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【創作童話】「白魔女とポチ」ー4ー
(あの進せんぱいが、私に「可愛い」だって)
亜美ちゃんは何度も思い出しては、ニンマリとしていました。いじめの不幸感より、幸せ感が勝っていました。気が気でないのは亜美ちゃんに恋する飼い犬のポチ。
(ご……ご主人様が、こ、恋をしているのかも……どうしようとられちゃう……)
ポチにとっては、生まれてはじめての いちだいじだった。何しろご主人様の亜美ちゃんと結婚することが一生一代の夢だったのだから。だから、進せんぱいは恋敵!!ポチのドックフードも、おやつのペティオジャーキーもほとんどのどを通らないのでした。
ポチのいる居間からは、ガラス越しにめずらしくスズメとシジュウカラのカップルが見えました。彼らも種族のかきねを越えて恋を……恋をしているのでしょうか……。まだ、1歳、人間にすると15歳のポチはめずらしく はらはらと涙を流してはながめていました。(神様 どうにかして僕を人間にしてください。そして、亜美ちゃんと、け、け、け、けっこん………)と、そう途中まで念しては、もん絶するポチなのでした。
亜美ちゃんの親友に、佳代ちゃんという子がいました。佳代ちゃんは聡明な子で、クラスの女の子からも好かれる子でした。
なげか佳代ちゃんは、入学式の日から 亜美ちゃんにくっついて離れません。そして、どくとくの感覚を持ちながら、見かけはふつうの ちょっと可愛い目のくりっとした女の子でした。
その佳代ちゃんと、恋の打ち明け話をした時、ますます佳代ちゃんの風変わりなところが分かったのです。
「私、むかしのアニメのムーミンパパみたいな人が好きなの。いいパパになりそうでしょ?」
と、佳代ちゃん。これにはさすがの亜美ちゃんもおどろいた。
「うそっ。太っててもいいの?」
と、思わず思っていることをそのまま言ってしまった。
「だって、そんなの関係ない。いいパパになりそうな人が一番よ」
と、言うと指をさし、
「ほら、あの人」
そこには、本当にムーミンパパそっくりの子がいました。どこか、あたたかげ。温和でやさしそう。
亜美ちゃんは、その時 はっと目の前の世界が突然変わったような気がした。長い間 ただ、真っ暗な道を歩いていたのに、春一番が吹いて明るい朝日がのぼったような、温かい気持ちになった。
「そうね、いいパパになりそうな人が、いい家庭を作ってくれるかもね。ずっと長い目で見たら、そんな人が一番いいのかもね」
亜美ちゃんの心の中の地球儀は90度反対の世界を指ししめすようにその時からなってしまいました。当然のようにあんなに好きだった進せんぱいは、かっこうよくて頭は良いけれど はたして結婚して幸せか……。そんな未来のことまで考えるようになりました。
(どうなんだろう……進せんぱい。かっこうよくて頭いいけれど……子供には冷たいし………家庭的にしあわせになれる気がしなくなってきた………)
「そうだろ?」
「きゃーーーーー!!!」
亜美ちゃんは、びっくりして3メートル飛びのいた。そこには恭平君。
「なんで?私の心の声が聞こえるの!?」
ドキドキ。
「?お前、口に出してたぞ」
「………そ………そう……………」
亜美ちゃんは、しんけんに考えるあまり、口に出していたのでした。
「小島せんぱいと、付き合ってるの?」
恭平君は、えんりょなく聞いてきました。
「え……え……まだ」
「付き合ってるよ!な!!」
と、どこからともなく進せんぱいが現れた。
「え?進せんぱい………」
「な………そのしょうこに………」
(え………え…………?)
なんと、進せんぱいは亜美ちゃんにキスしようとしてクチビルをよせてきたのです。
(ぶちゅう………)
亜美ちゃんは、思わず両目をつむったのですが、
(は、鼻水………?)
おそるおそる目を開けると、なんとポチが亜美ちゃんとキスしているのでした。
「きゃーーー!私のファーストキスがーーー!」
亜美ちゃんは、目を白黒させました。
「ごめん、亜美!!学校にポチの散歩ついでによって、亜美が学校に失礼がないか聞きに来たんだが……」
亜美ちゃんのお父さんの源之介だった。
ポチは、ご満悦。
(やったあ、亜美ちゃんのファーストキスは、僕がもらったぞーーーー!!!)
亜美ちゃんのお父さんは、怒りとなさけなさに肩をわなわなと震わせ、進せんぱいは、目を点にするわ、恭平君は、亜美ちゃんのファーストキスをとられたショックであおざめているのでした。
いちばんショックなのは、それは亜美ちゃんでしょう。ウォンウォンいって嬉しそうにしっぽを振ってくるくる回っているポチを尻目に、ぱっとなみだを流しては。駆け去ってしまいました。
一同は、すぐに追いかけるべきだと 意識に上がったのは30秒後で時すでにおそし。亜美ちゃんは、皆の視界からとおくへ消えていました。おろおろするイケメンの進せんぱいを尻目に、恭平君は気がつくとすぐに亜美ちゃんを追ってかけ出しました。初夏のそらは、どこまでもどこまでも青く澄んでいました。
つづく
画像は Yonce77さんの
「16年間ありがとう。お疲れさま
でした。」
です。
有難う御座いました🍀