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Sparta再始動ツアーUS北西部行脚⑥~ライヴ@バンクーバー編(後編)

Spartaの皆さんの心遣いで、バンクーバー公演はステージの脇から見ることになりました。

とんでもない場所で緊張もしたのですが、楽しまないのもいかん! 最後だし! と思い直して、しっかりとライヴを見ることに集中。

バンクーバー公演は、ジム自身がとても想い出もあり深い心の拠り所でもあるそうです。入国審査でも、テキサスから来たんだ、でも今日もう帰るんだけど。と話したらとても驚かれて簡単に通してくれたよ。と笑っていました。バンクーバーは何度来ても素晴らしい場所であり、カナダはとても好きなんだ、と本当に機嫌が良かったジム。

「20年以上ツアーをやっているけれど、今夜初めてワインを呑みながらライヴをさせてもらうよ。本当に気分が良いんだ」

とニコニコ。自分の国の政治的背景から、カナダへ多くのアメリカ人がビジネスや、移民として入ってきていることにも触れ、

「たくさんのアメリカ人を受け入れてくれていることに、その寛大さにはとても感謝しているよ。でも皆が良いよって思ってくれているわけじゃないのもわかってるんだ。どうかアメリカを、僕の国を嫌わないでほしい」

と語っていたジム。お客さんからは「大丈夫だよ!」と温かい声がたくさんかかっていました。

お客さんはステージにぴったりくっついた状態で囲み、普通だったらせめて人がひとりくらい通れる通路があるのですが距離感がゼロで本当に温かい大歓迎ぶり。黒山の人だかりのなかでライヴをやっているようで面白かった!

ライヴも最終公演ということもあり、Spartaは最初からすごく大きなうねりのあるグルーヴで私が見た3公演で一番の盛り上がりでした。セットリストは変わらないものの、とても強い音の出方で最高すぎた。ずっと体調が思わしくなかったカリィさんが、本領発揮をしていたのが一番の理由だったのかもしれません。

※まだこのときはフェンス越しですが2曲目の「Mye」が唯一の動画で、カリィさんがフルスロットルで叩いてた。カッコよかったなあ…。

見ていてとても心が弾むというか、真っ直ぐなバンドの音楽愛にすっかりやられて見入っていた中盤も過ぎた頃、嬉しそうににやつく私を見守っていたローディのチョッパーに腕をひかれました。

「エミ、もっと盛り上がりたいだろ? 君にミッションを与えよう!」

耳打ちされて、なんだか瞬間的に嫌な予感が…。

手渡されたのは、ジムのメインギター(本物)です。何年ぶりかわからないギターの重さに、ウエエエ!? となりながら、落としたら高い! やばい!! と、あわあわチョッパーを見ると、これをこうしてジムに渡すんだよ…とレクチャーしてくる…。

「いやいやいや…私、無理。ステージになんかあがれないよ」

長らく音楽好きをやってきて、ライヴも見てきて、そんな簡単に上がっていい場所だとは思えるわけもなく。私にはステージは聖地に近い場所です。いくらなんでも、それはできないと丁重にお断りました。

「僕がサインを出して、後ろからジムのギターを受け取るから、エミは正面からギターを渡してね」

って、聞いてくれないんかーーーーーい!!!!!(焦)

呆然とギターを持ったまま「っていうか、ジムは知ってるの!?」と聞くと

「ううん、ジムにもサプライズだよ!(笑顔)」

と。もはや、チョッパーは完全に楽しんでる…。聞いてくれねえ…と悟った私はとてつもない緊張のなか、ジムの前から渡さなきゃいけないので、お客さんをかき分けなければならず、お客さんの元に歩き出したものの、どうしたらいいかがわからない。手にはギター。立ちすくむ日本人の私。すると。

「おい、皆ちょっとあけてあげて」

と近くにいたお兄さんが私の肩を押してくれたのです。私の手にあるものを見て、屈指のエモ曲 「The Most Vicious Crime」 をやっている最中にもかかわらず お客さん皆ニコニコでモーゼのごとく、ジムさんの前まで道を作ってくれました…優しい…。

が、舞い上がった私はチョッパーのサインを見るのをすっかり忘れてそのままステージに行こうとしてしまい、「まだ!まだだよレディ!!!」と周りのお客さんに止められる始末(笑)みんな、ほんと優しかった…。

ジムさんは私にはまったく気づいてなく、今までの公演で一番長いタメでエンディングを引っ張ってくれたので、お客さんと一緒に歌いながら少し落ち着いたところで曲が終わり、お客さんたちに「今だ!!」と送り出してもらいました。

明るくなったステージにあがって、転ばないように、シールドに足を引っ掛けないように、ギターを落とさないように…!!!と自分に言い聞かせながら、よろよろジムさんの前にいくと

「ワオ!! エミじゃないか!!!」

とびっくり顔で笑ってくれて、( ※ジムさんとは開演前にカリィと話している最中にお茶のお礼を言いに来てくれたので、一度会っていて何者かは分かっていたのです…。 )

