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架空エッセイ「モエカとエマちゃん」
「客観視してるつもりかもしれないけど、それってどんどん自分に注目してるだけだよ。自意識過剰だよ」
モエカはケロッとした顔でそう言った。
「いや違うよ。ディズニーで被り物つけてはしゃいでる自分をドローンで上から見てる感じ!自分がこんなことしてるのかって遠目で見て恥ずかしくなっちゃうんだよ」
「だからそれが自分中心じゃん。本当にドローンで見てるなら他にもいっぱいミニーの耳とかベイマックスとかスパンコールでキラキラした被り物つけてる人だって見えるじゃん。だって、スパンコールだよ。エマちゃんが耳つけてるのなんて別に恥ずかしくないでしょ」
私の理路整然とした自己分析は彼女のナチュラルボーン正論力に負けてしまった。あとスパンコールの被り物は恥ずかしいと思ってるんだな。
私は、はしゃいでる自分に注目しすぎていた。いつだってそうだ。身だしなみに気を遣い出した自分、流行り物に手を出している自分、良い先輩ヅラしようとしている自分。それらすべてにうっすらと恥ずかしさを覚えていたのは自分しか見えていなかったからだ。他人からどう見えているかを気にしているようで、実はどんどん自分しか見えなくなっていた。
自意識を過剰に尖らせて勝手に苦しんだ割にお姉ちゃんの友だちは髪の毛をサラサラだと褒めてくれたし、オーディション番組の話で隣のクラスのクミちゃんと盛り上がったし、バスケ部の引退試合の後に泣きながら2年のサクラが抱きついてきた。
「モエカ的にはスパンコールはナシなの?」と私が聞いたらモエカはフフっと笑って「スパンコールのカチューシャと紙ストローだけはナシだね」と言った。たしかにどっちもナシかもしれない。
また同じようなことを書いている。けれど、今回はフィクションだ。
パンチラインを書きたいけれど照れるときに架空の人物に言わせてしまう。モエカ、ごめん。
自分を客観視して苦しんでいる人の大半は客観視なんかしていなくて、ただ自意識が過剰になっているだけだ。自分のことを客観視できているのはゼンモンキーの荻野将太朗とかだろ、と今年のキングオブコントを見て本気で思った。本人がどんな気持ちであの感じのキャラをやっているのかは知らんけど。
自分の意識を自分ではなく、やりたいことや興味のあるものに振り分けるときっと何かが回り出す。自分の予想できる未来は狭くて、本当にやってくる未来は予想だにしないものだ。自意識が過剰な状態で思いついたダサい自分が他人を喜ばせることもあるしね。ちなみに昨日の俺は明日自分が短めの小説をインターネットに晒しているとは思っていない。
あと、物語を考えるときに女性が主人公になってしまうのはそうしないと全然書けなくなるからです。男にすると物語が自分に近すぎてちょっと無理。紀貫之みたいに女性に扮しないと書けないし、お肌ぷるっぷるの女の子の気分にならないと現代日本って生きられないから。
多分、話し方とか内容とか女性が見たら変だなと思うところも多いと思うのですが、しゃあないっすわ。架空エッセイだから。
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