ニュージーランドのアフターピルと避妊オプション
国が違えばいろいろ違う。
認可されているものも違うし、購入できる場所も違う。
長く暮らしていたら、現地の教育や日々の生活の中で自然と知識や情報を得ていくのかもしれないけど、例えば留学やワーキングホリデーなど、ある程度短い期間でニュージーランドで暮らす人たちは自分がそういう状況にならない限り、出くわすことのない情報なのかなって思います。万が一、「あっ!」って思ってから情報を調べることもできますが、事前に知っておいて絶対に損はないことなので、知らない人は読んでみてください。
アフターピルとは
アフターピルとは「緊急避妊薬」のことで、性行為後72時間以内に服用し、妊娠を防ぐ目的で使われます。ホルモン剤で、ホルモンの働きによって排卵を抑制する、もしくは排卵後の場合は精子の侵入を抑制したり、着床を阻害する効果があります。24時間以内に服用すると効果は98%程度と言われており、100%ではありません。
日本では2011年に認可され、医療機関で診察の上処方されます。病院によるのかもしれませんが、医師が服用を確認する(お水と薬の中身だけ渡されて、医師の目の前でちゃんと飲んだかどうか確認される)と聞きました。保険適応ではなく、費用は7000〜15000円ほど。最近ではオンライン診療での処方も可能になっているようです。
「アフターピル/緊急避妊薬」と「低容量/超低用量ピル」は同じ「ピル」という名前がついていますが役割は全然別物です。
ニュージーランドのアフターピル
アフターピル、英語ではemergency contraceptive pill(エマージェンシーコントラセプティブピル;緊急避妊薬)もしくはmorning after pill(モーニングアフターピル)と呼ばれています。
・アフターピルの効果は96〜99%
・24時間以内の内服が望ましいが、120時間(5日)の内服でも妊娠を防げる可能性がある。通常は72時間が限度とされているが、2010年の研究では72時間以内と120時間以内での妊娠する可能性にほぼ差はない
・かかりつけ医、Family planning association または薬局で購入可能
・吐き気の副作用がある場合も
・3時間以内に嘔吐した場合は新たにアフターピルを服用する必要あり
・既往歴によってはアフターピルが使えない場合もある
MOH(Ministry of Health;ニュージーランド保健省)のホームページより
ニュージーランドでは処方箋なしで薬局でも買えます!
処方箋なしで薬局で買う場合は$35〜50(約3000円前後)、所要時間は5〜15分程度。
ちなみにニュージーランドに居住権がある場合はFamily planning associationで22歳以下無料、22歳以上は$5または$40で処方されます。
アフターピルの服用は内服するタイミングが避妊成功率に大きく関わってきます。
妊娠を望んでいない場合避妊することはとても大切なことですが、コンドームでの避妊成功率は結構低く(85%、研究による)、失敗することは誰にでも起こり得るし、それは全く恥ずかしいことではないです。
失敗した時に、その次にどうすれば良いか、知識があれば自分で自分の体を守る行動ができます。
ニュージーランドの避妊オプション
Family planning associationのYoutubeビデオに4分でまとまっています。イラストが可愛い。
避妊方法の比較
最も効果的(妊娠率1%以下)
・Vasectomy and Tubal ligation 精管切除と卵管クリップ
・Intra uterine device - IUD 子宮内避妊用具
・Implant 避妊インプラント
中程度(6〜12%)
・Depo Provera プロゲステロン注射
・Combined oral contraceptive pill 複合経口避妊薬
・Progestogen only pill プロゲステロンのみのピル
低度(18%人以上)
・Female condom 女性用コンドーム
・Male condom 男性用コンドーム
・Fertility awareness 基礎体温や月経周期からの危険日チェック
・Withdrawal :penis withdrawn before ejaculation 外出し
避妊方法のカテゴリー分け
長期間
・避妊インプラント;マッチ棒程度のインプラントを皮下に設置する、効果は5年持続
・IUD;子宮内に小さな用具を挿入する、3年かそれ以上持続、性行為は妨げない
ホルモン剤
・プロゲステロン注射
1回の注射の効果は12週間、3ヶ月ごとに注射する。きっちり注射していると妊娠の確率は1%以下、ただ通常は(忘れる場合も考慮すると)3%妊娠する
・複合経口避妊薬
エストロゲンとプロゲステロンの複合薬。毎日決まった時間に服用する、飲み忘れがない場合は1%以下の妊娠率だが、飲み忘れを考慮すると8%、副作用や内服できないケースもある
・プロゲステロンのみのピル
妊娠の確率は複合経口避妊薬と同じ、副作用や使用制限はほぼ無い
バリア
・男性用コンドーム
完璧に使用して2%の妊娠、失敗を考慮すると15%は妊娠する、潤滑剤を使用すると避妊失敗率は増加する
・女性用コンドーム
完璧に使用して5%の妊娠、失敗を考慮すると21%は妊娠する
