の進歩によるCGやOTTサービスの普及に抗い、制作・公開された映画『トップ・ガン マーヴェリック』は、映画の持つ本質的な魅力を私たちに教えてくれます。

 このように、作品と時代を貫通する哲学は、『危ないシーンも実際に演じる』というトム・クルーズのスター性も相まって、より強固なものになり、作品の価値を高めています。

最後に

 映画本来の価値を下げる、と言われますが、CGは表現の幅を広げ、OTTは多くの人に作品を届けます。映画を映画館の大画面で見る、というシネマの在り方は、いつか変わるかもしれません。

 「しかし、それは今日じゃない(But, Not, Today.)」

『トップガン マーヴェリック』でのセリフ

大画面を通した、シネマでの鑑賞の力を信じ、そして見事にその価値を証明した『トップガン マーヴェリック』。
力強い魅力を持つ今回の作品は、娯楽性と作品性において人々と社会を満足させる作品です。


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