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インタビューとは、飾らずにその人にありのままで向かうこと / INTERVIEW ABOUT INTERVIEW Vol. 9 川原 卓巳さん

2020年1月から、インタビュー・ライティングをテーマにしたインタビュー特化型ライター養成講座「THE INTERVIEW」を主宰されている宮本恵理子さん。宮本さんが「インタビュー術を伺いたい!」という方に、日々の工夫や心がけを教えていただく公開勉強会「INTERVIEW ABOUT INTERVIEW」は、9回目を迎えました。

第9回目のゲストは、LA在住のプロデューサーでKonMari Media inc.CEOの川原卓巳さんです。"KonMari"とは、こんまりさんこと近藤麻理恵さん。川原さんは、こんまりさんの価値を世界に広げるプロデューサーであり、家族としてのパートナーでいらっしゃいます。

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インタビュイー(語り手)
川原 卓巳さん
KonMari Media Inc. CEO・プロデューサー
Netflixオリジナル ”Tidying Up with Maire Kondo” エグゼクティブプロデューサー

1984年広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材コンサルティング会社に入社し、のべ5000名以上のキャリアコンサルティングおよび企業向けのビジネス構築・人材戦略のコンサルティングを行う。近藤麻理恵とは学生時代からの友人であり、2013年以降は公私ともにパートナーとして彼女のマネジメントとこんまりメソッドの世界展開をプロデュースする。
2016年にアメリカに移住後、シリコンバレーとハリウッドの両方に拠点を置きながらKonMariのブランド構築とマーケティングを手がけるほか、日本発のコンテンツの海外展開もプロデュースしている。2019年に公開されたNetflixオリジナル TVシリーズ”Tidying Up with Maire Kondo” のエグゼクティブプロデューサーでもある。同番組はエミー賞2部門ノミネート。世界で最も観られたノンフィクション番組に選ばれる。2020年12月に自身初となる著書『Be Yourself 自分らしく輝いて、人生を変える教科書』を刊行。

Twitter:
https://twitter.com/takumikawahara


聞き手は「THE INTERVIEW」講師、宮本恵理子さん。

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インタビュアー(聞き手)
宮本恵理子/フリーランスライター・THE INTERVIEW講師
1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP)に入社し、「日経WOMAN」や新雑誌開発などを担当。2009年末にフリーランスとして独立。
 主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。一般のビジネスパーソン、文化人、経営者、女優・アーティストなど、18年間で1万人超を取材。ブックライティング実績は年間10冊以上。経営者の社内外向け執筆のサポートも行う。
 主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『新しい子育て』など。担当するインタビューシリーズに、「僕らの子育て」(日経ビジネス)、「夫婦ふたり道」(日経ARIA)、「ミライノツクリテ」(Business insider)、「シゴテツ(仕事の哲人)」(NewsPicks)など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。

Twitter:
https://twitter.com/ericomymt

<宮本さんの目撃情報>

ーー私が卓巳さんにインタビューさせていただいたり、卓巳さんがどなたかからインタビューを受けているのを拝見していて感じた目撃情報をみなさんに共有してもよろしいですか。

まず、12月に刊行される卓巳さんの『Be yourself』 を一緒につくらせていただいたり関連する対談や取材をさせていただく中で気づいたのは、卓巳さんの「うなずき力」がハンパないこと。質問をしているのにすごく受け入れられている感じがあるのです。聴き手をとてもナチュラルにのせることができる方なんだなと思いました。
2つ目は、『Be yourself』にも書かれている根幹でもありますが、プロデューサーとして、人が持つ本来の力を引きだしていく過程で、観察や傾聴をしっかりされていること。
3つ目は、卓巳さんが対談される時に、お相手の方がとても弾けることなんですよね。最近の例で言いますとSNSなどで記事をご覧になった方もいるかもしれませんが、『夢をかなえるゾウ』著者の水野敬也さん。あまり表に出られない、静かな方という印象でしたが、卓巳さんの前で「大爆発」されました(笑)。またnoteでとてもブレイクされている作家の岸田奈美さんも、「すごく話しやすかった」と言ってお帰りになりました。
こういった場面を見聞きして、卓巳さんにはたぐいまれなる「聴く力」ががあると確信し、インタビューが本業ではいらっしゃらないものの、ぜひ学ばせていただきたいと思っております。

