【短編】貴方の不幸せを願ってます。

滲む東京
薄ボケた夜空に
溜息の煙を吐いて
歪んだ街灯
二重線の背中は溶けて
旋風はとうの昔。

絆創膏の痕
等速に進む時間は
私を否が応でも運ぶから
私はあなたの不幸せを願います。

油性ペンで潰した笑顔
ちぎった捨てた記録
美化された言葉も
風化したナイフも
ぜんぶもう、さようなら

今更のタイムカプセル
霞んでゆく記憶は
否が応でも私を攫うから
私はあなたの不幸せを願います。

波打ち際の遥か遠く
つけた足跡は
波も、風も、消せないで
確かにここにあって
確かにここにあるから
一生消えずに
確かにここにあるから

私はあなたの不幸せを願います。

呼吸を止めても
私の心臓は脈を打って
前に進めと願うから
最弱設定のCPU
それでも戦わなきゃいけないから

私はあなたの不幸せを願います。

沢山苦しんで
沢山悩んで
沢山の人に囲まれながら。
弱い私を
ただでさえ弱い私を
あんなに傷つけられたのだから
色鮮やかな記憶を
忘れられない記憶を
沢山刻み込んだのだから
だから
沢山の人に惜しまれながら
たくさんの涙を流されながら
死んでしまえばいい

だからあなたは
私の事なんかさっさと忘れてしまって
そのまま穏やかに
死んでしまえばいい

あなたが私を忘れてしまう
あなたの不幸せを願います。