元気そうでよかった
先週末、息子がひょっこり帰ってきた。
以前から帰省するような話は聞いていたけど、具体的なことはわからず、ただ「土曜日の夜泊めてほしい」とのことだった。
息子はこの4月から京都に拠点を移していて、あちらで大学院に通いながら、新しい職場で仕事もしている。片足を「学生」、もう片方の足を「社会人」に突っ込んだ状態で、マイペースに暮らしている。
息子の引っ越しの手伝いなど何一つしてあげなかった私と夫は、息子の新居をいまだに知らない。住所は聞いているけど、また実物を見ていないので、いつかどこかで息子宅を訪問をしたいと思っているのだけど、「この日にどうだろう?」と息子に問い合わせると、「その日は高山から友達(男)が泊まりに来るから無理」と言われてしまう。息子の部屋は、いつもいろんな人が遊びに来る人気のゲストハウス状態らしい。人が好きな息子は、人が自然と集まってくる今の暮らしを、心から楽しんでいる風でもある。
◇
そんなある日、今度の土曜日に泊まりに来るというので、ごはんを準備してあげようかな…と母心を出してみた。
ところが、帰省する日は、友人たちと行動を共にして白川郷に行ってくるし、夕食もみんなと飲んで楽しむんだとか。家に着くのは夜の10時過ぎになるよ…と言われてしまった。
そうか、そうなんだ。
うん、いいんじゃないの。
夫と二人で夕ご飯をあっさり済ませて、早めにお風呂に入り、息子の帰宅を静かに待った。
息子は本当に夜の10時過ぎに帰ってきた。
息子は旅の荷物をドカッと置くと、あれこれ質問攻めにする私たちに応える形で、今日の出来事や京都での日々を面白おかしく喋り続けて、私たちを散々笑わせてくれた。昔からトークが面白い子だったけど、相変わらず話が面白い。安定の面白さだ。
息子はまだ話し足りない感じだったけど、時間が押してきたのでお風呂に行かせて、そのまま就寝。
次の日、改めて息子の話を聞いた。
京都の新しい職場は「楽しい」とのこと。
大学院も「充実している」とのこと。
それは良かった。
仕事が楽しくて、勉強も充実しているのなら、花丸100点満点だね。
しかも、京都に行ってからは体調もすこぶる良くて、以前は毎月一回熱を出して寝込んでいたけど、今はそれがピタリと収まったんだとか。
こっちにいるときは、CORONAになってしまい大変だったよね。あちらの水も空気も息子に合っているのだろう。
学生時代にお世話になっていた整形外科にまた通い出し、診察やリハビリをちゃんと受けていることも話してくれた。病院の皆さんも「帰ってきたの!?」「おかえりー!」と温かく迎えてくれたらしい。
それはありがたいよね。
心強くて安心だわ。
こうして日曜日に慌てて息子と会話を交わし、ひと時の親子タイムを楽しんだ。
◇
やがて時間になり、私は息子を車に乗せて駅へと向かった。
駅の横にある高速バス乗り場へ。
息子の荷物を持って行くと、息子と一緒に高山に来たという息子の後輩(男子大学生)が待っていた。
がっちりした体格&金髪ロン毛で一見怖そうなお兄ちゃんだけど、よく見るとつぶらな瞳の純真そうな青年である。
この後輩君と私は初対面である。
彼は、はにかんだ様子で私に挨拶をしてくれて、前日、白川郷に行ったことを楽しそうに話してくれた。
なんでも彼は、アニメ「ひぐらしが鳴く頃に」のファンだそうで、今回帰省する息子にくっついて一緒に飛騨に来て、アニメの舞台となった白川郷を初めて訪れたとのこと。聖地巡礼をしたことを興奮気味に話してくれて、現地で買いこんだひぐらしグッズをいろいろ見せてくれた。
あぁ、だから息子は「一日目は白川郷に行く」って言ってたのか。高山の友人たちに後輩君を紹介して、一緒に飛騨を満喫したんだな。
後輩君の話し方や様子に、彼が持つ純朴さや素直さがにじみ出ていて、なんだか可愛らしい。息子と縁がある人はみんな良い人だなぁ…と、改めて思った。
そうこうしているうちに、出発の時間となり、息子と後輩君は一緒に高速バスに乗り込んだ。
「今回はラーメン屋に行けなかったので、今度は高山ラーメンを食べにまた行きたいです!」と、別れ際に話してくれた後輩君。
うんうん、おいでおいで。
とっておきの美味しいお店を教えてあげるね。
私は動き出すバスに手を振った。
◇
なんかようわからん変な二日間だったけど、息子が帰ってきて賑わせてくれたことは、私の心にしっかり残っている。この距離感でちょうど良いんだと思う。
今度は私がそっちに行くからさ。
頼むで。