<聴く力をどこで発揮?>

ーーまず、卓巳さんが「聴く力」を発揮されてる場面は、どういうシーンだと思われますか。

僕は、今回この機会を頂いて、改めて聴くことについてすごく振り返ったんですけど、究極的には、インタビューもコミュニケーションの一部だと思っています。「僕の前でしか話せないことがある」とか、「僕にしかつくれない空気感が生まれている」といろんな方から言っていただけることが多いですし、自分自身でもそうだなと感じています。

<すぐに人とつながれるのが強み>


なぜそれができるのかを一言で言うと、僕は人が無茶苦茶好きなんですよね。相手のことを好きだから興味をもつし、とても少ない時間で相手の安心感をつくることができる。あっという間に懐に入れるというのが僕の強みです。その根幹にあるのは、僕が人のことを好きだっていうことなんですよね。

地球上に約78億人がいて、それぞれの人と1秒ずつでも会おうと思っても会うことは一生かけてもできない。3秒以上一緒に居ることができ、「誰々さん」と認識できた相手は、運命の人だと思っているんです。

ーーたまたま今日この日、この時間に会えたっていうことで、何かがあるっていう風に信じられるということですか?

「何か意味があるんだろうな。じゃあ、その意味ってなんだろう」と考えることに興味があるから、相手のことをもっと知りたいし、その上で自分にできることがあるんだったら、何かしたいと即座に思っているんですよね。

ーーだから、卓巳さんに会う人は、初対面でも 受容されていると感じるのでしょうね。自然になさっていらっしゃるのかもしれませんが、それはどういうふるまいや言葉にあらわれるているのですか?

ちょっと怪しい話になってしまうのですが、「気」の世界の話だと思っていて。相手との波長を合わせるために、めちゃくちゃ意識しているのは、リズムとエネルギーの大きさの2つです。例えばあいづちも「気」の一つで、相手の話すスピードと自分の聴くスピードをチューニングしていく。「この人早口だな」「ゆっくりだな」「強いな」「弱いな」とかっていうのがあるじゃないですか、人それぞれ。それにうなずきながら、自分も合わせていくことを最初にやっています。   エネルギーが高くて速い人も、逆に麻理恵さんみたいにすごく静かでゆっくりな人も、どちらにも合わせられるっていうのが僕らしさ。どっちも得意だし、どちらも好きです。最初の段階では、究極的に自分を“無"の状態にして相手に合わせるということを意識しています。相手とつながったなと思えたら、そこからは、むしろ自然体に戻って、自分が興味あることを聞いたり、ボケたらつっこむ、自分から率先してボケるといったことをやっている気がします。先ほどの水野敬也さんの例でいうと、以前お会いした時の印象から、どちらかと言うと声を張るタイプの方ではないと思っていました。ところが水野さんは対談当日、人前に出た途端にサービス精神を出して、大きな声で話されたのです。そこで当初の予定とはチューニングを変えて、水野さんに合わせて僕も大きな声で話すようにしました。

ーーなるほどね。逆に、お話を展開していかなきゃいけないという場面で、相手の方がおとなしめでなかなか言葉が出てこない時はどうされますか。

僕から自己開示を早めにしています。聴くということですごく大事にしてるのが”器の大きさ”で、人は場や空間、余白など守られたスペースがあるとしゃべりやすくなるんです。自らが先に何かをさらけ出したり馬鹿をして、安心・安全だと思われる場をつくるんです。すると、そのあとは何を言っても大丈夫だという雰囲気になるのです。なるべく馬鹿を早めにやることを意識しています。相手のタイプは見定めながらも、キワキワなところでいつも攻めている感じです。「このへん好きでしょ?」という形でいろいろ試す(笑)。そのためにインタビューに限らず、人と話す時に意識してるのは、事前に調べられる限りの情報は絶対に入れるということです。




<相手に会う前に、インタビューは始まっている>


ーーどういう準備をされてるんですか。

ネット上に出ている記事は全部読む。その人の代表作は読む。直近でその人が話している動画もあれば見る。こういった準備は特にオンラインのコミュニケーションが増えた今では、最低限の礼儀だと思っています。事前に知っていたほうが、直接会うからこそ話せる内容を話せますよね。初対面の方と緊張せずに話せるコツは、事前になるべくその人のことを理解しておくこと。最初に「読ませていただいてるんですけど」って言った時点で、相手にとっては「自分のこと、興味持ってくれているんだ」という形で、1つハードルを超えられますよね。

