こんなときどうする?「実務に役立つ意思決定論 」①
<こんなときどうする?シリーズ>
第4回目のテーマは、「キャリアコンサルタント試験には(今のところ)出てきていないが、知っていると実務上役に立つ意思決定論 」をご紹介し、それにまつわる AREYA KOREYA を書いてみます。
この記事は、実践の現場でこんな視点も大事にしてね!こんなことも使えるかもよ! といった実務上何かちょっと役立つかもしれないと私が思うことや、知っていることを散発的に書いていく「こんなときどうする?」シリーズの4回目です。
キャリア(進路や就職)を選択し意思決定をする際に、どのような手順を踏めばよいのか?(全体の流れ)や、どのような項目について検討すればよいのか?ということが分らないと、職業的優柔不断(以前のNoteのURL参照)の大きな原因となり得る、ということがわかっています。
前回の記事はこちら
このことに関して、私のスーパーバイザー(アメリカのキャリア心理学者)からは次のようなアドバイスをいただきました。
「キャリアに関する意思決定プロセスというものは、非常に複雑であることが特徴である。このことを考慮すると、クライエントの文化的背景や年齢、あるいは現在直面している問題が何であろうと、全てのクライエントに対して、意思決定のプロセスやその原則について概要を説明するための時間を確保することが、セッション(面談)の質を上げ、クライエントに有益になる。現在は、これまでとは違って、キャリア選択に関する意思決定をしなければならない機会がますます増えているので、意思決定のプロセスやその原則について説明をすることは、ますます重要になってくる。」
スーパーバイザーからは、意思決定のプロセスやその原則についてだけではなく、同時にキャリア開発プロセスについても説明をすることを勧められました。
「キャリア開発の基本的なプロセスについても、予め説明することが望ましい。プロセスを知ることによって、クライエントは、生涯にわたって自分のキャリアをどのようにマネジメントしていったらよいかということについて、必要不可欠な知識を得ることができるから。」
皆さん、意思決定プロセスやキャリア開発プロセスの図などをクライエントに渡せるように準備をしていますか?
ハンドアウト(資料)を自分で作成
↓
セッション時にそれを使って説明
↓
その図を見ながらクライエントからの質問や疑問に回答
↓
持ち帰ってもらう
↓
セッション時以外でもクライエントに活用してもらえるように、是非準備をしてください。
(ちなみに、意思決定プロセスやキャリア形成プロセス以外のことに関しても、ハンドアウトの準備は必要かと思います。)
キャリアに関する意思決定プロセスの中で、クライエントにとって不足している情報は何か?というと、以下の3つが挙げられています。
私たちは、今、変化の激しい環境の中に生きています。キャリアに関する意思決定は、複雑なライフやキャリアの道のりに組み込まれてしまっています。多くのクライエントが、よくわからない中、不安や困惑した気持ちを抱えながら相談にいらっしゃいます。
クライエント自らが意思決定をしていくにあたって、このような不足している情報に関する知識をしっかりとお伝えすることが大事なのです。
とはいえ、「意思決定理論は、どうもキャリアコンサルタントの実践現場では活用しにくいと感じる」という声を、よく耳にします。そのために、あまり理論をセッションの場で活用することなく、なんとなく話をきく、寄り添う、伴走する…といった、フワ~とした支援になってしまう、と。
そのような声も踏まえて、以下の2つの「キャリアコンサルタント試験には(今のところ)出てきていないが、知っていると実務上役に立つ意思決定論 」を、今回と次回の2回に分けてご紹介したいと思います。
The hope-centred career development model 希望中心型モデル
先ほども書きましたが、変化が激しく、予測不可能な現代社会においては、クライエントのキャリア開発や移行を円滑に進めるための効果的な行動や方策を特定し、実行していかれる支援をする必要性は、ますます高まっています。そのため、キャリアコンサルタントの役割は、そのようなプロセスの一般的な経過と、それを達成させるために適切な態度などの理解を促進していくことを支援することです。
手順
①上のような図を描きながら、それぞれの構成要素を説明します。
1 Reflection
on Oneself and One's Environment
自分自身のことについて内省をしましょう。
今の状況や自分を取り巻く環境について振り返ってみましょう!
2 Clarity
Internal et External
自分自身が感じたり、思ったりしていることを、内から外に出して、明瞭化していきます。言葉や絵にしてキャリアコンサルタントに伝えていきましょう!
3 Vision
of Objectives
目標、未来像、理想とする姿を具体的にイメージしてみましょう!
4 Implementation
of Actions
描いた目標、未来像、理想とする姿に向けて、具体的な行動を起こしてみましょう!
