マッチングアプリ体験談17-6
●第17話「マグロ男」6
前回の話はこちらから。
家に入ると、なんだか埃っぽいような、生乾きの細菌が繁殖したような臭いがした。入ってすぐ廊下に洗濯物が干されている。家の中が真っ暗だ。廊下には電球を設置していないのかもしれない。
ワンルームのリビングに通され、男はすぐにテレビを点けた。「眩しいの好きじゃないんだよね」と言って部屋の明かりを点けない。そのままソファに座る男に「手洗っていい?」と洗面所を借りる。え、帰ったら手洗いうがいってどの家庭でもやってることじゃないの?
洗面所に入ると開けたままの洗濯機が目に入った。柔軟剤を入れるところには溶け残った分がそのままこびり付いてそこに埃が付いていた。どういうこと?ここってこんな青くべっとり柔軟剤が付いてる場所じゃないよね?
洗面所で手を洗いたいのだが、ハンドソープが置いていない。仕方なく、こちらも扉が開いたままの浴室を覗くと固形石鹸が小さな棚にそのまま置いてあった。いくらなんでもワイルドすぎやしないか。これを使うのは気が引けて、水だけで手を洗った。うがいもしたいところだが、水洗いしかしていない手で水を掬うのには抵抗があり、諦めた。
テレビを観ながらソファで乾杯し、缶のお酒を飲む。男は「食べる?」と言って自分が手を付ける前にからあげクンを差し出してきた。お腹が空いてきていたから嬉しかった。5個入りのうち2個くれた。満腹にはならないけれど、お腹がグーグー鳴らない程度には腹ごしらえできたかな。
もうこの後の展開など分かりきっている。いくつかパターンはあるものの、シナリオはほぼ決まっている。「こっちにおいで」と言われ、男の肩に頭を乗せた。その後にあまりに衝撃的な展開が控えすぎていて、私はこのあたりの流れを忘れてしまった。
覚えていることは、私と男はキスをしていたということ。やたらと上の前歯と唇の間に舌を入れてくる。そんなところがピンポイントで感じやすい人なんているだろうか。男の片手が背中側の腰から滑り込んできて、ブラのホックを外された。
確か、服の上から、ブラの上から、そして直接、胸を揉まれていたような気がする。大きく握るように掴むような触り方は少し痛いだけであまり好きではない。巷では「テクニック」という言い方をするかもしれないが、声のトーンや触り方でカバーできることがほとんどではないだろうか。女性は、思っているよりも数十倍、数百倍、優しく、柔らかく触れられることに快感を覚える。フェザータッチで感度を上げて、感覚を研ぎ澄まさせるのだ。しかし、そんなこと男には全く通じていない。
そういえば6回まで続いているこのエピソード、いまだにタイトルを回収していない。今のところ、全くマグロ要素は出てきていない。全何話になるかは未定だが、最終回かその1つ前になりそうな予定ではいる。
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