ーー卓巳さんはインタビューを受ける側のアレンジもたくさんされてきているから、その辺の勘所も確かなのではないかと思います。

たしかに麻理恵さんの横にいてすごく勉強になりましたね。僕は世界190カ国からのインタビューをアレンジし続け、麻理恵さんが答えているのを見ているじゃないですか。インタビュアーにとっては1回目だったとしても、麻理恵さんからすると何百回・何千回目のインタビューだったりするわけです。相手がきちんと調べてきてくれている人なのか、出たとこ勝負の人なのかはやはり明らかにわかるんですよね。なので自分が相手からインタビューや対談の時間をいただくときは、相手の情報で事前にわかることは、できる限り知ってから臨みたいなって思うようになった。できるだけ助走しておいた方が、そのあと絶対速く行けるわけで。インタビューは、相手に実際に会う前にすでに始まっているのです。

<プロデュースという面での聴く力>


ーー今まで伺ったのは、対談とか実のインタビューの場面についてでしたが、"プロデュース"という面での聴く力についてはどうでしょうか。卓巳さんご自身の麻理恵さんに対してやっていらっしゃることはもちろん、いろいろなプロデュース活動が始まっているそうで、ここで大事にされている心がけを教えてください。

普段からインタビューを受け慣れている方や僕にプロデュースをして欲しいと言ってもらえるような方は、人に話す機会や普段から発信する機会が多く、考えずともスラスラと話ができる定型文をお持ちのことが多いんです。でも、その定型文は正直あまり聞いていなくて、ニコニコしながら全部聞き流してるんですよね。定型文が出終わって、「実は」という話が出てきた段階に来て初めて、プロデュースのスタートだと思っています。
会話の中ではインタビューで聴く・聴かれるという立場じゃなくて、ただ単に人と人として向き合って、一緒に楽しんでるという領域までいかに行くかが大事かなと。本来その人が一番したいことを自然体でできる場をつくるのが、その人と一緒に楽しむということだと思うわけ。それこそ『Be  Yourself』だなあと。人が何も飾らず何も恐れず素直にいられる時間をつくれたら、楽しい状態になるはずなんですよね。そこに行くためには、事前の準備で既知の事実を増やして、当日直接聞かなくていいことを増やすことで、相手が人からどう見られるかと気にする緊張や恐れから解放された状態へと導く。相手がナチュラルな状態になっているところに、いかに自分が早く入れてもらえるかという挑戦に取り組んでいる気がしています。

<頭ではなく、体で聴く>


ーー本人が気づいてない本来の魅力や、「本当はここを発揮したら伸びるのに、いろんな事情で発揮されていない部分はそこだよ」と当てる。そんな働きかけを卓巳さんはやってきたと思うのですが、どういう問いを立てているのですか。お相手の魅力は、卓巳さんのどんな言葉によって引き出されているのでしょうか。

何なんでしょうね。あまり定型化してないんだけど、僕は頭であまり聴いていなくて、体で聴いていて、相手の話を聴く中で鳥肌が立つ瞬間があるかどうか。それだけなんですよ。鳥肌が立つ時って大体うまくいく。鳥肌が立っていないのに頭でこねくりまわして、こうやった方がいいんじゃないかって思っている時は、だいたいどこかでかけ違いが起きていることが多いです。

ーー卓巳さんはうなずきやリアクションのバリエーションに、五感を使った反応が多いんですよね。「鳥肌立ったわー」とか「ぶるっときた」とか。
卓巳さんが面白がってるのが、ビジュアルで分かりやすいんですよね。

五感を豊かに働かせられるくらいに日々いい状態でいるというのは、意識しています。恐れがあったり、誰かにやってないことがあって後ろめたい気持ちがあったり、してもらったことに感謝していなかったりなど、ちょっとでも引っかかってることがあると、そこにすごい気を取られているのを感じるんですよね。自分の心に引っかかりがない状態を保っておくことがとても大切。完璧にゼロにするのはなかなか難しいんだけど、自分がほかに気にしないといけないことがなるべく少ない状態で目の前の人に向かえるようにしておく。それが、プロデューサーとしてというよりも、人としてとても大切だと思うようになりました。

