リーダーシップの原点は、自分の軸をもつこと / 伊藤羊一氏( コミュつく!vol.14)
このイベントのダブルファシリテーターを務める河原 あず さん・ 藤田 祐司さんの「コミュニティ」づくりの教科書をご自身で購入したものと、河原 あず さんから献本されたものと2冊お持ちという伊藤羊一さんをゲストに迎えたセッション。伊藤羊一氏と考える「誰しもが個性を発揮できるコミュニティ時代のリーダーシップ」: コミュつく!vol.14について、レポートします。
書籍はこちらになります。まだお手元にない方、ぜひご覧ください。
伊藤羊一さん
(Zアカデミア学長/Yahoo!アカデミア学長/株式会社ウェイウェイ代表取締役/グロービス経営大学院客員教授)
■経歴:日本興業銀行、プラスを経て2015年よりヤフー。現在Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。2021年4月武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部長就任。代表作に50万部超ベストセラー『1分で話せ』。ほか、『1行書くだけ日記』『ブレイクセルフ』など。
言語化して体験を体系化
ここ10年くらい自分がプレゼンしてきたことが積み重なっていたものの、それを体系化することは、この3,4年でようやくできるようになってきました、と羊一さん。この5年くらいで頭がはたらくようになったのです。ここ10年くらいの僕を見ている人は、僕がこれまで話してきたことをこの数年の間でようやく自分なりのフレームワーク、表現、考え方としてまとめられていることに気づいていると思います。
この言語化する時間が自分にとってはとても大切になっています。
一日に起きたことを言語化して、アハ!体験することを繰り返しています。アハ!体験という、「ああ、そうか!」というひらめきを感じる瞬間が何度もあるのです。それが自分を成長させていると感じています。今はこれまで自分が積み重ねたことを振り返り、「ああ、そうか!」と確認しながら、自分の生きざまを体系化してまとめています。自分を研ぎ澄ませている感覚です。
自分の経験や観察したことをベースに体系化する。そうしていかないと何も残らないと感じているのです。
コロナで移動時間がなくなり、時間的に余裕ができたできたこともよかったと思います。
大学のコミュニティ化に取り組む
上手くいけば来年の4月に開設する予定で準備を進めている武蔵野大学のアントレプレナーシップ学部は、教員、事務局、学生が一体となったコミュニティになると考えています。そこで学部長として、僕は一人ひとりが生き生きできる環境づくりに没頭することになると思います、と羊一さんは話されました。
*注:武蔵野大学のアントレプレナーシップ学部:2021年4月に開設となりました。このイベント当時は、まだ準備中でした。
コロナがきっかけで自分を問う
羊一さんが自分の体験の言語化の時間をとれるようになったのは、コロナで移動時間がなくなったのが大きいとのことでした。
コロナがきっかけというのは僕も同じです、とあずさんが話されました。
僕は2020年4月1日に独立し、4月5月に本を書きながら、人と壁打ちしながら否が応でも考えざるを得なかったのです。
東日本大震災の時もそうですよね、と羊一さん。
東日本大震災がきっかけで、で生き方・考え方を変えた人が多かったのです。
リーダーシップも自分への問いかけから
僕はYahoo!アカデミアでもグロービス経営大学院でも、リーダーシップについて講義をすることが多いのですが、あるべきリーダー像にあてはめて考えているわけではないのです。自分をリードするのがリーダーシップの原点だと考えています。
野田 智義 さんが『リーダーシップの旅~見えないものを見る~ 』(光文社新書)でこう書かれています。
「リード ザ セルフ」が、すべてのスタート地点。
「リード ザ セルフ」できているから、「リード ザ ピープル」。
「リード ザ ピープル」だから、人がついてくる。
「リード ザ チーム」になるから、「リード ザ ソサエティ」。
社会に価値を貢献するリーダーになっていく、と書かれています。このことに僕も強く共感しています、と羊一さん。
自分は何者か。自分を自分を熱狂させるものは何なのかから始まるんです。だからYahoo!アカデミアでも、「リード ザ セルフ」を重点的にやっています。
「リード ザ セルフ」され、リーダーシップをもった個人が、集まっているのがコミュニティ、というのが私のイメージです。
内省とは
内省とは、自分の譲れない思いを知ることです、と羊一さん。
過去の経験が今を創っている。全員が自分自身の人生の主人公です。それは僕もそうだし、藤田さんもあずさんもそうです。
ナンバーワンではなく、オンリーワンになれればいい。
そのことを、周りの人達もリスペクトしていく関係が保てることも大切です。
みんなすごいし、すごくない
誰かが人間としてすごいというのはない。将棋が上手い人はいても、人間としてすごい・すごくないというのはない。富める人も貧しい人も、みんなすごいし、みんなすごくないという気持ちが強いです、と羊一さん。どんな人ともフラットに付き合いたい。さきほどの「オンリーワン」でいいという話にもつながります。
チャンスをつかむ
まずは右脳要素としては「リード ザ セルフ」。自分の軸を大切にすること。
そして左脳要素。結論と根拠を瞬時に考えられる能力を左脳で鍛えておく。仮置きでもいいから理由をつくっておき、納得できるようにする。
右脳要素と左脳要素の双方を整えておくことが必要だと、羊一さんは話します。
たとえば、最初直観で「買いたい」と思ったとき、それを買う合理的な理由をつけて、「買わざるを得ない」という結論を出します。
チャンスは一瞬しか現れないことが多くて、ここで迷ってつかめなかったらそのチャンスは二度と来ないかもしれないので、ここでも瞬時の判断が大切ですよね。「やるのは今でしょ」ということも多い。だいたい、直観で思ったことは、あとから振り返ると大体正しいですよね、とあずさん。
デフラグをしよう
デフラグ、つまりコンピューターの「データの断片化解消」を、自分の生活の中でもしていきましょう。
コロナで外に出ないようになって、自分が何をやっているか整理する時間が必要だと思い、感情日記をつけ始めましたと、あずさん。
羊一さんも、「この日俺は生きていた」というのを残す意味でも日記をつけているとのこと。アスリートがマッサージとアイシングを大切にしているのと同じで、僕も振り返ったり、瞑想します。早めに寝たり、散歩したりして、その時間を取っているのです。感じていることは、形に残しておきたいですよね。
モチベーションにかかわらず、歯磨きのようにできるようになったらいいですね。自分の生活の一部にしていくことが大切です、と羊一さんはまとめられました。
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自分軸を大切にし、自分を振り返って、言語化する時間をもつ。そういったことの積み重ねがリーダーシップのベースとなり、チャンスが来た時に瞬時の判断でつかめるようになる。歯磨きのように振り返りや瞑想、日記をつける時間をとるなど、自分に合った方法で続けていくことが大切という羊一さんのメッセージ、参加された多くの方の心に響いたのではないでしょうか。
文:宮崎恵美子