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PGT染色体異常判定の胚は妊娠しないのか?
【ご質問原文】
いつも為になるご意見をありがとうございます。
私は10個以上の胚盤胞をPGTAに出しましたが全て染色体異常でした。
傾向としては15,16,22番がモノソミー又はトリソミーが多かったのですが、こちらを移植しても着床しなかったでしょうか?
先生からはモノソミーは絶対に着床しないと言われましたが、先日3番モノソミー欠損の卵で妊娠、無事に出産された方がおられました。お子様の成長で気になる症状は特にないそうです。
モザイク胚はよく聞きますが、 染色体異常でも妊娠の可能性があるPGT-Aはありますでしょうか。
私自身は10個以上の胚移植は全て着床せず、10個以上のPGTは全て染色体異常で、先日は胚盤胞もPGTも諦めて初期胚移植しましたが陰性でした。
もしも染色体の番号によって染色体異常でも妊娠できる可能性のあるPGT-Aがあれば教えていただきたいです。
【回答】
ご質問ありがとうございます。
まず、染色体異常が起きている染色体の番号によって妊娠しやすいかどうかに関しては、その染色体で異常が起きていても産まれてくるかどうかによって変わってくると思います。
例えば、21トリソミーいわゆるダウン症は、染色体異常でも産まれるため、その他の染色体番号(13番、18番は除く)のトリソミーよりも着床・妊娠しやすいと言えると思います。
しかし、通常のPGTでは、むしろこれらの染色体異常の可能性がある胚の移植は避けるべきとされています。
(モザイクであっても移植すべきでないという見解)
PGTで染色体異常と判定された胚を移植したら着床して出産に至る事はあるのか?という疑問に関しては、
おそらくあり得るだろうと思います。
理由は、何度も繰り返しいろいろなご回答でお話していますが、「PGTは全ての細胞を調べているわけではないため」です。
PGTで異常胚と判定されても、胚の胎児になる部分やその他の細胞が正常であれば、着床、出産に至る事はあると思います。
つまり、検査は100%ではないのです。
モノソミーとトリソミーのお話ですが、確かに過去の報告の多くはモノソミーは着床しづらいと言われていました。
これは、遺伝子的にトリソミーは過剰であり、モノソミーは欠損であるからだと考えられています。
必要な遺伝子が足りていないならそもそも発育できないだろうという考え方ですね(ターナーのような例外あり)。
その通りであるとは思うのですが、そもそもPGTでモノソミーが出るという事の意味合いが通常の染色体検査とは違います。
胚が染色体異常となる経路は2種類あり
1つ目は受精前の卵子や精子に染色体異常が起きた場合
これは、おそらく全ての細胞が同じ染色体異常を有しているため、モノソミーであれば着床もしないと思います。
2つ目は受精後の分裂で染色体異常が起きた場合
この場合、細胞全てが異常となるよりはモザイクとなる可能性が高くなります。
そのため、調べた細胞の箇所によって違いが出てくる可能性があります。
また、体細胞分裂でモノソミーが起きたと言うことは、2つに分かれた細胞の片方が多く染色体を取ってしまったということなので、別の細胞はトリソミーとなっているはずです。
となるとどうなるかというと、この部分はモノソミーの細胞集団、この部分はトリソミーの細胞集団というように、偏りが起きてしまう可能性はあるんですよね。
その偏った細胞集団を採取してPGTに出してしまうと。。。。染色体異常の胚と判定されてしまうという可能性があると思います(実際にはモザイク胚)。
少し難しい話となってしまいましたが、PGTは完璧な検査ではなく、正常胚でも染色体異常胚でもどちらもリスクや可能性が存在する検査であるとお考え頂くのが良いかと思います。
しかし、PGTを行なったからには、染色体異常と判定された胚を移植することは今のところ難しいかと思います。
以上です。
ご参考になれば嬉しいです。