基礎体温や月経周期からの危険日チェック
25%は妊娠する
緊急避妊
・緊急避妊薬(アフターピル)
・IUD(copper IUD)
永久に避妊する(手術が必要)
・精管切除
・卵管クリップ
避妊方法の比較、避妊方法のカテゴリー分けともに
引用はFamily planning associationのホームページより
はじめ避妊方法の比較を見たときは、コンドーム、危険日チェック、外出しが同じ避妊方法のカテゴリーに入れられていることにびっくりしました。危険日チェックや外出しを避妊方法として認識したことがなかったので。でも、危険日チェックでの妊娠の確率が25%って、単純計算やと4回中1回は妊娠する確率。そんなの避妊方法って言えるのか・・・。よくよく考えたら、この表は「コンドームの避妊成功率はそんなに高く無いよ」ってことを伝えたいのかな、と思いました。
危険日チェックと外出しを除いたとして、紹介されている9つの避妊方法のうち、精管切除と男性用コンドーム以外の7つは女性が主体となって使用できるものです。自分自身の体とライフスタイルに合わせた選択が非常に重要です。😌
ちなみに、この記事を読んでくださっている方の中には日本在住の方もいるかと思いますが、Family planning associationから紹介されている避妊オプションのうち、「避妊インプラント」のみまだ日本未認可ですが、それ以外は全て日本でも認可されています。日本にいてもニュージーランドにいても、知ることで選択できるオプションが増えることには変わりないので、自分に合った方法を探してください。
今回はアフターピルと避妊オプションに焦点を当てたので性感染症については述べていませんが、上記の避妊オプションのうち性感染症の予防を助けるのはコンドームだけです!!!
ちょっと回りくどい書き方をしましたが、それはコンドームを使用していても性感染症を100%防ぐことはできないからです。
性感染症予防と避妊を両方考えると、他の避妊方法とコンドームの併用がおすすめです。更にいうなら、パートナーが変わるタイミングでふたりとも性感染症検査を受けておくのがベストです。性感染症に罹患すると今後の妊娠に影響が出る場合もあるので。
最後に
性教育や月経のこと、わたしはもともと関心が高い。
なんでかなって振り返ってみると、わたしは小学生ぐらいから親から(主に母から)教えてもらってきて、そういう知識を持っていることが自分を守ることにも繋がり、大切なんだという感覚があったからだと思います。
それに加えて、わたしは看護師になるために進学したので、看護師・保健師・養護教諭として働く友人が多く、学生時代から社会人になってもずっと興味のあるトピックでした。
生物学上女性として産まれたら、月経を避けることはできないし、妊娠も。女性器疾患や不妊治療を経験している友人たちも周りにいるし、そうでなくても話題に登る。定期的に子宮頸がん/乳がん検診に行っている同年代の友人も結構いて尊敬します。まだ20代・30代と思うかもしれないけど、特に子宮頸がんは若年層でも罹患率が高いので・・・アメリカでは18歳以上の女性は毎年子宮頚がん検診を受けるそうです。
noteをはじめたのがきっかけで、性教育や月経についても書けたらいいなって思っていました。でも、こういう記事に抵抗がある人は性別にかかわらず女性でも男性でもいると思う。「生理は汚い」とか、「公の場で話すもんじゃない」とか、ネガティブな印象を持っている人もいる思います。色々考えて、書きかけたまま放っていたのですが、やっぱり書こうって思いました。
ぼやき
「アフターピル 日本」と検索してみたらオンライン診療の広告と広告いっぱいのニュース記事ばかりが上位に食い込んでいました。一方「morning after pill new zealand」とググってみたら1番目が保健省のホームページ、2番目がFamily plannning associationのホームページでした。公的機関がしっかりとわかりやすく情報発信をしている点、ニュージーランドは分かりやすくていいなあ。
日本には性教育Youtuberがいたり、民間企業が力を入れていたり、性教育が以前よりはオープンになりつつあるなあと思いますが、文部科学省(中学校学習指導要領)によると中学校での性教育は「受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする。」と取り決めがあって避妊や中絶の話は含まれないそうです。センシティブな内容だからこそ教育として大切なのにな〜と個人的には思っているし、正しい情報にみんながアクセスできるようになったら良いなと思います。
もうひとつ、わたしは日本でもアフターピルを薬局で買えるようになって欲しいなと思っています。前述の通り、アフターピルの服用は早ければ早いほど効果は高いです。都市部は問題ないかもしれないけど、産婦人科医がない地域もあるし、年末年始やゴールデンウィークなどは通常診療が長期間お休みになってしまいます。緊急で受診することもできますが、その場合は費用がかさむことも・・・。
日本でのアフターピルの認可自体が2011年だったことにも驚きですが(遅すぎ)、医師の処方なしにアフターピルが買える日も近い未来現実になって欲しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。