1’ Reflection
on Oneself and One's Environment
自分自身のことについて内省をしましょう。
今の状況や自分を取り巻く環境について振り返ってみましょう!
2’ Answers
to Questions
クエスチョニング
自分なりに答えてみましょう!
3’ Assessment
of the Options
たくさんの選択肢、オプションが有りますね。それぞれを自分にとっての基準で評価、判断してみましょう!
4’ Determination
of the Plan
「何を達成するのか?」「どれを目標にするのか?」決めましょう!
Determinationという言葉には、「決心、決意、決断力、決定、確定」という意味の他、「限定していく」という意味もあります。自分にとって大事なものに一旦絞りましょう。the Planは単なる予定ではなく「何かを達成するための、比較的きちんとした計画」を表します。この図を見てわかるように、何度もサイクルを回していきます。一旦絞ったものに、まずは注力をする決断をしてください!だからといって、未来永劫、他の選択肢を捨ててしまう必要もなければ、諦めてしまう必要もないです。アレコレ思い悩むのではなく、とりあえずtake an action! やってみて、試行錯誤の中から学ぶことが大事です。
5’ Assessment
of Progress and Adaptation
Implementation of Actions でやってみたことを評価・アセスメントします。
Progressは、「進歩、発達、発展、前進、進行、成り行き、経過」などを意味するので、このような観点からて評価をします。
adaptationは、「適合、適応、改造、改作」などを意味するので、計画通りにやってみてどうだったか?あるいは、計画はしたものの、現状に即応する形で何かしらのアレンジを加えてやってみたものがどんな感じだったか?ということも含みます。
②まず、中央の星のような絵を描きながら、キャリア開発の中心はHope(希望)であることを説明します。
ここでいう希望とは、
ここでは、クライエントに対して「あなたには潜在的に、このHope(希望)が備わっているんだよ」ということも、併せて伝えてあげましょう。そして、キャリア開発は、自分の好み、価値観、特性、願望や望む未来像、自分が置かれている状況や環境の中に存在する機会と制約について、自問自答をすることから始まることを伝えながら、円(1 Reflection on Oneself and One's Environment)を描いていきます。
③次に、2つ目の円(2 Clarity Internal et External)を描き、②の問いについて語ってみることによって、自分自身についてのより明瞭な理解や関わりたいと思っているキャリア(仕事)についてのイメージを持つことができるようになることを伝えます。
そうすることによって、自分自身と自分のキャリアについての豊富な情報を持ったううえで、選択肢についての評価をすることができるようになります。
そこから、3つ目の円(3 Vision of Objectives)で、具体的にイメージをしたキャリアに関わる未来像を1つまたは複数具体化することができます。
④そして、最後の4つ目の円(4 Implementation of Actions)は、次のステップである「目標達成のための行動計画」を作成し、それを実行することを表しています。
クエスチョニング(Answers to Questions)では、自分の内面や外部の状況や環境について問いかけながら、目標達成に向けた自分の歩みを継続的に評価し、内外の変化に素早く適応していくことが必要であることを明示することができます。
このように、キャリア開発は、一度選択し実行したら終わりではなく、継続的なプロセスであることを、伝えることができます。
⑤Hope(希望)の星型の回りにある薄緑色の矢印は、この意思決定モデルが、再帰的(自分の一巡目の行為の結果が自己に戻ってくるような、フィードバック・ループであること)であることを表しています。
キャリアコンサルタントは、
いかがでしょうか?キャリア選択の意思決定理論は多々ありますが、私はこのモデルが実践の場面で非常に使い勝手が良いと思っています。
なかでも、キャリア開発は、一度選択し、実行したら終わりではなく、継続的なプロセスであるということや、再帰的な性質を持っている点。このことを予め伝えて、試行錯誤のプロセスに対してコミットしてもらうことができる機会を、セッションの最初に持つことができる意義はとても大きい、ということを感じます。なぜなら、大抵のクライエントは、単線化されたものだと思いたがる傾向があるので、この点を最初に理解していただいて七転八起の精神で取り組んでもらえるようなマインドセットをすることで、後々「え~ また"やり直し"をしなくてはならないの~」と意欲減になることを、ある程度未然に防ぐことができるからです。
今回は、「キャリアコンサルタント試験には(今のところ)出てきていないが、知っていると実務上役に立つ意思決定論 」としてご紹介したい2つのモデルのうち、1つをご紹介しました。
次回は、Ikigaiモデル The Ikigai Diagram (Mark Winn., 2014)をご紹介しますので、お楽しみに!