
私の知り合いの19歳の……もし、自死を考えていたら読んでみて
私の知り合いの19歳の息子は、ある台風の次の日に多摩川へ川の様子を見に行って川に流された。
ひとり息子だった。
そして、溺死。
その知り合いは、学校の先生で、その数年後学校の先生を辞めると、うちの兄の家庭教師になって、そんな話を母たちにポロリとした。
「生きていれば今頃は……」
☓ ☓ ☓
私の家の会社で働いていたおばさんのひとり息子も19歳で、首を吊った。母一人子一人の二人っきりの家庭だった。
僅かな給料で、やっと育て上げたと思ったら19歳で……これからなのに、と誰もが言った。
☓ ☓ ☓
私の叔母は、19歳で、農薬を飲んで死んだ。母親である祖母が、恋人との結婚を許さなかったからだ。
祖母は、生涯、後悔した。
「あのとき、結婚を許していれば……」
叔母は、男の子兄弟の中のたった一人の女の子で、よく喋る明るい子だったという。祖母は手放したくなかったのか……。
☓ ☓ ☓
これからというとき、これからの人生、50をとうに過ぎてしまった私からみると羨ましいくらいの眩さ、きらめきの人生……。
成人式を間近に控えて、消えてしまった命。
遺された家族を、私も見ているが、そこはかとなく翳りがある。
☓ ☓ ☓
この間、老人ホームへ父の面会へ行ったとき、父に私の姪っ子の成人式の写真を見せました。
私の兄弟は私以外結婚はしてはいなく、私も子供がなく、父には孫がいないことになります。
それでも、血の繋がっていない姪っ子を見て、
「ありがとう、ありがとう」
と、涙をこぼし、
「いいなぁ、いいなぁ」
と、しきりに繰り返して嗚咽を抑えられませんでした。
若いっていうのはこういうことです。
周りの歳取った者たちにとっては、存在だけでなにかを与えられるものがあるんです。
ヒカリのような、希望のような……なんとも言えぬ期待……まぶしさ。居るだけで嬉しい。
勝手だと言わないでください。
歳取って、周りに若い家族がいないと、そう感じるようになります。
(小さな赤ん坊がいたらどうだっただろうか)
小さな子が、家にいると、家が明るくなるので。
嗚咽を堪えられない父をどうすることも出来ず、私は、後悔したり、写真を見せて良かったのか、と思ったり。
ただ、
もし、自死を考えている方が、これを読んでたとしたら、
もう一度、考えて。
あなたは、先祖から脈々と受け継がれてきた、血と、皆の想いも絶とうとしています。
あなたの居なくなったあとの、
ご両親は、私の父の姿と重なります。
私の実家の者は、今、それぞれ一人さみしく食卓に着いています。
家族と久し振りに話すと涙が自然と滲むようになって。
お金じゃない。名誉じゃない。ごく普通のものでいいじゃないですか。
そこにあるだけで。
命あるだけで。