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【創作童話】「白魔女とポチ」ー7ー


今までのあらすじ、
高校一年生の亜美ちゃんは、小学生の頃から修行を積んだ白魔女です。先輩の進先輩をほのかに好きになっていましたが、なんとなくアプローチしてくる恭平君も気になるところ。そんな時、亜美ちゃんは、飼い犬のポチにファーストキスを奪われてしまうのです。


 「ウウーーーーー!!」
突然、近所で消防車の音がしました。宴会場にいたおじいさん達は色めきたちました。
「火事だーーーー!火事だーーーー!近いぞーーーー!!」
恭平君は、すっくと立ち上がりました。見ると宴会場のある町内会館と、柏学園へ向かう最寄り駅があるなかほどの保育園あたりから 煙が上がっていました。その保育園には、まだ園児たちがいるはずです。恭平君は全速力で走り出しました!
「あそこで手助けがひつようかもしれない、行ってくる!!」
恭平君は、言い残して走り去りました。
「あ、恭平君、まって!!」
亜美ちゃんも追いかけました。なにか胸さわぎがするのです。亜美ちゃんは、正座していてしびれた脚をもつれさせながら、がんばって恭平君を追いかけました。

 火事の現場は、暮れかけた紫の空に、こうこうと 赤やオレンジの炎をあげて燃えていました。もくもくと黒い煙が高く高くあがり、これはもう悪魔のしわざかと思えるような光景でした。
 と、保育園の先生らしい若い女の人が建物の中から、ごほごほ咳をしながら出てきました。
「助けてーーー!まだ、中に子供がいるのよーーーー!!!」
(今こそ、白魔術を使うときがきた!!!)
亜美ちゃんは、思いました。ところがーーーー!!

 恭平君が、保育園の庭の水道の水をかぶったと思うと、燃えている建物の中に飛び込んでいったのです!そこへ、柏高校からやってきた、進先輩と亜美ちゃんのお父さんが通りかかります。ポチは目を丸くして吠えはじめました。
 進先輩は、おどろくような冷めた表情で言い捨てました。
「自分から火の中に飛び込むなんて、まったく馬鹿なやつだなあ」
さらに、舌打ちまでして、けいべつのような表情までうかべています。まったく恭平君のように園児を助けにも行こうという気配もありません。
(えーーーー!!なんてこと言うの!?)
亜美ちゃんは、進先輩がその後も助けにも行こうともしない様子なのにかえってあきれて心の中で叫びました。先輩は、まったく高見の見物です。
「先輩、消火を手伝うなり何なりしないんですか?」
「だって、こんなに燃え広がったら無理だよ。こんな中はいってくなんて、馬鹿だよな〜」
「…………」
周りの人たちが、非力ながらも水をくんだりバケツをリレーしたりして、消防が来るまでつないでいるのに、進先輩は、ひとりでシラケて見ているのです。
「……………」
亜美ちゃんは、ショックで口がきけません。
(こんな………こんな冷たい人だったなんて………)


       つづく、次回最終回。

画像は、ニコタローさんの
「2006年 サントリーニ島の風景」です。
ありがとう御座いました🍀

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