胚盤胞に空胞がある影響
【ご質問原文】
はじめまして。いつも貴重な情報配信をありがとうございます!
移植を考えているのですが、胚盤胞は4AA空胞ありです。
空胞は妊娠率、妊娠継続率、胎児の発育にどのぐらい影響しますか?
【回答】
ご質問ありがとうございます。
胚盤胞に空胞(正確には液胞)がある状態はよく観察されます。
胚盤胞に空胞がある事の影響についての報告はあまり多くないので、確実な事は言えませんが、胚発育の過程で空胞が発生した胚の影響を比較した論文を見つけました。
3日目、4日目の胚に空胞が発生した胚盤胞と、発生しなかった胚盤胞を比較したところ、空胞が発生した胚の胚盤胞形成率、良好胚盤胞率が有意に低下していました。
一方で、正常胚率、異常胚率、モザイク胚率、着床率、継続妊娠率、正児獲得率に差はなかったとしています。
しかし、この報告ではさらに空胞が発生した胚の空胞が発生した細胞に着目し、
胚盤胞に取り込まれなかった細胞
(つまりはフラグメント)と
胚盤胞に取り込まれた細胞
に分類して比較しています。
その結果、胚盤胞に取り込まれた細胞に空胞が発生した場合、空胞なしの胚盤胞と比較して、モザイク胚率が有意に上昇し、着床率、継続妊娠率、正児獲得率が有意に低下しました。
ちなみに、早産や胎児体重、先天性異常などの頻度には差は見られませんでした。
まとめます。
・ 空胞が発生した胚は、胚盤胞形成率、良好胚盤胞率が低下する。
・ 胚盤胞の細胞に空胞が発生した場合、染色体の正常性や妊娠成績に負の影響を与える。
臨床では、胚に空胞があるから凍結や移植をしないという事はほとんどないと思います。
空胞の有る無しよりも、胚盤胞のグレードや年齢による影響の方が大きいと考えられるため、同一グレードの胚盤胞が存在する時の優先順位の指標として利用するパラメータだと思います。
以上です。
ご参考になれば嬉しいです。