第9回 ワクチンバイト雑記
お久しぶりです。気を抜いたら、前回更新から大分時間が経ってしまいました。
今回は時事ネタ?のワクチンバイトについて書きたいと思います。
2021年6月頃より主に高齢者を対象にワクチンの集団接種が始まり、日給10万円を超えるスポットバイトが出回るようになりました。
一般的に平日に休みが確保出来る医師は限られており、集団接種会場では当科のようなシフト制の診療科、もしくはフリーランス医や高齢の医師が集って、控室はカオスな様相でした。
仕事内容についてはひたすら問診し続けるだけです。最初の10人くらいで要領を掴めば、あとは単純作業の繰り返しです。
時折変化球はありますが、基本は皆ワクチンを打ちたくて会場に来ているので、普段の救急外来のように方針の相違で揉めることはありませんでした。
万が一アナフィラキシーになる方がいても救急医としての本領発揮!と構えていましたが、僕が勤務した会場では軽度なものも含めてアレルギー反応が生じた方は幸い誰もいませんでした。
アルバイトは時間の切り売り
週1回ペースで2ヶ月にわたり県内のスポット案件に参加して、”時間の切り売りで得られるお金の価値”について嫌でも考えさせられました。
僕が勤務したのは平日の案件なので、時給2万円を超える日もあり、業務内容を踏まえると破格の待遇でした。
自分は市中病院での勤務経験しかなく、アルバイト自体ほぼ初めてだったので、
最初の1-2回は「この内容でこの待遇は夢みたいだ!」と感動していましたが、回を重ねる毎にそのような感情は薄れていきました。
ワクチンバイトは単価は破格ですが、あくまでも自分の時間の切り売りです。
寝当直のように読書やネットサーフィンが出来るならまだマシでしたが、そんな暇はありません。ひたすら問診を行い、同じ内容の説明を繰り返すことが求められます。
最後の方は、「せっかくの休みなのに、家族サービスをする訳でもなく、学術活動を行う訳でもなく、趣味に勤しむ訳でもなく、何をしているのだろう」といった虚無感に苛まれ、自分の中に何も積み上がっていない時間に耐えられなくなりました。
せめてもの救いはコロナワクチン接種は社会貢献に繋がっていると思えることだけでした。ワクチン接種は2021年8月現在、コロナ禍の数少ない希望の光です。
医師が確保出来ないために集団接種が行えないという状況になれば協力するとは思いますが、高額な案件を血眼になって探して貴重な休日をアルバイトに費やすことは今後は無いでしょう。
今回の経験は、時間というものを見つめ直す良い機会になりました。
医療に限らず価値のある時間を過ごしていきたいと思います。
次回に乞うご期待!