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新婚旅行でバリに行った話1

私が30歳になる令和元年に今の旦那と籍を入れた。

元々結婚願望は強い方ではないが、流れに身を任せた結果、こんなことになってしまったのだ。

今でも思い返すとなんで結婚したんだっけ?と不思議でしょうがない。

結婚願望が強くないと書いたが、実際は、30歳が近づくにつれ、結婚願望が強い日とどうでもよくなる日が交互にあった。

女なんて3日で変わると上沼恵美子が言っていたが、その通りだと思う。

そんな私たちは私の強い希望で結婚式は行わなかった。

私は、結婚式に何百万もお金を使うのであれば、新車が欲しいと常日頃から思っている。

結婚式をするのを反対はしないが、私には結婚式の意義も見出せないので、したいと全く思わなかった。

それに、もしかすると離婚した場合一生、私の親族からはご祝儀泥棒と言われるかもしれない。

そんなものに耐えたくもない。

実際、うちの祖母は半年ほどで離婚した親戚のことを裏でご祝儀泥棒と言っている。すでに10年以上前に離婚して、今は再婚している親戚のことなのだが。

親戚とは時に味方であり、敵になる。

そのため、私は、結婚式は挙げずに、新婚旅行にだけ行き、その旅先でウエディングフォトだけ撮りたいと希望した。

旦那は結婚式を挙げたそうだったが、私の強い希望もあり、結婚式なしの、新婚旅行だけになった。

その当時、まだまだコロナは中国だけの話で、中国でコロナって病気が流行り出したらしいくらいの認識だった。

そのため、海外旅行も、中国に渡航歴がなければ問題なしだった。

新婚旅行なら海外一択と考えていた私は候補地をアジアンリゾートに絞った。

その中でもフィリピンのセブ島かインドネシアのバリ島に目的地を絞った。

新婚旅行と言えば、ハワイを思い浮かべる人も多いだろう。
私は、定番のハワイにはそこまで惹かれなかった。

そもそも、ハワイは物価が高い。それに比べるとセブ島やバリ島は物価が安いし、5星ホテルに泊まればハワイとアジアとでは2倍以上の金額差がある。

それならば、アジアンリゾート一択!

一応旦那にセブ島でジンベイザメと泳ぎたいか確認したところ、嫌だと言われたので、結果、バリ島に行くこととなった。

早速HISに行き、ホテルと航空券の予約をし、その場でクレジットカードで約35万を一括で切った。

弾丸気味で3泊5日で行くことにした。

ホテルは最初の2泊はリンバbyアヤナリゾート。最終泊だけ5星ホテルのアヤナリゾートヴィラに泊まれるというタイプの旅行を予約した。

しかし、旅行の日にちが近づくにつれて、旦那が、「テロに遭って死ぬかもしれない」と度々言い出した。

そう彼が言い出すたびに私は、バリはヒンドゥー教だから大丈夫と言った。

最初のうちは笑い飛ばして大丈夫だよ!と言っていたが、あまりにもひつこくテロにあうと言ってくるので、大丈夫って言ってるでしょ!!と最後の方は半ばキレるに近い状態で応対した。

彼は旅行する日が近づくたびに憂鬱そうな顔をしていた。

旦那は海外旅行をしたことがなく、海外旅行がどんな感じなのか、イメージがついていないようだった。

彼の中の海外とは、歴史の教科書の中やテレビのニュースの情報だけが全てなのだ。

そんなある日、あと2週間後に新婚旅行だというときに、旦那が話があると、とても深刻そうな顔で言われた。

何事かと思いながらも平静を装い、お互い向き合って、普段は一緒にご飯を食べるダイニングテーブルについた。

すると、彼は言いにくそうに、「やっぱり、旅行行くのやめない?」と言い出した。

私は即座に、「旅行代金も支払ってるのにキャンセルできるわけないやろ」の一言で会話を終わらせた。

旅行当日までに彼は、義母に対する遺書をしたため、出発するときに自宅のテーブルの上に遺書を置いて、家を出ていた。

遺書はしっかり糊付けされていたため、内容の全貌は分からなかったが、透かしてみると、飼っている金魚をよろしくと書いていた。

私は憂鬱そうな足取りの旦那を従えて福岡空港へと向かうことになった。

空港に着くと、朝ごはんがまだだったので、福岡空港国際線でご飯を食べることになったのだが、空港価格ということでどこのお店もなかなかな値段がする。

結局、うどん屋に入ったのだが、朝9時だというのに彼は1本1000円の瓶ビールを注文。

いや、何朝から飲んでんの?というと私が言うと、

死ぬかもしれないじゃん。と言い出した。

まだ、言うのか。

めんどくさいなあと思いつつ、私は久々の海外旅行を楽しみにしていた。


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