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【短編】春うらら。

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拝啓、あなた。
お元気ですか?
お元気ですよね。
春の匂いを感じる頃
元気に過ごしていますか?

私はごしごしと
埃まみれの網戸を拭いています。
そしたらふと、
あなたのことを思い出しました。

何が入ってるかわからない
大きなクーラーボックスを踏んで
ベランダの窓を拭いた時
窓の向こうに映るあなたが
なんだか少し寂しそうで。

気づかないふりをして
気づかないふりをして
いつまで続くかわからないけど
いつまでも続いて欲しくて。


拝啓、あなた。
お元気ですか?
お元気ですかね。
冬の空を見上げた頃
笑顔ですごしていますか?

私はあの頃より少しだけ
怠慢な日々を過ごしています。
そしたらふと、
あなたの言葉を思い出しました。

優しい言葉もひどい言葉も
全部、全部こびりついて
私の頭を時々過ぎる。
あなたの文字を見かける度に
なんだか胸が締め付けられて。

気づかないふりをして
気づかないふりをして
素直にならなきゃいけないけど
素直になれない気がして。


人の気持ちがわからない私は
何時まであなたを想ったら
この気持ちは解けて、解けて
穏やかな春が来るのだろう。

そう思うことは罪ですか?
そう思うことは罪ですか?

あなたの言葉頭にこびりついて
離れなくて、離せなくて
幸せになれと君は言って
それを私は言えなくて
幸せになってはならないと
頭のどこかで締め付けていて。

あなたの幸せを願う資格は
私にはあるのだろうか、
あるのだろうか。

幸せになった時ふと思う
私は幸せを感じて良いのだろうか
良いのだろうか、良いのだろうか。


拝啓、あなた。
幸せですか?
幸せであれ。
あなたがお元気であれば
私は幸せです。

いつかこの言葉が
あなたの元に届きますように。

いつかまた、あなたと
笑い、会えますように。


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