エッセイ:ナイスなやつだぜ
「ウルトラマンナイス」は1999年、映画公開を控えた「ウルトラマンティガ」の再放送時に流れたCMです。
ウルトラマン好きの一家、夢星家の「GOKAZOKU隊」と、その父親が変身するウルトラマンナイスがティガの番宣とホビー紹介を踏まえながら怪獣と戦う1分間の内容。
当時の円谷プロは新しいウルトラマン像の模索として、とんねるずの木梨憲武が歯ブラシで変身する「ウルトラマンゼアス」など、ややイロモノなウルトラマンを合間に挟んでおり、ナイスもその一環だったのだろうと思われます。
ウルトラマンナイスは主題歌と販促ノルマを背に、毎回良いように言えばコミカル、悪く言えばやや情けないやられっぷりを披露しつつ怪獣を倒して「TOY一番星」に帰っていきます。あくまでおもちゃのコマーシャルなので直前の「ウルトラマンティガ」とはあからさまに温度差があり、幼心にも見ていてあまりかっこいいとは思えませんでした。
ただ、ふと主題歌を聞き直すにつれて彼こそが真の意味で、等身大のウルトラマンだったのではないかと感じるようになりました。
1番、2番のBメロ〜サビ前の一説。大体いつもこのフレーズが流れる場面で苦戦を強いられています。
かつてのウルトラマンはある種の神話性を帯びていたからこそ、こうした等身大の悩みや葛藤の問いかけ自体が(人間態のドラマは別として)新鮮でした。ヒーローも自分たちと同じなのかもしれないと思わせるほどの親しみをナイスには感じられるという事でもある。続く歌詞でも「ぼくら」と彼の繋がりを強調されているのがわかります。
これを踏まえた上で、本編には流れなかった歌詞の3番があります。それが以下の一節。
毎度のようになさけないダメージを受け、必殺の光線も首を傾げながら撃つなど、どこか頼りなさげだったナイス。しかし何度やられても彼は決して最後までへこたれる事はありませんでした。そして、そんなナイスの本当の勇姿を「ぼくら」がしっかりと受け止めている。
そのことに気付いた僕は等身大でありながら、彼もまた間違いなくウルトラマンであったのだと遅まきながらに感銘を受けたのでした。ナイスなやつだぜ、ウルトラマンナイス。