ーーZoomのチャットにコメントも来ていますが、卓巳さんは表情がとても豊かなんですよね。

ありがとうございます。表情をはっきり表に出すようになったのは、海外に来てからです。日本にいる時は、空気を読んで控えていました。
でも海外に来てから、言語も違う中で、自分っていう存在をきちんと理解してもらうためには、自分のことをオーバーなくらい表現しておかないといけないと気づいたんです。僕は英語ができない状態で渡米したので、信頼してもらうには、まずはちゃんと相手の話を聴くことが必要だったんですよね。渡米して3か月くらいで英語耳がちょっとずつ育っていて、言ってることの6割くらいは聞けるようになりました。わかっている6割を最大限アピールし、表現することが、僕の存在価値だったんですよね。アメリカに行って、このリアクションの豊かさを身に着けることができたのです。

<聴く力を体得した原体験は、いじめ>


さらにさかのぼると、人に気を向けるようになったのは、小学4年生の時のいじめられた経験です。そこから人が怖くなって、相手の本心はどこにあるのかを必死で考えるようになったのが、今、人に気を向けるということの原点にあります。この経験はあって良かったなって、今になって思います。

<素っ裸な自分でありたい>

加えて、聴く力は、コンサルタント時代の経験によっても培われたと思います。その時は武者修行のように、1時間とか90分ぐらいの時間の中で、商品を販売するまでのコミュニケーションをしていました。中小企業の経営者の方、先生とかアーティストの方から主婦の方まで、会っていない業種の人はいなかったのではないかな。
昼間のカフェのテーブルについて、「初めまして」から5分ぐらいで「あなたの理想の人生って、何ですか」というような話をしていました。この経験があるから、会ってすぐに本質的な話をすることが、僕にとっての当たり前になりました。例えば、採用面接のインタビューとかでもすぐ、人生の目的について聞いちゃうんです。いきなり直球勝負だけど、それ以外のことに興味がなくなってしまって。それは良くないことなのかもしれないけれど、僕は本質的な会話がすぐできる人と生きていきたいと思っているのです。

2020年12月に出た本が『Be Yourself』とちょっとかっこいいタイトルになっています。宮本さんと一緒につくった本です。制作裏話を明かすと、僕自身があけっぴろげに生きている面があるためか、制作過程で『素っ裸』というタイトルになりそうな時がありましたよね(笑)。言葉の印象は大違いですが、意味合いとしては『Be Yourself』と『素っ裸』はとても近いです。あるがままで生きて大丈夫ということを自分の人生でも体現したいと思ってるし、目の前の生き方としても伝えていきたい。心の在り方としては、ずっと素っ裸でいたいなと思っています。僕は、極端に言ってしまえば、相手を怒らせるところまで行けたとしたら、それはいいサインだなと思っているんです。絶対その人にとって触れられたくない大切なことがそこにあり、それすらも共有できると考えれば、怒らせることは怖くないと思っています。

ーー卓巳さんにとって、どういう到達点までいけたら、今日の対話やインタビューはよかったなと思えますか。

「楽しかった」ですね。僕はすごく時間を大切にしていて、今日のこの時間も二度とない時間だと思っています。この時間の中で行けるところまで、できるところまで全部出し尽くすのが、僕にとってのミニマムライン。それを相手と共有できた時に、「あー、楽しかった」って思える。そういうところまで到達できたら嬉しいです。

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ーーここで皆さんからの質問についても、卓巳さんに伺ってみましょう。
Q.最近、川原さんがある記事で、「手放したら入ってきた」というお話をされていました。手放したら入ってくるということは、仕事が増えるだけではなく、他のことでも経験されることが多いのでしょうか。

A.そうですね。わかりやすいのは仕事ですが、すべてのことについてあてはまると思っています。やっぱり本当にときめくもの以外のものを手放すと、そこにスペースができるじゃないですか。時間だけでなく、頭の余力やエネルギーの余裕もできる。その後にもっときちんとときめくものがやってくるんですよ。もらえる金額がそれなりにいいという理由だけで仕事を受けてしまうと、本来やるべき機会やチャンスを見逃すんですよね。また人間関係においても、何となく断れずにつきあいで行っていた飲み会やいろんな会合などを勇気をもって手放すと、そこの空いたスペースに、直接人に会うということではなかったとしても、空いた時間でツイッターをやったり、本を読んだりする。そうするとそれが縁になって、もっと自分がときめく縁に繋がっていくのです。それは先に「手放す」と決めて動いたから入ってきたので、「入ってきたから手放す」という順番ではない。渡米の時も、日本での仕事を結果的には手放すことになったのですが、だからこそ世界につながるチャンスを掴むことができた。頭では理解していたつもりことですが、本当にそうだなって、自分の経験から思います。

