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【短編】芹摘みし



日に焼けて色褪せた波打つ写真
覚えてしまったムービー音
昔昔に綴った秘密の文章

舞い上がった春の風に吹かれて
重ったるい前髪が吹き上がって
遠くを見つめる瞳と
吸い込まれそうな私と。

それから、それから。

何度もひっくり返した砂時計
もう働き方も忘れて埃をかぶって
そうして止まってしまったら
どれだけ楽になれるだろうか

無意味な言葉を放り投げて
何度も、何度も放り投げて
優しい君はもう居なくて
あの頃の私ももう居なくて
転がる言葉たちは
巻き上がる風に吹かれた砂の下
新緑の庭に埋もれて消えた。

冬の終わり、春の始まり
あの時の君はもう
ちゃんと、ずっと、セピア色
刻み込んだはずだったのに
どうしてだろう、もう思い出せない。


日に焼けて色褪せた波打つ写真
覚えてしまったムービー音
昔昔に綴った秘密の文章

舞い上がった春の風に吹かれて
重ったるい前髪が吹き上がって
遠くを見つめる瞳と
吸い込まれそうな私と


それから、それから。


もう、今更だなんて思うから
抱きしめても何も無くて
感情も無くしてしまって
私にはもう、何も無いから

春の終わり、夏の始まり
キラキラ揺らめく水平線に
街頭に群がる羽虫のように
死んだ朝焼けの向こう
吸い込まれていくの
たったひとりの、わたし

吸い込まれていくの
想い焦がれた、わたし


fin

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