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【社会実装】JR西日本カスタマーリレーションズ様にて、生成AIを活用したVoC分析パッケージの実運用が開始されました

JR西日本お客様センターを運営する株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ(以下JWCR)とELYZAは共同で、生成AI起点のDXプロジェクトを推進しています。その成果として「VoC分析パッケージ」の開発・実運用を開始しました。VoC分析の高度化という課題に正面から向き合い、解決策を提示した希少事例になりますので、ぜひご一読ください。

本note記事はこちらのプレスリリースと同内容です。
JR西日本カスタマーリレーションズとELYZA、生成AIを活用したVoC分析パッケージを開発、実運用を開始 - 最新の生成AI技術を全面活用し、真にお客様の声に向き合うVoCのあり方を実現 -(2024年12月3日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000047565.html


サマリー

  • JWCRとELYZAは共同で生成AI起点のDXプロジェクトを推進中

  • その最新成果として「VoC分析パッケージ」の開発・実運用を開始

  • 全件データに対する恣意性のない効率的なVoC分析が可能に

  • 事象の真因分析や改善施策の仮説出しのサポートを行う「VoC分析AIアプリ」も準備中

  • VoC分析の高度化の課題に正面から向き合い、生成AIによる解決策を提示した希少事例

JWCRとELYZAは共同でDXプロジェクトを推進

2022年より、JWCRとELYZAは、顧客対応業務の品質向上・業務負担軽減を目指し、システム及び業務フローのあり方を生成AI起点で一から見直すDXのプロジェクトを共同で実施していました。

業務高度化の背景と生成AIに期待する効果

端緒として、2023年3月にはメールでのお問い合わせの内容要約業務において生成AIの活用を開始し、同年9月には電話でのお問い合わせの内容要約業務にも生成AIを導入しています。今回のVoC分析パッケージもこのプロジェクトの一環であり、生成AIによる均質化された要約データを前提に、これまで以上に効果的、効率的にお客様の声を分析し、サービス改善や新たな打ち手の探索につなげていくものです。

VoC分析とはなにか

VoC分析業務の概要

JWCRのJR西日本お客様センターでは月間で約7万件の電話やメールでのお問い合わせを受け付けており、その応対履歴を全て要約・テキスト化して保存しています。これは、VoC(Voice of Customer、顧客の声)と呼ばれるデータに該当し、お客様のニーズや課題の宝庫です。VoC分析は、これらお客様の声を可視化・分析することで、事業運営上のお客様応対の品質向上やサービス改善に向けた示唆を得る活動となります。

業界に横たわるVoC分析の課題と、生成AI時代の解決方針

VoC分析の課題と生成AIを用いた解決方針

長年、多くのコンタクトセンターがVoC分析の有益性は認識しつつ、理想的な運用に落とし込めている事例はほとんど存在しない状態です。背景にはそもそものデータ品質のばらつきや集計ルールの属人化、工数制約など複数の課題があり、業界悲願であるものの実現が難しい領域と認識されています。

JWCRにおいても、従来のVoC分析は最も重要なデータに絞って集計し、集計結果の信憑性を担保するために多大な工数を投入しておりました。また、集計ルールは大まかなルールはあるものの、集計担当者に依存する部分もあり、集計データの品質がばらついておりました。そのため、リソース制約がある中で、更なるVoC分析業務の高度化は困難と感じていました。

今回、JWCRとELYZAが開発したVoC分析パッケージを使うことで、全件データに対する特定のルールに則った一律の集計を、信憑性を維持したまま、工数を省力化した形で行うことが可能になります。また、一律の集計ルールを適用することで集計データの品質が均質化されます。そのため、VoC分析業務の高度化が可能になり、お客様の声により真摯に向き合いやすくなる環境を整備することができます。

「VoC分析パッケージ」の概要

VoC分析を行うための複数のアプリケーションを包括したパッケージになります。具体的には、「均質化された要約データ」を生成する要約AI、集積されたデータにタグ・カテゴリー付与を行う処理プログラムAI、集計・可視化・分析を行うためのダッシュボードなどを含みます。JWCRでは2023年からELYZAの要約AIを導入しており、年単位で集積された均質化データをもとに処理プログラムを動かすことができるため、品質の高いダッシュボード化が実現しています。

VoC分析パッケージの全体フロー
タグ・カテゴリー付与のイメージ
ダッシュボード画面イメージ

VoC分析パッケージの導入成果

①定常業務:週報作成

週報作成業務の導入前後の変化

【導入前】入電や問い合わせの応対履歴1週間分に対し、エクセルマクロを用いて定型項目を集計し、その結果を踏まえ集計担当者がトピックを選び、集計をしていました。手作業での集計だけでなく、報告資料への手作業での転記もあり、週報作成業務に毎回約2時間、投入していました。

【導入後】VoC分析パッケージを用いると、ダッシュボードを開くと、直近2週間分の応対履歴が既に可視化された状態を実現できます。応対履歴の概況から注目すべきトピックに当たりを付け、報告内容をまとめることができるため、30分程度で週報を作成することができます。

②非定常業務: 反響報告

反響報告業務の導入前後の変化

【導入前】非常時は通常時の約5〜7倍の入電や問い合わせがある中で、件数集計や内容把握を行うため業務負担が大きくなります。更に、報告担当者の主観も交えながら報告事項を選定しており、報告内容の客観性が高くない状態でした。また、作成された報告資料は報告書の形式のため、深掘りをするには、集計担当者が追加で工数を投入する必要があり、リソース制約がある中ではそのような対応は困難となっておりました。

