第13回 専門医は必要? 後編
こんにちは。またまた更新間隔が空いてしまいました。
今回は前回の続きである、専門医が必要かどうかについての後編になります。
専門医が生み出すベネフィット
このベネフィットというのが初期研修医の先生からはイメージがつきにくいのではないでしょうか。
実際、初期研修の先生がいる病院≒急性期病院には、学会専門医を取得・維持した王道の勤務医が大半であり、身近な医師を参考にしようにも(ある程度の学年なのに)専門医資格を持っていない人がいないため、比較ができません。
何事もそうですが、資格や肩書きは皆が持っている環境では真価を発揮できません。
母国でモテない外国人も、日本に来れば外国人という肩書きで差別化されてモテるのと一緒ですね。
差別化の簡単な具体例は、専門医資格を持つ医師が、普通の急性期病院の医師が忙しくて出来ない専門医必須のバイトで稼ぐといった感じです。
現在、アルバイト医師がSNSなどで持て囃されていますが、彼らが差別化出来ているのは”時間”です(もちろん実力や資格を兼ね備えている方もいますが)。
平日日中の検診や当直の急な欠員など、普通の勤務医では働けない時間帯に働いてくれるアルバイト医は確かにニーズがあり、下手の常勤医より稼げます。
しかし、この風潮もいつまで続くかわかりません。
フリーランス医で生きていく?
国は確実に病床数を減らす方向に誘導し、人口減少とともに患者数も減っていきます。間違いなく診療科問わず満遍なく医師全体へのニーズは減っていきます。
医学部の定員増加も相まって、今の弁護士業界と同様に、稼げない医師が出るのは自明です。
誰でも出来る検診や寝当直などのアルバイトを中心に稼いでいるフリーランス医師はどうなるでしょうか。
買い叩かれる一択です。
実際、誰でも出来るワクチンバイトは、皆に目をつけられ、相場もこなれた結果、夏頃と比較して1日あたりの給与も大分下がっています。
現代社会は、IT化などの影響で誰でも出来る仕事が減った結果、多くのワーキングプアが生まれ、一部の創造性のある人間に仕事が集中しています。医療界の未来も一緒と思われます。
30万人以上が持っている医師免許だけで、30年以上マネタイズ出来る医師はどれだけいるでしょうか。
今や非常勤バイトは完全に市場に開かれており、ワクチンバイトや寝当直のような専門性のない領域のバイトだけを続けるのは、収入面や勤務の不安定性から継続するのが難しいでしょう。
また、少し話はずれるかもしれませんが、新たな市場を求める法曹界に医療界は狙われています。誰でも出来る検診や寝当直での不手際が、訴訟に発展する可能性も多分にあります。
そのような背景がありながら、医師余りの風潮がある中で、病院側も敢えて何も持たない医師を、最低限の資格(≒基本領域の専門医)を持つ医師より優遇して選ぶことは想像し難いです。
専門医があればフリーランスでも安泰?
一方で、内視鏡専門医などある程度マネタイズ出来る技術まで身につければ、技術でお金を稼ぐことが出来るので、フリーランス医として重宝されます。
一番分かりやすい、専門医資格が生み出すベネフィットですね。
しかし、その生活を何年続けるのでしょうか。
日々アップデートされる知識や技術をフリーランスの立場で10年以上更新し続けるのは非常に大変でしょう。
専門性の高いフリーランス医というのは、二重の意味で限られた医師にしか出来ない生存戦略だと僕は思います。
結局、専門医ってどうなの?
フリーランス医に関する記事のようになってしまいましたが、専門医資格を取得すべきかどうかのビジョンが見えず悩んでしまうような方は、おそらく医師免許だけで自由にマネタイズ出来る類の人種ではないと思います。
最低限、専門医を取得して、ほどよい常勤を探す方が身のためです。
2021年の価値観で、「世の中にはたくさんハイポ病院があって、そこでは専門医資格なんて不要なんだよ。」というのは、正しいと思います。
しかし、その考えは2030年、2040年でも通用するのでしょうか。
答えは誰にもわかりません。
しかし、医業(=医師免許)を中心に食べていくならば、専門医資格程度のアップグレードはあって良いのではないかというのが僕の持論です。
もちろん医師免許を足掛かりに他業界に進出する方は、こんなnoteを読んでいないと思いますので、関係のない話でしょう。
前後編に渡って、駄文を失礼いたしました。
次回に乞うご期待!
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