
#02 NYTのオンライン講座で美術批評家の話を聞くの巻
冷えますね、冬。
昨日投稿したnoteの続きを書いていきます。
いま、私が受講しているThe School of The New York Timesについて簡単に説明すると、英語圏で一番発行部数の多いニューヨーク・タイムズに所属している編集者、ライター、批評家が一般の人向けに「書き方」を分かりやすくレクチャーしてくれるオンラインの学校だ。
コンテンツの対象は、高校を卒業して大学に入る前にギャップイヤーを過ごしている人、大学に在学中で就職活動をしている人、スキルを身に付けたい社会人向けの3つの大枠に分かれている。(#01でこういう説明を飛ばしていたのは申し訳ない...。)
私が受講しているのは社会人用の「How to Think and Write Like a Critic」というコースで、全部で3時間くらいで終了する短いコースだ。(1.7倍速くらいで聴いたので、もっと早く終わったと思う...)
登場するメンバー(すべて編集長)は以下の通り。
音楽 Jon Pareles
美術 Roberta Smith
演劇 Ben Brantley
映画 A.O.Scott
テレビ Mike Hale
前副文化局長(と訳せばいいのでしょうか)のMyra Forsbergが司会でこの5人にインタビューして「執筆のテクニック」を引き出していく...という構成だ。よい批評家とはどんな人?書くプロセスってどうしてるの?リフレッシュってどうしてる?などのトピックについてざっくばらんに話してくれる。いわば「手の内を明かす」行為なのだけれど、そこまで教えてくれるんだ...。ってくらい、話してくれる。「あの記事を書いたとき、ブーイングが来た!」とか「批判記事を書いたら作家に喜ばれた!」とかも。
その中でも私の推しは美術批評のRoberta Smith!!
彼女の名前を知ったのは、去年の年末にニューヨーク・タイムズの選ぶ美術書2020という記事をnoteに訳していたとき。(Robertaって女性の名前なんだね。)
Roberta Smithの話をちょっとだけしたい。
彼女は小さい頃からoutspokenでunrulyな子どもだったと自分のことを描写している。つまり、思ったことを包み隠さず素直に話す性格で、ちょっとやんちゃな子どもだったらしい。母親に自分の意見を持つことが大事だと教育されたのも影響して批評家になったという。
彼女のトークの中で好きだった言葉をいくつか紹介してもよいですか??
"You have to have a tolerance for completely contradictory opinions being expressed by others."
(訳)「周囲の人が示した完全に正反対の意見に対しても寛容であるべきよ」
"You have to have a kind of sense that you can say this and it doesn't matter what anybody else says. "
(訳)「これを言えるっていう感覚を持つべきね、他の人がなんと言おうと関係ないの」
これ、シンプルな言葉だけど刺さりませんか??
だって、自分の好きなものに自信がなかったり、薄っぺらい人間関係だったり、感性がひね曲がったりすると、「自分の友人にこの映画や音楽が好きだとバレたらなんと言われるか...」「あの映画が好きって、ちょっとどういう人か疑うわ...」みたいなことになりませんか?
「周囲の人を気にしすぎたり、安易にジャッジするような感情」を持っていたら損だなと、彼女の言葉を聴いて心の中がグラグラしてしまったんですね。
私が好きなものは、好き、苦手なものは苦手、でも私が苦手なものを好きな人もいるし、その逆のケースもありうる。そんなシンプルな話。
「自分が苦手なコンテンツを好きな人になぜその作品が好きなのか」聞く時間って大事だな〜って。改めて思ってしまった。だって、その人の話を聞いたら私もファンになるかもしれないし!
Robertaの一番好きなところは、「自分の論考を読んでくれ〜!!!」っていう姿勢ではなく、批評を書く目的について「展覧会をみたくてたまらない!って気持ちにしたい」「家を出たいって気持ちになってもらいたい」って淡々と話しているところ。かっこいいね。(今はコロナだからそうもいかないけれど...)
Roberta Smith、話し方が映画『プラダを着た悪魔』の編集長に似てたので、女性の敏腕編集長のイメージが私のなかで固定されてきた...。
次回は彼女のオススメのライターや本を紹介します。(彼女の執筆プロセスについてはぜひお金を払って受講してね!めちゃくちゃ面白かった。)