僕はカノン - アウグスチノ会について
注意:正確性に気を遣いつつも、独断と偏見が混じっています。予めご了承ください。
ブルックナーの墓があることで有名なオーストリアはリンツ近郊のザンクトフローリアン修道院は、アウグスティヌスの会則を遵守する修道院です。なので、「アウグスチノ会」の修道院なのですが、調べてみたところ、私の大雑把な理解では、アウグスチノ会には3種類あるそうです。
第一会: 誓願を立てた男子の修道会。昔はアウグスチノ隠遁修道会と言われていましたが、今はアウグスチノ会修道会と呼ばれる。第二会: 女子修道会。第三会: アウグスチノの会則を遵守する在俗信徒の会。修道誓願を立てる会もあり、律修第3会とも呼ばれる。
ザンクトフローリアンはAugustiner-Chorherren、英語だとCanons Regular of St. Augustine’s Orderと呼ばれる律修第三会の一つです。
なぜこんなことを調べたかというと、ザンクトフローリアン修道院を調べると必然的に聖アウグスティヌスやアウグスチノ会について調べることになります。日本だとイエズス会やドミニコ会やフランチェスコ会はよく見かけますが、アウグスチノ会はあるのかとふと思ったからです。国内には長崎、福岡、名古屋、東京の4ヶ所にアウグスチノ会の教会があり、東京は葛西にあることが分かったので行ってみたのです。
「アウグスチノ会の総本部はローマにあり、数年前に総長は視察に来てイエス様とマリア様の像を寄贈いただいた」と教えてもらったので、ザンクトフローリアンで知り合った神学生のアンドレアスさんに「この人知ってる?」と総長の写真を送って尋ねたところ、「知らないなあ、この人ベネディクト会の修道士?」と言われてしまいました。それで、アンドレアスさんに経緯を説明したところ、「多分hermitじゃない?それはウィーンとかWürzburgにあるよ。で、僕はcanonでmonkではないんだよ」。
上記で述べた1の修道会(隠遁修道会)は、隠遁にあたる英語にはhermitという単語が使われます。一般的に「アウグスチノ会」と言われているのがこの1の修道会で、視察に来たのは修道会の総長(Prior General)のアレハンドロ・モラル・アントン(Alejandro Moral Anton)さんでした。この修道会は世界中にあり、日本にある4つの聖アウグスチノの教会、ウィーンやドイツのWürzburgのアウグスティーナ教会も1です。「メンデルの法則」のメンデルは1の修道士です。作曲家のヤナーチェクは1の修道院の少年合唱団にいました。1の修道会ではいわゆる修道士(Monk/Mönch)がいて、彼らはブラザー・兄弟(Brother/Brüder/Mitbrüder/Frater)などと呼ばれ、神父はFather/Paterと呼ばれています。さらにPrior, Subprior, Abtなどの役職(位)もあります。入会(初誓願)すると名前の後ろにOSAと付けるようです(ラテン語Ordo Sancti Augustini /英語Order of Saint Augustineの略)。女性修道会ならシスター(Sister/Schwester) です。
https://www.augustinerkirche-wuerzburg.de/
https://augustinerkirche.augustiner.at/
一方、Canons Regular にはブラザーはいません。オーストリアのStift Herzongenburgのウェブサイトに„Die Augustiner-Chorherren sind keine Mönche sondern „Regularkanoniker““とあるように、MonkではなくCanonなのです。Canons Regular/Regularkanoniker というと、一般的にアウグスチノ会の律修修道会に属するメンバーを指し、入会(初誓願)すると名前の後ろに"CanReg"(Canonicus Regularisの略)と付けるようです。私はあまり考えずにMonkでもCanonでも「修道士」と言っていましたが、中の人たちにとっては大分違うようです。Canonは司祭をする人なので、神父と言ったほうがよいのかな?ウェブサイトにわざわざ書いてあるあたり、いろいろな人からCanonとMonkの違いについて訊かれているのだ思います。服も黒と白で似てますし。
https://www.stift-herzogenburg.at/leben-im-stift/die-augustiner-chorherren/
オーストリアには約140の修道院がありますが(Liste von Klöstern in Österreich)、Augustiner Chorherrenstiftは南チロルもあわせて6つあります。その6つの修道会はDie Kongregation der Österreichischen
Augustiner-Chorherren (Kongregation: 会衆?)を構成し、その長(Generalabt)は2017年からザンクトフローリアンのPropstのJohann Holzingerさんが務めています。同様のカノンの会衆(集団)は、現在世界に男性は9つ、女性は3つあるようです。
https://www.augustiner-chorherren.at/orden/
http://www.stift-st-florian.at/die-chorherren/unser-orden/organisation-des-ordens.html
ちなみに、Canon/Chorherrは男性で、Canoness/Chorfrauは女性です。Canonのもともとの意味は「ルール、規則」で、カトリックのCanon law(カノン法・教会法)、音楽のカノン、細胞内情報伝達経路のCanonical/non-canonical Wnt pathway、ウェブのhtmlのcanonicalタグ(属性)は語源的に同じのようです。確かにすべて「規則」っぽいですよね。なお、カメラのキャノン(Canon)は観音様が語源です。
ところで、アウグスチノの会則はご存じでしょうか?ザンクトフローリアンのウェブサイトに会則がありますが(PDFで見れます)、日本語で読みたくて山口正美著「ヒッポの司教 聖アウグスチノの会則」という本を購入しました。会則はそれほどの分量ではありません。聖書を元に、修道生活の基本的な考え、仕事、考えられるトラブルとその対処法が記されているという感じでしょうか?わかりやすく書かれているので、かなり驚きました。
http://www.stift-st-florian.at/die-chorherren/unser-orden.html
私の大雑把な理解では、アウグスチノの会則は1244年に作成され、世界で一番古い会則の一つといわれています。その120年後にベネディクトの会則、800年後にアッシジのフランチェスコの会則ができたそうです。ベネディクトの会則にはアウグスチノの会則が一部採用されています。会則を時代や目的に合わせていく感じでしょうか?アウグスチノの会則はアウグスチノ会だけではなく、ドミニコ会等でも採用されているそうです。
カトリックの会派はたくさんありますが、どうしてその会を選ぶのかについても興味があります。私の想像にすぎませんが、修道の道を志願する人は、そこで何をしたいか、たとえば地域社会に貢献したい、教えたい、音楽をしたい、キリストの精神に従ってもっと厳しく生きたい等、それぞれの人生の目的に応じて、その人に合う会則、霊性の修道院に行くのかなと思いました。
「僕はカノン」から始まった、アウグスチノ会について。調べれば調べるほどわからなくなってきましたが、いつか神学を学びたいので、アウグスチノ会を含め様々な会について調べてみようと思います。日本のアウグスチノ会についても調べてみたいです(17世紀までさかのぼります。文献を読みましたが、壮絶な歴史でした。)。