「ギターを持ってきてくれたの? ありがとう!」

と目ヂカラ強いにっこり笑顔で私の高さまで屈んでくれ、ジムさんの首にストラップをかけることができて、無事にミッション終了。

その肩越しに、大ウケしてるカリィさんが見えて、マットもガブリエルも拍手してくれてて、もう脱兎のごとくステージから逃げた私…。

ステージ脇では仁王立ちのチョッパー氏がハイタッチ!でお出迎え(笑)

フラフラになって隅っこに再び座るとカリィさんがこちらを見てて、すごい笑顔でグー!! 👍と親指を立ててくれてるし…。アタシは仕事のプレゼンや重役営業の何十倍も緊張したヨ……。

半分放心しつつ、ぽえーっと終盤を眺めていて、ああもうあと1曲で終わりだなあと、終わっちゃうんだ…と「Air」「Atlas」と彼らの代表曲をええ声でシンガロングしているお客さんたちを見ながら、カリィさんが見たいという夢がかなったんだなあ…としみじみしていたら、

「エミ!!!」

と、今度はドラムに座っているカリィさんに呼ばれ、手に何か持っていて「こっちに来て!」と叫んでる……………。

いくらステージ脇にいるとはいえ、ドラムまでは数メートルはあるし…。でも、カリィさんは次の曲が始まるし待ってるし…と咄嗟にジムさんのスピーカーの後ろを屈んでピャーっとドラムまで小走りに行くと、

「セットリスト、約束してたから!」

と、カリィさんはニッコリ。何故に今…と思いつつも、シアトルでお土産を渡した際に、お返しになにかほしいものはある? と聞かれ、セットリスト、かなあ…と言ったのを覚えててくれたのです。嬉しかったなあ。

で、ありがとうー!と戻ろうとしたら、振り返った後ろにいたチョッパー氏が再び

「そのままここにいて! 最後の曲だからカリィの隣で見なよ」

と、スピーカーの後ろから出してくれないいいいいいいいい!

カリィさんも「そうだよ、ここにいなよ~」とかなんとか言いながら、カウント始めて最後の曲に入ってしまうし…!!

ジムのスピーカーと壁の間はとても狭く、立てばお客さんから見えてしまうし、座るにもミニスカートで体育座りもできないし、咄嗟にええい!と…

正座で最後の1曲を見ていました…ジャパニーズスタイル…。。。

でも、この距離。本当に近かった。

鳥肌が立ちっぱなしで、声も出なかった。たまに私を確認してにこーっと笑ってくれるわ、眼の前で好きなドラマーさんのライヴが見れて、もう私死んじゃうかな、と思いながらずっと涙目で見てました。

彼はテイラーと違って、大きなバンドにいるわけでもステージに立っているわけでもないけれど、キャリアはしっかりと積んできているし、とてもプロフェッショナルで、しっかりとしたドラマーとしての自覚も気質も才能もあるひとで、その姿はとても素晴らしいものでした。きっとずっとドラマーとしてもっと頑張れるし、必ずや成功するだろうなと、テイラーに20年前に思ったときと同じように、とても感じました。

バンクーバー公演のセットリスト。当時Twitterにジムさんが書いた…と言ってしまったのですが、カリィさんが自分で書いたものでした。かわええ字。「CAT SCREAM」という曲が「ニャー(MEOW)」になってるの萌えるわあああ。脇にメッセージを添えてくれたのも彼と思えば余計にじんわりきました…。

サインはライヴ後にチョッパーがみんなから貰ってきてくれたもの(最後まで絶好調に優しかった)。その際に「ジムのピックも持って帰って!」とピックもくれたのです。因みに、この裏にはAt The Drive-Inのロゴが入っているのですが、ジムさんは好きじゃなく(汗)チョッパーがいつも削ってから渡すんだそうです…ジムさん…。

終演後、カリィさんから待っててーと言われて、しばらく待っていると皆出てきてマットやガブリエルからも、「はるばる来てくれてありがとうね。お茶は家に帰って飲むのを楽しみにしてるんだ」と律儀に日本式でお辞儀をして挨拶してくれたふたり。「日本に来てほしいです…」と唯一の最初からのメンバーで過去にSpartaで来日してるマットに言ってみたら「もちろん行きたいし、大好きな国だよ! 君が来てくれたんだから考えないといけないよね」と。奥様と電話中だったジムにもよく言っておくよ! といい人たちでした。

そしてカリィさん。「今日は楽しかったね!」と超ニコニコで言ってたけども、一番楽しそうだったのはカリィさんだよ…。普段あんなにステージで笑わないのに今日はすごくよく笑ってたね…(チョッパーに振り回された私のせいですかそうですか…)

すると、片付け途中のドラムセットを振り返って、

「もしよかったら、これ持って帰らない?」

と差し出してきたのが、24インチ(直径約60センチ)のライドシンバル!!! このIstanbulのシンバルはでかい彼がでかいシンバルをでかく鳴らす、 カリィさんの象徴でもあるのです。

