クリニック初診日■私は話を聞いてほしかったのだ
不妊カウンセラーになって5年。
私生活でも、私より先に不妊治療を始めた沢山の友人たち。
不妊専門クリニックの様子や情報は、もうたくさん聞いていた。
だから、初診の前夜は
「ちょっと行って、様子見てくるわ〜」
と夫に言うくらいの余裕だった。
だけどやっぱり、独特の雰囲気に緊張するものだねぇ
予約時間までの間と
待合室で呼ばれるのを待つ間、とっても緊張した。
膨らむ想像と期待
「何聞かれるんだろう」とか
「年齢的にも、なんでもっと早く来なかったの」とか
言われたりチクリと怒られたりするんかなーとか、
受診経験がないと、いくらでも想像できちゃって、
それが不安と緊張を掻き立てる。
そして反面、
これから始まるのだ。あとは前に進むだけなのだ。
良い先生と巡り会って、私たちを後押ししてほしい、という期待。
そういう類の自分の思考をシャットダウンしてもなお、心拍数はあがるばかりだった。
聞いてほしかったのだ
だけど結局、想像していたようなことは
何ひとつも、聞かれなかった。笑
持っていかなかった基礎体温表も、
「ありますか?」の一言もなかった。
(やる気ないと思われるかなと不安になってた笑)
そりゃそうだ、それも事前に知っていたはず。
臨床件数をこなし、多忙を極めるドクターが
そのような質問やお説教を、今更するはずがないってこと。
基礎体温表を最重要視していないこと。
分かっていたはずなのに
「先生がすごく丁寧でやさしい」という口コミをみて
ちょっと期待してしまっていた。
つまり
私は
お説教でも何でも良いから
ドクターから、私の心情や現状、体調面や食生活等々について
質問なり小言なりを言ってくれることを期待していた、のだ。
「話を聞いてほしい」
なぜなら、ここに来るまでに
散々悩んで苦しんで迷ったという過程があるのだから。
これからこういう風に進んでいきたいという意向があるのだから。
なかなかひとに言えない現状で、ここに来たのだから。
色々からだに気をつかって生活しているのだから。
それも含めて、私の妊活なんですからと。
尋ねてほしかったのだと、気づいた。
プロに「そうでしたか」と私の苦悩の一片でも話して
受け止めてほしいと、心のどこかで思っていたのだ。
小さな声で淡々と進む説明
だけど現実は
「はじめまして、〇〇です」という、挨拶すらなかったわけで。笑
ドクターの目も、特段笑ってない!
プロフィール写真に、騙されたかーーー?!と一瞬頭をよぎった。
(大丈夫、多分そんなことはない)
口調は優しいし、
必ず「ここまでで、何か聞きたいことありますか?」
と聞いてくれる。
だけど、小さな声で淡々と進む概要の説明。
なぜこんなにヒソヒソ声?
そんなに、誰かに聞かれちゃいけない話?
初診スタート5分以内で、圧倒的な情報量。
「えっと、もっかい説明してくださーい」みたいな気分になった。笑
こんなにシーンとしていてヒソヒソ声じゃ、
個人的には、質問しづらい。(これ、私だけなんだろうか?)
他のクリニックも、こんな調子なんだろうか?
