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【創作童話】「白魔女とポチ」ー最終回ー
亜美ちゃんは、また目の前にかかっていたまやかしのスクリーンが落ちました。と、同時に 恭平君にもう会えないかも知れない、という事実に気がつき、がくぜんとしました。
あんなに賢い、本当は優しい、ポチにファーストキスをうばわれたことをお祖父さんに言わないでいてくれる、さりげない気遣いのできる恭平君、恭平君が 死んじゃう………
ザーーーーーッ!!
その次の日、とつぜん根拠もなく局地的にふりだした大雨が、ひとりの保育園児とそれを助けに火の中にかけ込んだ少年を救っためずらしいニュースが、一日中全国をにぎわせた。その近くでひどく衰弱した少女がついでに救急車で運ばれたことはニュースにはあがらなかったが………。
亜美ちゃんが目を覚ました時の第一声は、
「恭平君は………?」
と、いうものだった。
恭平君は、いっぽう同じ病院で、軽いやけどの手当をしていました。そこへ、看護師のおねえさんがやってきて、
「あなたの《彼女》が呼んでるわよ」と、言った。
「《彼女》………?」
恭平君はきょとんとしました。
「俺には、彼女はいないよ」
「ウソおっしゃい。あんなに可愛い女の子、あなたが火事現場に駆け込んだとき、大泣きして気を失ったのよ?」
「ーーーーーー?」
(誰だ?)
恭平君は、いぶかりながらも、もしや………?と、心の片隅に見当がついた。
(もしかして、もしかして………。)
少しときめいた。
(あの時、近くにいたのは、俺をっているのは、多分《あの子》だーーーー。《あの子》が、まさか…………)
恭平君が、病院の白い廊下を通っていくと、ある処置室に通されました。そこには、ーーーー
青く高い空に 入道雲がもくもくとわくころ、一人のおさげの可愛い女の子が、河川敷の土手の上を、一匹のゴールデンレトリバーをお供にして、てくてくと歩いていました。
向かいの方から、どこかの高校のサッカー部員の少年たちがジョギングしてきます。おさげの女の子は、おもわず顔をぽっと赤らめました。
「よっ!亜美!」
その中の少年が元気に女の子に声をかけました。
「こんにちは!恭平君!」
亜美、と呼ばれた女の子は少しもじもじしながらも返事をしました。
まわりのサッカー部員の男の子たちはニヤニヤしています。
「恭平たち、仲良いねー!」
「うらやまし〜い!」
「こらっ!誰も手を出すんじゃないぞ!!」
恭平君も、少し赤くなって 声をはり上げました。
「はっはっはっ!とらないよ!!」
「オレもいい奴だが、恭平には負けるかんな!!」
皆、その頃には、恭平の性格や、火事のあった日のことをよく知っていたのでした。
これが、虫がすかんのがポチ。
ぐんっ!と、リードを思いっきり引っ張って、亜美ちゃんを 反対方向へ引っ張っていこうとするのでした。
(いつかご主人様を取り返すんだウォン!♡)
おわり♥
最後まで、読んでくださった方ありがとうございます。長い間、ありがとうございました。
冒頭の写真は、takemax_photoさんの、
「スナップ写真をプレゼントします」です
ありがとうございました🍀