第4回 救急の"ニーズ”とは

こんばんは。4回目の更新となれば、三日坊主は脱したと考えて良いですよね?

前回の続きで、救急科に進むべきか悩む初期研修医及び、救急科を選んだことを後悔している後期研修医を対象として、救急の"ニーズ"について書きたいと思います。

「救急なんて誰でも出来る」

この言葉は何度聞いても、僕の心を揺さぶってくるキラーワードですね。笑

まずは僕がタイトルにある救急の専門性について考える契機となった経験について触れたいと思います。

専攻医2年目のとき、僕は(初期研修も含めて)初めて救命救急センター以外の所謂"二次救急"病院で勤務しました。そこには当然救急医なんて存在はおらず、各科の先生が当番制で救急対応を行っていました(そのような体制の病院が世の大半だと思います)。

赴任当初は、「胸痛は循環器内科、腹痛は消化器内科・外科が最初から見たほうが効率良いよな~」と感じていましたが、その考えは早々と変わってしまいました。なぜならば、各診療科の先生らが"専門外の救急患者”に対して、前時代的な医療を行うことを度々を目にしたからです。

敗血症の蘇生にドパミン・CVP、めまいに重炭酸ナトリウム、膵炎に……などなど。
現在書店で並んでいるどの研修医向けの参考書でも推奨されていない内容の医療が現実に行われていました。

これらの診療をみて、「救急医のニーズってめっちゃある」と僕は感じました。知識のupdate批判的吟味の2点です。

餅は餅屋

上記の対応をされた先生を非難するつもりはありません。何故ならば、彼らが救急医療について勉強したのは数年~10年以上前なんです。その際には正しいと信じられていたことも、時間が経てば常識は変わります。

敗血症の治療も10年以上前ならば、EGDTに沿って対応するのが"エビデンスに基づいた治療"だったのです。しかし、今は違います

彼らは彼らの専門領域をupdateすることが重要であり、SSCGを読み込むことは求められていないのです。救急医療についてupdateし続けているのは、当然ながら救急医です。餅は餅屋なんです。(「SSCGなんて俺でも」という内科医はいると思いますが、例えばATLSのガイドラインは把握していないと思います。)

後医は名医

また一方で批判的吟味というメリットもあります。自分も含めて身に覚えがありますが、入院時の診断や初期蘇生、併科のコンサルトなどは、一人でやると甘くなってしまうことが散見されます。しかし、入院を依頼する・される関係性だと、自然と批判的吟味の形となります。

よく聞く、「また救急から▲▲はアセスメントされずに○○だけで入院を丸投げされたよ~」という愚痴が、まさに批判的吟味です(見落とすなよ!という指摘は本題から逸れるのでご了承下さい)。なぜならば、後医は名医です。"名医”のおかげで、初療医が見逃していたことに気がつけます。入院時の見落としは予後の悪化に繋がります。救急医から各専門科にコンサルトするER型救急は、効率的なシステムだと思います(救急科が常に嫌われ役になるというデメリットはありますが…)。

救急医の専門性

先述した通り世の中の救急外来では救急医が常駐している方が少数ですが、二次救急病院こそ救急医がいることで、救急外来経由の入院が円滑になるのではないでしょうか。
このような救急医のニーズは、救命救急センターだけで働いていたら気付けませんでした。高次医療機関に転院搬送を行う経験なども含めて、二次救急病院の勤務は貴重な研修だったと思います。

最後に、専門外の人間が、カテーテル治療や手術、化学療法、放射線療法については口を出さないのに、なぜ救急外来対応については「誰でも出来る」と言ってしまうのでしょうか。

これについては救急医療(特に1次、2次救急)の難しさが関与していると思います。詳しくは、次回の「3次より1,2次救急の方が難しい?」で触れる予定です。

次回を乞うご期待!



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