胚や卵子が雑菌混入により全滅したケース
【ご質問原文】
はじめまして。 いつも拝見しています。
先日採卵をしたのですが培養液に雑菌が入っていて全滅したと言われました。
他の人の培養液には異常が無いので病院側の原因では無いといった内容の説明がされました。
雑菌を取り除いていただいてから培養していると思っていましたが、こういったケースはあり得るのでしょうか?
検索しても似ている事例が出てこないので、どうしたらいいかわかりません。
【回答】
ご質問ありがとうございます。
培養士が恐れてやまないコンタミネーション(通称コンタミ)ですね。
これは、培養液の中で細菌が混入して増殖する事で起こります。
稀ですが、起こり得ます。
私はそこそこの件数のクリニックにいますが、頻度は年に1回あるかないかくらいですね。
ほとんどの場合は精液から細菌が混入するため、ふりかけ法で起こる場合が多いです。
というか、顕微授精で起こる場合はクリニック側の無菌操作レベルが低いですね。
通常、密度勾配遠心法やスイムアップ法により調整を行うので、細菌がいる精液の液体部分は除去されます。また、培養液中には抗生物質が入っているのでコンタミが起きる可能性は極めて低いです。
ただし、完全に細菌を除去できているわけではないと思うのでコンタミを完全には防止できません。
一度混入すると細菌は培養液に含まれる豊富な栄養素を使って爆発的に増えます。
卵子や胚には透明帯があるので卵子の細胞自体に感染する事はないとは思いますが、培養環境をめちゃくちゃに悪くされるので卵子や胚にとって致死的な環境になります。
人に例えると、小さい部屋に大量の虫を放出されて、そこで一晩過ごすようなものですね。
精液が原因であれば、ご主人の前立腺の細菌感染などが疑われるため、抗生物質の服用で原因菌を除菌してからの採卵を促す場合もあります。
以上です。
ご参考になれば嬉しいです。