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マッチングアプリ体験談17-9

●第17話「マグロ男」9

前回の話はこちらから。

私はもう言葉で説明するのが面倒くさくなった。また変な男に体を許してしまった。自分が嫌いになった。隣で横になっている男に背を向けて私は泣いているフリをした。本当に泣きたかった。「嫌われちゃったかな」と呟いている。これで分からないなら相当なクズだ。

「とりあえず服着ていい?」私は着てきた服を全て身に纏った。このまま出て行こうかとも思ったが、とっくに終電も終わっている時間。さすがに事後の女性が夜道を歩くのは危険すぎる。近くにいたくなくてソファに座って泣き真似をしているうちに本当に涙が出てきた。しばらくして「落ち着いた?」と聞きながら隣に座ってきた。

「『いきなり何?』って感じだよね?途中でも言ったけどさ、ゴム付けないとかホントありえないから」と言ったら、「ごめん」と言って抱き着いてきた。感情的になっていると思われたか。私が泣いていたのは、好きでもない男と簡単に体の関係になった自分に腹が立ったからだ。避妊をしないことは別の次元で受け入れられない。同じ人種と認識できないレベルだ。生理的に無理というやつか。

私のやり方が完全に悪かった。「避妊しないこと=泣くほど嫌なこと」というイメージを植え付けてしまった。違う。「避妊=人間として最低限のマナー」だ。これをできないのは挨拶ができないのと一緒。私にとっては同じ世界を生きる人間ですらないのだ。これでは情緒不安定な女の子を宥める優男になってしまう。

その後、テレビを点けて他愛もない話をしていると、こう問い掛けられた。
男「スキン買いに行く?」
私「うん!」
男「あ、正解だった?笑いを取るつもりだったんだけど」
コンビニに行こうと腰を上げた。

2人で外に出た時刻は午前3時を回る頃だっただろうか。
男「でもね…一つ困ったことがある」
私「その先は言わなくても分かるよ。サイズがないってことでしょ?」
男「あ、違う違う。最寄りのコンビニもう閉まってるの。でも1分ぐらい先まで歩いたコンビニなら開いてる」
住宅街を歩く男は、陽気に歌など歌っている。こんな夜中に迷惑極まりない。聞こえてるから静かにしてよと怒ったが、どうやらまた感情的な女と思われたらしい。お話にならない。

男の家からは車で30分も走れば海に出るそうだ。確かにだんだんと開放的な造りの建物が増えてきた。このまま1時間以上も歩かされることになるとはこの時の私はまだ知らなかった。唯一私の予想が当たったことといえば、コンビニをいくらはしごしても男に合うサイズのゴムが置いていないということだ。

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