<現場にゆだねる勇気を持つ>


ーー今の話、インタビューの現場の組み方にも通じるなと。想定質問とか、「これ聞かなきゃ」という計画にとらわれてしまうと、変な違和感がでるんですよね。流れの中で、これは全然想定してなかったものの、絶対これを聴いた方が面白いっていうのを信じられるかどうかが大事。でもたいていの場合は時間制限があるから、結局選択になるんですよ。これを聞いたら「予定していた質問その3」は聞けないなってわかっているんだけれども、路線変更してみた時の方が面白がっていただけるんです。

そうそうそう。いいエネルギーのものができる。番組をつくっていても一緒で(*注:川原さんは、動画配信サービス「Netflix」でシリーズ化されているこんまりさんの片付けメソッドをテーマにしたドキュメンタリー番組を、プロデュースしています)、僕らの番組はドキュメンタリーのスタイルなので、シナリオがない。とはいえ、カメラクルーや撮影時間などが決まってる中で、どこで何が起こるのかっていうのはある程度設定しておかないとライトのセッティングやクルーの配置などが決まらないので、ギリギリまで考え尽くすんです。でも現場に出たらもう、その場の流れに委ねて、コントロールをなるべく加えない。すると、そこに感動が起こるんですよ。これが慣れてくるとつい、ちゃちゃちゃって考えて無難につくりに行きたくなっちゃうのよ。でもそれは自分の理想イメージを絶対に超えて行かないから、”委ねる勇気”を持つことが大事。


ーーインタビューをする側もされる側も、特にされる側が慣れてらっしゃると、卓巳さんがさっきおっしゃったように「想像できるね、この1時間」みたいになり、今この日、この時間に聴く意味がなくなっちゃう。私もこれからもどんどん捨てていきます。ここで、この勉強会を運営してくださっている西村創一朗さんは、モデレーターとして現場に立つことが多いので、卓巳さんに質問したいこともあるのではと思います。西村さん、いかがですか。

Q:(西村)ありがとうございます。卓巳さんとの出会いは、僕が就活生の時です。卓巳さんは僕が受けた会社の人事担当者で、やはり当時から懐に入る力がすごいなと思っていました。今日のインタビューの冒頭でも、テンプレート的な話ではなく、ここだけの話とか、「卓巳さんだから言うんですけど」ということをを聞き出すのが一番楽しいというお話がありました。一番搾りの話を見つけて引き出すというこだわりは、相手との信頼関係の構築とは別に気を付けられていることだと思います。ここを掘ったら面白そうだなと、どのように判断されてるのかをぜひ聞いてみたいです。

A.その人の人生の目的の核心に話を持って行くことは意識しています。どの切り口から話し始めても、たどり着くのは、その人の存在意義だと思っているんですね。なので、そこに近づくように聴き続けているし、僕がそこにしか興味ないので、その最短距離を行くことになっていると思っています。テクニックとしては、先に僕自身の夢や目標を、しゃべっちゃう。このぐらいの深さとか、こんなレベル感なんだとか、僕を通して気づいてもらえる。僕がそれを先に言うことで、相手からも「私の場合は」と勝手に出てくる感じです。僕自身が『素っ裸』であり続けること、『Be Yourself』であり続けることが、相手にとっての安心感であり、本人の生きている目的により近づく機会になると思って生きているのです。

ーー私が見聞きしたことで補足させていただくと、卓巳さんを昔からご存知の映画プロデューサーの川村元気さんから伺ったのですが、卓巳さんが自らの目的を話す時のスケール感が大きいのだそうです。最終的に世界平和とか、今生きている人達みんなが幸せになるためにこの片付けという価値を広げようとしているんだと。そうすると、リフレクションの効果で、相手の方も「ここまで自分の本来のビジョンを話していいんだ」と大きく夢を語れる、響き合いが起こっているのでしょうね。

それで言うとね、両方あるなと思っていて。僕はそんなに視座が大きい人間ではなかったんですよ、もともとはね。瀬戸内の島から出てきて「ひと旗あげたい」っていう漠然とした夢から始まって、人材教育の世界に行かせてもらって、そのあと海外に行き、麻理恵さんという方とパートナーとして世界を目指すようになって。すると、そこで出会う人達が視座が高い方ばっかりだったんだよね。自分が、それに反応して、視座が高くなっていった。
もう一つあるなと思うのが、ここまでの話からすると、めちゃくちゃ、僕がいい人で、優しい人でみたいに思われるかもしれないけど、実は逆に無茶苦茶ドライで、自分が会う人をものすごく選別している人なんです。なぜなら、一度きりの人生で自分が役に立てる人の数がもうすでに決まっているとすると、誰と会うべきなのかというのは、すごく選んでいる。だからこそ、今ある限られた時間の中ですぐに深い話ができる人にだけ会っているのです。これは僕の役割だと思っていて、それぞれがそれぞれに縁のある人の中で、なるべく生きる目的に近づける場をつくっていく。すると、もっとハッピーな世の中になるんじゃないかなと思ってるんです。

