【短編小説】また来世。
>
小説のワンシーンのように咲いた彼岸花。
朝寝坊した秋は彼女のように
せっかちに去っていく。
澄んだ空気と太陽光のおかげで
かろうじて『暖かい』と感じる昼下がり。
風が、吹いた。
「ねぇ」
「…」
「わがままなんだけどさ」
「…」
「寂しい」
「…」
「貴女が居ない世界は寂しい」
「…」
「どんなに綺麗な景色を見ても何も満たされないの」
「…」
「貴女に向かって話しても何も帰ってこない」
「…」
「私どうしたらいいの?」
「…ごめんね」
「…」
「ごめんね1人にして」
「…」
「友達なのに酷いことしちゃったね」
「…」
「寂しい思いさせてごめんね」
「…」
「ねぇ」
「…」
「どうしたらいいかな」
「…」
「私、どうしたらいいかな」
「…」
「あんたの為になにをしたらいいかな」
「…」
「何も出来ないんだけどさ」
「…生きてほしい」
「…」
「生きて欲しいよ」
「…」
「お願いだから、生きて欲しいよ」
「…」
「…あの時さ」
「…」
「あの時、会いに行ってたら違ったのかな」
「…」
「朝早いのなんて関係なしに会いに行ってたら違かったのかな」
「…」
「あの時、会いに行ってたら違ったのかな」
「…」
「今でも後悔してる」
「…ごめんね」
「…」
「…」
「私、私のことしか考えてなかった」
「…」
「苦しくないふりしてて」
「…」
「気づいた時にはもう遅くて」
「…」
「貴女のことも忘れるほどになってたの」
「ねぇ」
「…」
「寂しい」
「…」
「ひとりは寂しい」
「…ごめんね」
「あなたが居ない世界は寂しい」
「…わたしも」
「何を見ても涙が出るの」
「後悔してる」
「あなたのことを思い出すと」
「あなたのことを思い出すと」
「どうしようもなく死にたくなる」
「どうしようもなく生きたくなる」
「死にたい」
「生きたい」
「ごめんねこんなこと言って」
「ごめんねこんなこと言って」
「…」
「…」
「…」
「あのさ」
「…」
「自分勝手なこと言うんだけどさ」
「…」
「幸せになれると思ってたんだけどさ」
「…」
「貴女がいない世界は寂しい」
「…」
「だから、なるべく早く会いに行くからさ」
「…」
「違う姿になっちゃうかもだけど」
「…」
「頑張って会いに行くね」
「…」
「いつになるかわかんないけど」
「あのさ」
「なに」
「私、本当は今すぐ会いに行きたいけどさ」
「うん」
「私、あんたみたいに強くなくてさ」
「うん」
「意気地無しだからさ」
「うん」
「そっちに行く勇気ないんだわ」
「そっか」
「でもどうせせっかちなあんたの事だからさ」
「うん」
「会いに来てくれるでしょ、そのうち」
「…あはは」
「だから、こっちで待ってるわ」
「相変わらず受け身だなぁ」
「早く帰ってきてね」
「うん」
「もう、寂しい思いさせないから」
「私も。」
「じゃあ、また来るね」
「うん」
幸せそうな手紙を残していったけれど、
きっとそろそろ寂しいだろうから。
頬を撫でた冬の匂いの向こうに
彼女の声が聞こえた気がした。
また、来世。
fin.