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音楽とファッションと私たち


   音楽だとなんのジャンルが好きですか?と訊かれることが増えました。私は大体「ジャンルでは邦楽ロックで、昔で言うとロキノン系といいまして、1番はくるりと言うようにしています」と答えます。


   ロック好きでファッションも好きといった時、瞬間的に思い浮かべられるのがパンクファッションのようです。ですので普段そういうカッコをしていると勘違いされることがありますが、全くそんなことはありません。くるりとか言ったらまぁわかると思いますがパンク要素はまるでなく、私のファッションの中にもありません。むしろ90年代のロキノン系というのは、下北にいるかんじのTシャツにコンバースみたいな「着飾らないスタイル」が多かったように思います。例えば今でこそバンプオブチキンはコスチューム的なオシャレをすることがありますがデビュー時はめちゃめちゃナチュラルなそのへんの大学生的雰囲気でした。

   
 対して、ビジュアル戦略に力を入れたバンドも多くいました。代表格はやはりビートルズで、リヴァプール生まれのハタチそこそこの少年たちにスーツを着せ、マッシュルームヘアに整え、品のあるおぼっちゃま風に仕立てたのはまさしく戦略であり、大成功したのは言うまでもありません。日本でいえばYMOというバンドがいました。その中でファッションのカギを握っていたのはドラムの高橋幸宏さんでした。

  高橋幸宏さんはファッションデザイナーもされていましたが、昔からオシャレで細野さんによると「世界で1番オシャレ」だといいます。昔の映像を改めて見ると、昭和のはずなのに着てる物も雰囲気もスタイリッシュ。(演奏だけでなく出演したCM等も含め)

   私は平成に近い昭和生まれなので、YMOの活躍をリアルタイムでは知りません。物心ついた時には教授がとんねるずやダウンタウンとコントしていた印象が何より強く、楽曲もライディーンくらいしか知りません。楽曲に至っては坂本龍一をウラBTTBで知り、細野晴臣をはっぴいえんどで知る(しかもだいぶあとになって)といった具合です。でもなんとなく、少し奇抜なグループだというのは、子供ながらにわかっていました。

   YMOは、いかに目立つかという視点でビジュアル戦略を練られていたとききます。高橋さん曰く「ファッションで何かやるなら誤解されるようなものにしよう」ということで、外国人の抱くフジヤマゲイシャ的典型イメージを狙い、人民服のような服を着たりした結果、逆輸入的な売れ方をしたといいます。音楽の前になんとなく奇抜な3人の姿が浮かんでくるというのはまさにビジュアル戦略のなした技であります。

 
 話は最初に戻るのですが、そもそも私はロキノン系だからって下北っぽいカッコしようなどと考えたことはありません。一般人である私の日常着にコンセプトなど必要ないし、考えたこともありませんでした。ただ、私が聴きたい音楽と着ていた服があった、それだけです。そこにあるのは、派手な服なんて必要ないぜとTシャツとデニムを貫く90年代のロキノンバンドのような、ある意味頑固なファッション精神かもしれません。

   
 人や物には「見せ方」があります。私はあえて「魅せ方」と書きたいのですが、どのような姿でありたいかというのはとても大事なことのように思います。至極ナチュラルであってもいいし、戦略的でもいい。そしてファッションはまさしく思想だと思います。というとやけに小難しくきこえますが、なんなら音楽も思想であってやっている仕事もそうです。好みというのはすべて自分の思想の現れであり、大袈裟にいえばコンセプトです。YMOにもコンセプトがあったようにくるりにもコンセプトがあって、私にも勿論それがある。そしてそれが誰しもが持つ個性というものです。音楽とファッションは切り離せないように、それらと私たちの存在も切り離せないと思うのです。商売にするとかいう以前に、私たちの日常での話です。

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