Q:川原さんにとって、その人の存在意義は生まれ持っているものだと思いますか。それとも生きながら構築されるものだと思いますか。それとも、双方ともありうるのでしょうか。

A.とても好みの質問ですね。僕の今の時点の結論は、「両立する」。例えば、もともと自然とできていたり興味をもっていたことが存在意義になっている麻理恵さんや野球選手のイチロー選手のように、子供のころに気づいた存在意義を突き詰めて生きていくというケースもある。それに対して、僕みたいにさまざまな出会いや経験を通して、人に言っても恥ずかしくないような存在意義に変化していくというのもあると思う。大事なのは、「これしかない」「ここしかない」と決めずに、今自分が感じる存在意義・目的に向けて動いていること。動き続けていれば、どこかでまた出会いがあって、変化していく可能性もある。まずはじめに自分という人間を大切にしたり見てあげて、そこに向けて動いてみるっていうことがいいんじゃないか。本にも書いたのですが、今はそういう結論に至っています。

Q:一緒にいる人を選別しているとおっしゃっていましたが、それは、何を基準とするのでしょうか。存在意義に共鳴できるか、などでしょうか。

A:今はご紹介いただく方以外に会えてない状態なので、相手を紹介してくれた人への信頼だけで決めているところがあります。この人といると楽しいなと思える人、真剣に生きている人が好きなので、その人に優先的に時間を取っていたら、そういう人以外に会えなくなりました。時間が有限だから、会う枠が残っていない。家族との時間であったり、自分を良い状態にしておくための時間を優先的にとりたいので。

ーー感想も来ています。お話を聞きながら、自分の理想の生き方と照らしながら、考え続けています。川原さんが、大勢の人達の前で話して、人生に影響を与えている活動は素晴らしいです。

ありがとうございます。多くの人に話すのも、1対1で話すのも、同じ感じ。これは慣れのお陰です。100人の前でも1000人の前でも、同じ感覚で話せると思います。

<インタビューとは>


ーー最後に私からラストクエスチョンをしてもいいですか。あらためて卓巳さんにとって、インタビューとは?

多分嫌がられると思うんですけど(笑)… …、「素っ裸で居続けること」。サウナが好きな人みたいな回答になっていますが、実は本質的な回答をしているつもり。つまり、飾らずにその人にありのままで向かえる状態をめざすこと。そういう状態をつくる意識そのものが多分インタビューなんだと僕は思います。今日ご参加くださった方も、この後録画で見てくださる方も、大切な時間を共有していただいて、ありがとうございました。何かしらでお役に立てていたら嬉しいです。

ーー本の紹介もぜひしてください。

素っ裸改め『Be Yourself』自分らしく輝いて人生を変える教科書という本を出ました。本当に感謝しかございません。自分自身も、麻理恵さんと2人で、何者でもなかったところから、世界で仕事をさせていただくようになりました。その道を振り返った時に、自分の魅力・自分自身が持ってるものを生かして、どうやって生きていくのか。宮本さんのインタビューを通して気づかせていただいたことのエッセンスを、この本にまとめさせていただいきました。自分らしく生きていきたい、自分の価値をもっと活かしたいという方に、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

今日ご参加いただいたオーディエンスの皆さんにも、改めてお礼を申し上げます。購入していただいたチケットは、卓巳さんにもご理解いただきまして、チャリティーでNPOに寄付ということにさせて頂いております。
卓巳さん・ご参加の皆様、本当にありがとうございます。

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この日のイベント、今からでも録画版で聴けます!

インタビュー特化型ライター養成講座「THE INTERVIEW」の詳細はこちらからご確認ください。

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次回のINTERVIEW ABOUT INTERVIEW は
公開トークVol.12 
 4月21日(火)20時から21時
ゲストは小松成美さん(ノンフィクション作家、小説家)です。

                                                                                                                                                                                                                                                        文:宮崎恵美子(THE INTERVIEW 3期卒業生)

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