第5回 救急車よりwalk inの方が難しい?
こんばんは。なんとか隔日投稿を保っています。
今回は前回予告した「1, 2次救急の難しさ」についてnoteを書こうと思います。逆張りをして目立ちたい訳ではなく、日頃思っていることです。
僕も初期研修医や後期1年目の際は、「ショックや呼吸不全の患者さんが来たらどうしよう…」と心配している一方で、walk inの患者さんに対しては「まあ大丈夫だろう」と油断していた経験があります。
今になってみると、walk inの患者さんほど注意が必要でした。
救急医療の難しさ
救急外来で難しいことの一つに”何をどこまでやるべきか”を”その場”で判断しなくてはいけないという点があります(カンファレンスで相談できれば、どんなに楽かと…)。
これはDNARやDNIといったACPに関わる話だけではなく、一つ一つの検査や処置も含めた話です。
例えば、尿路結石疑いの患者さんであっても、
単純CTを撮る or 撮らない
その際に造影をする or しない
静脈路確保をする or しない
入院 or 帰宅
フォローは近医 or 自施設
など挙げればキリがありません。大きな方針から細部まで判断しなくてはいけません。
ここでタイトルに話が戻ります。
3次救急相当の患者であれば、抹消静脈路は複数確保し、Alineも取り、CTは頭部〜骨盤まで含め、ICU or HCUに入室させることが大半だと思われ、"やらない”という選択をすることが少ないです。
一方でwalk inの患者であれば、「まあ大丈夫だろう。歩いて来たんだから」というバイアスに引っ張られ、検査や治療介入を控えてしまう可能性があります。
また深夜の救急外来で、バイアスなく普段と同じ判断基準で診療出来る先生はどれほどいるでしょうか。
やらないという選択は本来難しいはずが、状況によってはやるという選択肢の方が難しくなってしまいます。
walk inなら大丈夫?
福井大学の林 寛之先生が常々取り上げられる、walkinの救急患者のうち、「一見元気そうだけど、実は重篤」という患者は、0.2-0.7%の割合でいます。大体200人に一人です。
裏を返せば200人診療しても199人は「ぱっと見元気そうで、やっぱり元気」ということです。(言い方は悪いですが、)”適当に”診療しても200人のうち、199人は見た目通りなのです。
”適当に”診療している自覚がないと、199回の経験が成功体験に繋がってしまい、”救急医療なんて誰でも出来る”と錯覚してしまうのです。
200回に1回の事象を想定しながら、検査の乱れ打ちがなかなか許容されない状況で診療を進めるというのは、簡単ではないと思います。
なおかつ深夜でも、飲酒にまつわるトラブルでも、Difficult Patientでも、普段と同様の判断基準で診療を進めるのは一筋縄ではいきません。
(偉そうに語っていますが、200分の1を日々見逃さず、過剰な介入もせず、ベストな医療を目指すために精進中の身です。)
最後に
この3部作では「救急なんて誰でも出来る」というフレーズをテーマに日々思うことを書き連ねました。
誰でも出来るが、皆やりたくないし、やろうと思うと難しい。
そんな救急医療ですが、僕は何周かして今は嫌いじゃなくなってきました。
こんなnoteをみて、世の医療関係者の救急に対する見方が少しでも好意的になればと思います。
次回はまたJournal Watchをやってみます。
乞うご期待!
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