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メキシコとチョコレートの歴史

メキシコが実はチョコレート発祥の地と知っていましたか?

チョコレートの原料であるカカオは、古代メキシコ文明の中で長い間愛用されてきました。

今回はそんなメキシコとカカオの歴史を紐解いていきましょう。


【略歴】


メキシコにおけるこの種子の最初の痕跡は紀元前 1900 年と 1800 年に遡り、それぞれチアパス州ベラクルス州で発見されました。

カカオは日陰で栽培され、その果実が心臓に似ているため、先住民はカカオを暗闇、冥界、血と結びつけました。このため、儀式において重要視され、その消費は上流階級、商人、戦士だけのものとなりました。

メキシコ領土に住んでいたヒスパニック以前の文化にとってカカオの重要性は非常に大きかったので、乾燥させて焙煎した豆が硬貨として使用されました。この習慣は 18 世紀まで続きました。

貨幣の役割を果たすカカオの量
野ウサギ = カカオ豆100粒
小さなウサギ = カカオ豆30粒
摘みたてのアボガド1個 = カカオ豆3粒
熟しきったアボガド = カカオ豆1粒
大きなトマト1個 = カカオ豆1粒

スペイン人がアメリカに到着すると、カカオとその主な派生品であるチョコレートが少しずつ世界中に広がりました。当初、その消費はヌエバ・スペインやその他の地域に住むスペイン人の間であまり人気がありませんでしたが、少しずつ味覚を征服し、再び貴族や聖職者などの上流階級にとってその消費は不可欠なものになりました。

https://www.gob.mx/agricultura/articulos/cacao-riqueza-del-campo-mexicano


【文明の中のカカオ】

メキシコの古代文明の中では様々な場面でカカオが登場します。

カカオの木を最初に栽培したのは、紀元前1500年頃のオルメカ人でした。彼らはカカオ豆を水と混ぜて挽き、その種子を飲み物として味わいました。これは神々からの贈り物とされ、エリート層のみが消費できるものでした。時が経つにつれ、カカオ文化はマヤとアステカの人々に広がり、その頃にはカカオ豆が通貨単位や計量単位として使用されるようになっていました。「カカオ」という言葉は、オルメカ語とその後のマヤ語「kakaw」に由来します。

オルメカ文明(紀元前1500年~400年頃)

カカオは豊穣の象徴であり、神々への宗教儀式の際に使用されました。儀式や経済における製品の重要性が非常に高かったため、カカオ文化はメソアメリカの人々の移動とともに広がり続け、その種子の活力を与える効果と強壮作用が世界中に知られるようになりました。

猿の神が首からカカオをぶら下げています

マヤ先古典期後期から古典期にかけて繁栄したカラクムル遺跡ではカカオドリンクが献上されている壁画が発見されています。

カラクムル遺跡で見つかったカカオドリンクを飲んでるとされている絵

パレンケ遺跡で有名なパカル王はカカオドリンクを飲んだことにより長生きをしたと伝えられています。

その後スペイン人の到着とともにヨーロッパに伝えられ、現在の甘く固形状のチョコレートが誕生しました。

【お金としてのカカオ】


メソアメリカにおいて、カカオ豆と「クアトリ」と呼ばれる毛布は、最も重要な交換手段でした。カカオ豆の通貨としての使用は、植民地時代の初期の文献に頻繁に登場します。

興味深いのは、カカオ豆がほぼすべてのものと交換可能だったことです。例えば、1543年には、マゲイ畑の労働者は毎日40個のカカオ豆を報酬として受け取り、1回の旅行で20個の豆が支払われていました。さらに、罰金までもがカカオ豆で計算されることがありました。

これらの記録はスペイン植民地時代のものですが、カカオ豆を支払い手段として使用する習慣は、スペイン人ではなく、先住民の伝統に由来していた可能性が高いのです。

コロンブス以前のメキシコの人々は、生産地や特徴によって異なる種類のカカオを認識していました。アステカ帝国への貢納品には、太平洋沿岸のチワトラン産の「赤いカカオ」など、多様な種類が含まれていました。

歴史家フランシスコ・クラビジェロによれば、アステカ人は1種類のカカオ(トラルカカワトル)を飲み物用に、他の3種類を通貨として使用していたとされます。

カカオ豆の価値は、用途や需要によって変動しました。比較的安価な商品と交換されることも多かったものの、その価値は高く、偽造の対象にもなりました。偽造者は、豆の外殻を取り除いたり、アボカドの種や砂で置き換えたりするなど、巧妙な手口を用いていたと言われています。

このように、カカオ豆は単なる飲み物の原料ではなく、メソアメリカの経済と文化において重要な役割を果たしていたのです。

https://arqueologiamexicana.mx/mexico-antiguo/el-cacao-como-dinero

【カカオを使ったメキシコ料理】
◼︎食べ物
・モレ

カカオやスパイスを混ぜて作るプエブラ発祥の食べ物。

◾️飲み物
チョコレートは、長い歴史の9割にあたる期間、飲み物でした。

タスカラテ Tascalate 
カカオ、トウモロコシまたはトルティーヤ、アチョーテ(野生強香料植物)、シナモン、砂糖。マヤ文明時代から伝わるメキシコのカカオドリンクの一つ
テハーテ Tejate
焙煎したマメイの種、焙煎・挽いたトウモロコシ、発酵カカオ、カカオ花、砂糖を混ぜたもの
チャンプラードChampurrado
ニクスタマル(メキシコ伝統の加工トウモロコシ)の生地、水、タブリータ(板状のチョコレート)を混ぜたもの
ポゾールPozol
挽いたトウモロコシ、バナナの葉、カカオ、カンナ(サトウキビ種)の砂糖を混ぜたもの
アトラケツァリ Atlaquetzalli
カカオ、モクレン科植物の花びら、ホーリーバジル(ハート型の香り高い葉)、胡椒、チリペッパーを混ぜたもの www.mexicodesconocido.com.mx
ポポココルメカ(パンの木の種子)、カカオ、米、ユカ(タピオカ植物)の皮、チュピペ(草本)の根をまぜたもの


【メキシコのカカオ栽培】

  • 生産量 29428トン(2020年)

  • 生産地

    • チアパス州 10,282トン

    • ゲレロ州 288トン

    • タバスコ州 18857トン

  • 収穫面積 5万8598ヘクタール

  • 全国レベルでは約45,000のカカオ生産者がいると推定されています

【貿易状況】


2023年に丸ごとまたは砕いた、生または焙煎したカカオ豆のメキシコからの国際購入額が最も多かった国は、日本(171,000米ドル)で、全体の45%を占めています。


【動画】

【公式カカオレシピ本】


現在デジタルレシピブック「カカオ:アメリカ大陸の至宝」がオンラインで公開されています。

ボリビア、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、メキシコ、パナマ、ベネズエラの各大使館による共同プロジェクトで、アメリカ大陸とカカオの歴史を日本に紹介し、より身近に感じていただくために制作しました。

チョコレート研究所所長による序文付きです。また、お家で作れるラテンアメリカ7カ国の伝統的なレシピを収録しています。

どなたでも無料で、こちらからダウンロード可能です。(日本語・スペイン語)

ダウンロードはこちら↓

https://drive.google.com/drive/folders/1tHf-5i07-RB1qJx0z7a5_RaKNMwMfQXG


チョコレートはメキシコで人気のお土産の一つ。テキーラ入りのチョコレートやチリパウダー入りのチョコレートなど様々なチョコレートが発売されています。

ぜひチョコレートの歴史に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考)



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