そんなこんなで、ドクターの初回問診は終わり、
すでに知っている話ばかりだったので、
「(質問は)ないです」という、やる気ないやつみないな返答で終わった。
これ、私は一応専門知識を持ち合わせているけれど、
生まれて初めて聞く人にとっては、不安増幅でしかないだろうなと感じた。
全服の信頼を置けそうな内診
そのあと、内診があった。
これは口コミにもあったけど、ものすごく上手くてちっとも痛くも不快もなくて
すでに技術に全服の信頼をおけそう。
超音波のモニター(モノクロ)を見ながら「これが子宮ですよ」「これが卵巣」と説明してくれるが
素人目には、全然わからない。笑
「きれいですね」と言われて嬉しかったけれど、
あんな画像できれいだねと言われても、ドクター本当に言ってる?という気分にもなった。笑
とはいえ、
「子宮も卵巣もきれいです」と言われて、
それだけでも安心して、急に妊娠できる気がしちゃう、単純な私。
とりあえず、
自分のからだを大切にしてきてよかった、と
自分の子宮をハグしたい気持ちになった。
検査の夫婦差の現実
内診が終わり、次は採血。
「合わせて、今後の検査内容とスケジュールについて
再度看護師から詳しい説明があります」とのこと。
別室に入ると、
若い看護師さんがにこやかに待ってくれていた。
そして、またも膨大な量の説明と同意書。
初耳に近い薬剤を飲む時のための同意書にサインを書く。
分かっちゃいるけど、ビビるーーーー。
こういうの、心配性なのですごく怖い。
怖がるわりに、さして何も起こらないのが私のパターンなのだけれど。
そしてついでに
夫の精液検査の説明も一緒に受ける。
若い彼女は、私が初診だからか
なんだか申し訳ないように
遠慮がちに「精液」とか「禁欲」とか言ってくれる。
大丈夫なのよ、私免疫あるから。
と心の中で思いながら、
まるで姪を応援するような気持ちになって説明を聞く。
精液検査は、自宅で取って妻が代わりにクリニックに持ってきても良いし、
クリニックに夫が直接きて採取してもいいという。
これ、最悪一度も夫は来院せずに、ドクターとも会わずに
治療が進み、妊娠するパターンもある訳か、と改めて驚く。
それもこれも全部、妻が説明して主導になって動かないかんのね。
なんてこったい、妻の比重重すぎ。
加えて、妻の今後のスケジュールについては、
「子宮卵管造影検査は、平日のみです」
なので平日に予約してください。
としれっとアナウンスされる。
この検査、生理周期に合わせるから、
もちろんのこと、生理が来てみないと
スケジュールも立てづらい。
それは、致し方のないことではある。
「そりゃ仕事辞める女性が続出だわ。」
と思った。
有無を言わさずにのしかかる、女性への負担。
妊活していて、思うように妊娠できず
心が折れかけている女性にとって、
これはなんとも言えない負担。自責に駆り立てられる人もいよう。
世の中の
不妊クリニックに通うすべての女性の皆さん、
本当にご苦労さまです。
採血にて感じた安心感
そして最後、検査のために3本も採血した。
普段より、多いーーーー!
「念のため、横になって採血しましょう。
その方が、気持ち的にも安心ですから」
という看護師さんの、優しい配慮に私は胸キュン。
誘導されるがまま、ヘラヘラと横になり
質問したりお喋りしたりしながら採血してもらった。
彼女との関わりから、
そうそうこういう感じ。
質問しやすい雰囲気で、リラックスして私は受診したいよ。
コソコソしたい訳じゃないの。
と思った。
初診で感じた違和感
およそ1時間半の滞在で感じた、独特の疲労感と違和感。
疲労感はいいとしよう、仕方ない。
だけどなんだろう、このちょっとした違和感。
これは、不妊クリニック初心者だから思うことで、
歳月が経てば変わっていくことかもしれないけれど、
「今」思うこととして、記録しておくと
私の感じた違和感はこうだった。
『必要以上に守られるプライバシー』
『必要以上に静かなクリニック』
そこまで?というくらい念入りに、プライバシーが守られるシステムになっていて
驚くんだか感心するんだか、という感じ。
そして院内は
ボリューム小さめのクラシックのBGMが流れ、
活気がないというか不自然に静かというか
なんだか、腫れ物に触られているような気分になるというか。
コソコソヒソヒソとせざるを得ないのは、なぜ?
わかってる、色んな心情の人がいて
色んな状況の人がいて、
とてもつらい思いをしてきている人がほとんどだからこそ、
このクリニックが存在していること。
だけど、これだけは間違いたくないのは
私たち患者は、だめなことをしている訳でも
恥ずべきことをしている訳でもないし、
赤ちゃんを授かるべく行動しているだけなのだから、
堂々としていたらよいということ。
だけど、なんだかネガティブな行動をとりそうになる、
それを助長するような環境にしちゃダメだと思うのよ。
「なんだか言い出しづらい」
「誰にも相談しづらい」
「理解されづらい」
という不妊治療のネガティヴなイメージを
出来るだけクリーンに表現しました、みたいな感じがして
私は違和感を覚えてしまった。
「大丈夫!気にしなくていい。一緒に頑張っていきましょう!」
「悩んでいることは吐き出して帰って!」
みたいな、
どん底にいる人を引き上げるくらいの明るいメッセージを
私は求めてしまっていたのかもしれない。
そして、
だからこそ私が持っている資格が必要なのね
とも思った。
話せる場所、相談できる場所
大きな声で、愚痴も笑い話もできる場所
もっとフラットに
妊活や不妊について話せる場所があってもいいよね。
と、個人としては
身近な人には話しづらい性質だからこそ、そう感じた。
と、そんなことを思った初診日。
次回はどうなるでしょう〜