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【米国市況】6月FOMC議事録に隠された真実

7月6日(アメリカ時間)に発表された6月のFOMC議事録の内容がこれまでのパウエル議長や実際の米国経済の動きと異なる内容となった。議事録内容を抜粋して説明します。

1.政策金利の利上げ 

6月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)でパウエル議長は0.75%の利上げ可能性は低いとが言及したが、FOMC議事録には6月と7月は0.75%の利上げの確率は低くないと記載してあった

参考資料(6月FOMC議事録 PDF2枚目):https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220615.pdf

原文「After the release of the higher-than-expected inflation data, policy-sensitive rates pointed instead to a considerable probability of 75 basis point moves at both the June and July meetings.」
訳文「予想を越えるインフレが発表された後、かなりの確率でそれぞれ6月と7月の政策金利は0.75%の利上げ可能性がある。」

簡潔翻訳

公の場でパウエル議長は0.75%の利上げは稀であると主張しているが、実際のFOMCでは0.75%の利上げが浮上していた。大幅な利上げによる不安定な先に備えるべきでしょう。


2.GDP成長

今年の1月~3月と比較して、GDPは回復しているという内容が議事録に書かれていたが、とても信じがたい発表であった。まずはその内容を説明します。

参考資料(6月FOMC議事録 PDF4枚目):https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220615.pdf

原文「GDP growth appeared to be rebounding after having declined in the first quarter」
訳文「第1四半期に減少した後、GDP成長は回復しているように見えた」

簡潔翻訳
参考資料(6月FOMC議事録 PDF6枚目):https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220615.pdf

原文「The level of real GDP was still expected to remain well above potential over the projection period」
訳文「実質GDPの水準ははるかに上回っていると未だ予想されていた」

簡潔翻訳

第二四半期の米国GDP成長はまだ正式に発表されていないが、アトランタ連邦準備銀行(GDPナウ)が7月1日に第二四半期のGDP成長予想がマイナス2.1%のと発表

考資料(アトランタ連銀 GDPナウ予想レポート):https://www.atlantafed.org/cqer/research/gdpnow

GDPナウは7月1日に発表されたので、6月のFOMC議事録内容には間に合わなかったタイミングではあったが、上記の表を見ても、少なくても5月中からは右肩下がり傾向であった。

Federal Reserveが成長しないGDPを認めないのは歯がゆい。これだけ同じ連銀のレポートが出されても、パウエル議長は触れもしないし、連銀としてメッセージ性が矛盾しているにも感じる。

最後に、先月NY連銀の景気後退発表に関する記事を書いたので、ご興味のある方はお読みください。


3.「景気後退」は1回も言及されず

議事録には景気後退は1回も言及されず、その懸念も話されなかったようだ。

ただ、米国市民は景気後退をかなり気にされている。調査委によると、7割以上の成人アメリカ人は2022年までに景気後退に入ると思っている

参考資料(2022年までの景気後退確率 米国市民調査):https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-07-06/are-we-already-in-a-recession-2022-businesses-and-workers-say-yes

2022年までに景気後退に入ると思う割合(%)
黒:既に景気後退
ピンク:今後6ヵ月以内
青:1年以内もしくはそれ以降
オレンジ:上記3択に該当しない

データ説明

GDP成長と同じだが、ここまでFederal Reserveが景気後退を認めないことはかなり問題であり、政策金利のさらなる大幅利上げに注意すべき。

ちなみにGDP成長が2四半期連続でマイナス成長になった場合、一般的に景気後退と言われている。第二四半期のGDP成長実績が大注目される。



参考資料:
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220615.pdf
https://www.atlantafed.org/cqer/research/gdpnow
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-07-06/are-we-already-in-a-recession-2022-businesses-and-workers-say-yes




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