【読み切り短編創作童話】わが家に幼児がやって来た〜ぱぱ放棄?〜
わが家には、いつ頃からか居ついた幼児がいる。「苺ちゃん」といって3歳児である。まず、真っ先にぱぱに懐いてしまい、日がな毎日のように「ぱぱ遊び」といっていかがわしい遊びをしている。抱き枕にしがみついて、じゃれじゃれしている。抱き枕には、よだれがべったりくっついて、ままのお洗濯のしごとを増やして困らせている。
「ぱぱ〜〜」「ぱぱ〜〜」今日も、苺ちゃんの「ぱぱ遊び」の声が、日中にもかかわらず、苺ちゃんの家から響いている。
そんな、苺ちゃんの前にしょうげきの出来事が発生した。
ぱぱとままが、どうやら二人だけでお出かけをしようと、計画をねっているらしいのだ!なんたること!!幼児置き去り、育児放棄?ネグレクトでしょうか?!苺ちゃんは、何とか、自分も連れて行ってもらおうといろいろ計画を練り始めました。
「まま〜、きれいだね〜。どこいくの〜?」
「ぱぱ〜、私もおめかししたいな〜」
「まま〜、苺ちゃん、いい子だよね〜」
「ぱぱ〜、連れてかないと、児相に相談するよ〜〜」
ぱぱとままは、きゃっきゃ言ってて気がつきません。苺ちゃんはあきらめて、次なる作戦を練り始めました。
「うう〜。お腹が痛い……」
よくある手です。
苺ちゃん、仮病を使ってます。
ですが、敵も去るもの。見抜いてます。
「苺〜。おみやげなにがいい〜?」
完全に置いてく気です。
苺ちゃん、完全に絶望しました。
大好物のおやつの残りのビスコを探して頬張ってます。
「ビスコ……ビスコ……」
「あら、苺ちゃんもディスコ行きたいの?」
ままが、言いました。
ぐうぜんですが、行くところがディスコで、ままには「ビスコ」が、「ディスコ」に聞こえたみたいです。なんでもいいです。反応してくれたんだもん! 苺ちゃんは、ワラにもすがるような、おめめで、思いっきり猫なで声で、「いきた〜〜い」と、答えました。ままは、そう?と言ったのですが、ぱぱは、なにも答えません。どうしたのだろう?と、ふたりで見つめると、ぱぱは、やっと口を開きました。
「い・や・だ」
(が〜〜〜〜ん)
苺ちゃん、だいしょっく!!
苺ちゃんは、いじけて押し入れの中に入ってストライキを始めました。
それに気付いたままは、ぱぱをにらみつけ、
「ぱぱ〜〜!?」
と、おんなの睨みをきかせて目を走らせます。女って怖〜!! ハンニャのお面のような顔になりました
ぱぱ、内心で(ひっ!!?)と思い悲鳴をあげましたが、もじもじしだして、言いました(まるで、中学生みたいに)
「だって、ままとふたりきりの結婚記念日なんだよ?独身時代みたいにふたりで、ディスコで踊りたいじゃないか。苺を連れてくと脚にまとわりつくし、それに、『イヤイヤ期』は、いやなもんだって苺ちゃんに分からせるために、」
「だまらっしゃい!!」
ままは、お寺の住職さんのように、ぱぱを正座させて説教はじめました。
「幼児というのは、きずつきやすいのよ?大人にへたに怒られて、こんな小さいうちに、トラウマになってもいいの?苺ちゃんが、しょうらい人間不信になって、苦労して育つのは忍びないわ。あなた、苺ちゃんの人生、責任もてる??」
苺ちゃんは、それを聞いて感動のあまりわんわん泣き出した。
すっかり後悔して反省したぱぱさんは、
「わかった、わかった!ディスコに行こうね!!ね?ぱぱが肩車するよ?」
苺ちゃんは、泣き止まず、
「児相に相談する〜〜〜!!!」と言ってきかなかった。苺ちゃんが言うに、
「うう〜〜ん……ぱぱは、もう、いちごの敵だ〜〜!婚約者でもなんでもな〜い……」
苺ちゃんのなかでは、ぱぱは、れっきとした婚約者にされてます。
「苺、苺! わかったから、ビスコ食べて! ぱぱたちと一緒にディスコ行こうな!! 」
「いやだ〜〜!! ぱぱは、おんなのじゅんじょうふみにじったのよ〜〜! 」
(いつ?じゅんじょう?)という、世間の声はほっときましょう。
「ああ〜〜っ!! もう、泣き止んで」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
2時間後、さんにんは、並んで電車に乗り、きらきらした街なかのきらきらしたディスコに向かっているのでした。電話をして、とくべつに「幼児許可」のおすみつきを貰って……
(お知り合いのディスコだったようです……)
おわり