【導入後】VoC分析パッケージを使うと、入電や問い合わせの応対履歴を自動的に集計・可視化することができ、集計作業の業務負担を軽減させることができます。また、グラフ等で可視化されるため、視覚的特徴を捉えやすく、深掘りすべきトピックに当たりを付けやすくなります。更に、トピックごとに深掘りすることもでき、対策・対応・情報発信の工夫に活かしやすくなります。

③各担当者ごとの反響

VoC分析は担当業務領域により、分析したい観点が異なる点も難しさとして挙げられますが、今回のVoC分析パッケージについては、立場の異なる三者からそれぞれ評価をされています。

【経営層】
顧客起点の経営を実現するためには、「お客様の気持ちを理解すること」と「組織全体で課題解決に挑戦する姿勢」が社内全体に浸透することが必要です。今回の取り組みを通じて、1日6,000件の声を網羅し、必要な視点から分析できる仕組みを整備しました。この結果、新入社員から部門長までが、お客様の声により簡単に向き合えるようになります。こうした取り組みを通じて、企業文化が形成されていくことを楽しみにしています。

【VoC分析担当者】
お問い合わせ内容がダッシュボードでわかりやすく可視化されているので、サービス改善のためのアイデアに素早くたどり着くことができるようになりました。
「日々のお問い合わせ件数がどんな要素によって増減するのか?」「定期券に関するお問い合わせはどんな内容が多いか?」「新たな観光列車に対するお客様のご不明点はどこにあるのか?」などの要素を効率的にキャッチアップできる点が素晴らしいです。

【お客様対応担当者】
これまでは季節波動によるお問い合わせ傾向の変化など「肌感覚」を基に集計・報告していましたが、客観的に捉える事ができるようになりました。
その結果、集計・報告だけでなくオペレーターへも「このお問い合わせが増えている」「このプレスの反響は大きい」と周知できるようになり、オペレーターが事前に資料を確認しておくなど、お客様対応に備える事ができるようになりました。

取り組み成功の要点

本取り組みはJWCRとELYZAの強固な連携と工夫により実現しました。要点は以下のとおりです。

VoC分析パッケージの成功の要点

さらにその先へ。VoC分析AIアプリも準備中

分析結果をサービス改善や新たな打ち手の探索につなげるためのVoC分析AIアプリも準備中です。従来のBIツールでは対応しきれなかった、発生した事象の真因分析や改善施策の仮説出しのサポートを生成AIの技術を用いて実現しています。

VoC分析AIアプリが実現すること
VoC分析アプリの画面(※開発中イメージ)

各社代表者コメント

株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ 代表取締役社長 堤 恵理子

当社は2022年よりELYZA社と連携し、生成AIを活用した業務効率化に取り組み、現在その効果を確かなものとして感じております。

この度、生成AIが要約したお客様の声を、高度なAI分類処理を経て、視覚的にわかりやすいダッシュボードとして提供する仕組みを構築しました。これにより、従来人手に頼っていたお客様の声の読み込みや集計作業のプロセスが大幅に効率化され、必要なタイミングで、求められる視点ごとにお客様の声を活用できるようになりました。この変革は、業務の生産性向上のみならず、顧客理解の深度化にも大きく寄与するものです。また、社員がより気軽にお客様の声にアクセスできるようになり、多様な視点からサービス改善に取り組む機会が増えることを期待しています。

さらに、これまでの取り組みを通じて蓄積した当社の生成AI活用の知見やノウハウは、様々な場面でお役に立てる可能性があると感じております。今後は、こうした知見を外販するなど、新たな価値創出やさらなる発展の機会を模索してまいります。

これからもJR西日本グループをご利用いただくお客様に、より質の高いサービスをお届けするため、さらなる改善と挑戦を続けてまいります。

株式会社ELYZA 代表取締役 曽根岡 侑也

今回の取り組みで具体的に生成AIを活用したキーコンポーネントは「要約」と「タグ付与」と「RAG」の3つです。この工程を丁寧に実装することで、効果を実感できるVoC分析が実現可能なことを確認できたのは大きな成果だと考えています。

生成AIが持つポテンシャルは大きい一方で、日本における社会実装の事例はまだまだ希少です。業務を深く理解し、現場の方と一緒に効果が出る生成AIの使い方を如何に発明できるかが、我々のような生成AIを専門に扱う事業者に問われています。

そのなかで、今回のVoCの取り組みは、コンタクトセンター業界の悲願である「お客様の声の集積・分析して活用につなげる」ことを生成AIを用いて実現したものであり、「生成AIを活用すればコンタクトセンターのあり方がコストセンターからプロフィットセンターに変わる」と2022年当時から期待されていたテーマに、具体的かつ本格的な変革の絵を示せた事例と言えると思います。

ELYZAは今後も、各領域・各企業が解決を諦めていた未解決の課題に対し最先端技術とビジネス実装力をもって取り組み、実益のあるかたちで社会実装を行ってまいります。

ELYZAについて

株式会社ELYZAは、「未踏の領域で、あたりまえを創る」という理念のもと、日本語の大規模言語モデル(LLM)に焦点を当て、企業との共同研究やクラウドサービスの開発を行なっております。先端技術の研究開発とコンサルティングによって、企業成長に貢献する形でLLMの導入実装を推進します。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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