あまりの大きさに思わず、「ええ…!!」と引いてしまうと、カリィさんはずいっと差し出してきて

「送ったらいいんじゃないかな?」

と。高くないと良いけど…とか言いつつも、引かない。「だって、これ私がもらったらカリィ、来月のツアーどうするの? 買わなきゃいけないじゃん!」と現実的な私にカリィさんは苦笑して

「割れてるんだ。もう使えないから、エミにあげるよ」

と引かない…。(どうみても割れてない…)

じゃあ…いただきます…と持ってはみたものの、でかい。マットさん笑ってる。私の体の半分近くが隠れてる…。カリィさんはご満悦。

別れ際、3日間あっという間だったね…4年かかったから次はいつかなあ…とお互いに苦笑いしてしまったけど、大丈夫! また必ず会えるよ! とカリィさん。

「来てくれて本当にありがとう。会えて良かった」

と、最後まで変わらず明るい笑顔のまま、お別れしました。

終わってみるとバンクーバー公演での出来事は、未だに信じられずにいます。年に何度かメールをやり取りするだけのファンに、ただライヴが見たかっただけなのに、ここまでカリィさんとメンバー、そしてローディさんが色んなことをしてくれるだなんて思ってもみませんでした。私はライヴを見ることができただけで本当に嬉しかったので、それだけで十分だったのに。

後にカリィさんから、改めてツアーへ来てくれたことへのお礼とバンドがあそこまでエミにしてくれたことが僕自身も嬉しくて、Spartaとして今音楽ができていることがとても誇りに思うよ、とメールが届きました。シンバルは、はるばるアメリカまで来てくれたことに、あれぐらいしかできないけれど何か返したくて渡したんだ、と。

自分のやりたいことに対して一直線な性格ゆえに、アメリカ”まで”見に行ったという感覚がない私です。ワーキングホリデーでバンクーバーにいたせいもあり、遠い場所という感覚も未だになくて。

でも、彼らにとっては「はるばる日本から来てくれてありがとう」と、その言葉が全員から聞こえたように、遠い国にファンがいる、と気付いてもらえたなら行って本当に良かったと思いました。

カリィさんとその音楽から、楽しみや嬉しさ、山のようないろんなことを貰ってきて、それだけで日々十分だったのに、また何倍ものものをもらって帰ってきてしまったなあ…。

とても真面目で、性格も良くて、ドラムと音楽が大好きで。物心ついたときからドラムを叩いてて気がついたら34歳になっちゃってたんだよねと笑いながら、目立つことよりもドラマーとしてもっと上手くなりたい、極めたいと話してたカリィさん。でもね、カリィさん、毎回ショーが終わるたびに「あのドラマーすごいね!」って必ずお客さんから聞こえたんだよ。何人ものお客さんがカリィさんにサインを貰いにも行ってた。自分じゃ気付いてないみたいだけど、あなたはとても良いドラマーだよ。私はファンになって本当に良かったと思いました。

次はいつ見ることができるかわからないけど、4年なんてかからずに、もしかしたら意外に早いかなあと、勝手に期待はしておきます…!


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※番外編。

最後まで絶好調だったローディのチョッパーさんの計らいにより、終演後にまでステージに引っ張り出され…

ATDIのファンの皆様大変申し訳ありません…! 本日2回目のジムさんのメインギター…ATDI時代から使っているんだそうで…(土下座)しかも、私が持つとロングスケールみたいになってるから!! 緊張してタダの素人さんの持ち方。スラッピングでもするのかな…。しかも照明さんが気を遣ってくれてライト当ててくれてるっていう(笑)

そして、カリィさんの愛用のドラムにも…(大汗)

これだけは気が引けて、前に立つだけで良い!!とゴネたんですが、チョッパーが「はい、エミ! そこに座る! ハイ、スティックもつ!!」とゴリ押しに負けて、すごく幸せそうな顔になって…るね。これまた緊張してスティックを握る場所がおかしい。そしてカリィさんの足が長すぎて、椅子高くて、足がつま先しか地面についてないから…バスドラ踏めないね…。遺影にするね、この写真…。

向かって左にあるでかいシンバルが今、我が家にあるやつです…。

※何故か今、福島にあるシンバル…。

帰り際、チョッパーからは

「君がここに来てくれたことはとても大きな意味があるんだ。世界中でその声があればまた日本にも行けると思う。その時はカリィを連れて日本に必ず行くから、待っててね」

と、思いっきりハグしながら言ってくれました。あんまり優しいこと言うもんだから胸いっぱいで頷くことしかできなかった…。

これだけ温かい人達のSparta御一行。ジムがATDIからひとり離れて、でも今はすごくいい環境と空気の中で音楽ができてるのかなと感じました。彼らのペースで長くたくさんの活動をしてほしいな、と心底思います。そして、日本でいつか彼らが見れる日がきたらなあ…!!

長文、失礼しました。。。