9 Melodies' notes
M3−2020秋にて頒布されたELSINOLAのコレクションアルバム「9 Melodies」のライナーノーツ的なものです。以前の記事に書いてあることも含めて書いていきます。覚書的なものでもある。
あなたはこの文章を読んでもいいし、読まなくてもいい。
【アルバムタイトルについて】
大したひねりはないのだよ。
「9つの旋律」ということで、アルバムには9曲収録しています。
「9 Musics」というよりは「9 Melodies」かなと。サリンジャーの「9 Stories」にかけても良かったけれど、全曲、劇伴でもない単なるインストゥルメンタルなので、ストーリーズというのはちょっと違うかと思って、こちらに。また、かの名作ゲーム「MOTHER」の名曲「8 Melodies」にもかかっています。
【ジャケットの写真】
かつて仕事の都合で札幌にいたことがある。これはその時に撮ったもの。ちなみにInstrumentals 7 のジャケットと同じ時期に撮影されている。秋のM3が終わったらすぐに冬になるから、そういうイメージも若干ある。
本当はもっとデザイン的なものを作りたかったのだが、デザインのセンスがないのと、時間もなかったので、いつものようなものになった。
余談だが、うちのアルバムのジャケットには空が写っていることが多く、そのせいでシアンのプリンタインクが無くなるのが早いのだ。
【各曲について】
コレクションアルバムということで、当然全曲既出曲です。違うのは、少しミックスに手を加えていることと、ビット数が上がっていること。作業中にPCが(というかマザーボードが)逝ったせいで最新のスペックに新調したのだ。
曲の内容については既に蛇足的に書いている事があるので、それはそちらを参照していただくとして。なるべく同じことを書かないようにしますが、忘れていることもあるので、それはゴメンな。
1.Aozora(Instrumentals 5)
ELSINOLAのインストゥルメンタルは多くの作曲家が行っているように、ほぼセッションによって制作されている。この曲は2コードのパターンに即興でフレーズを乗せただけで、制作時間は数時間程度だったはずだ。一発録音だったのでミスタッチもだいぶしているが、空気感はあると思う。これを曲として発表してしまうことに否定的な意見があるのは承知しているが、同人音楽ですのでね、と言い訳をしておく。
タイトルは、こういう曲にこういうタイトルを付けると、タイトルに引っ張られて、こちらの意図したイメージを浮かべてもらいやすくなるかと思ったからだ。漢字ではなくて、わざわざ英語にしているのも意図がある。
あなたはそれに乗ってもいいし、乗らなくてもいい。
2.Jonathan Livingston(Instrumentals 1)
ELSINOLAの名刺代わりと言っても良い曲。出来上がったのは、15年以上も前の話だ。別のNoteで単品で売っているので、興味のある方は是非。何卒。
バッキングのパターンを見つけたときは、いわゆる降りてきた感じを初めて体感した。どのジャンルとは言いにくいけれど、アコギのインストではありがちなバッキングかもしれない。主旋律をつけたら浮遊感というか滑空している感じが出て、それがカモメのイメージに繋がり、こういうタイトルになった。個人的にはこれ以上の曲は作れないだろうと思っていた。
この曲はバッキング、主旋律をギターで弾いているが、楽器を変えて演奏するとまた違った印象が出るんではないかと思っている。バッキングはマンドリンやウクレレに変えて、主旋律はバイオリンでも、フルートでも、サックスなんかでも良いかもしれない。いろんな可能性を秘めている。
3.Calm (Instrumentals 7)
この曲はこうなるはずではなかった。
もともとはMind Mapのシリーズになるはずでフレーズを作ったはずだったのに、エフェクターの音に引っ張られてなんとなくギターを弾いていると、曲みたいになってしまった。そこから強引にアンビエント風に持っていけなくもなかったけれど、いっそのこと曲にしちまえ、とセッション的にメロディを作っていった結果、10分もする曲に仕上がったとさ。
コード的には当初はGのみで淡々と進めようと思っていたのだが、変化をつけるためにDを入れている。2コードだと少し自由に動けるので、曲を広げやすくなる。ベースはずっと同じようなフレーズを弾いているけれど、もう少しバリエーションがあってもよかったかもしれない。
このちょっと前の時期からPhish を聴き始めていて、ジャムセッション的に曲を作ることが増えた。コード進行さえ決まってしまえば、ギターやキーボードを適当に弾きながら降りてくるのを待つだけだから、割と楽だし、かっちり作ってないからかゆったり聴ける曲が出来てる気がする。
タイトル付けはけっこう難航した。日本語にするか英語にするか他の言語にするか…これはいつもそう、悩ましい。
4.Noel (Instrumentals 7)
この曲は今回入れないつもりだった。浮くと思って。ただこのタイミングじゃないと入れる時ないだろうから、まあしかたがない。ジャケットの写真はこの曲に引っ張られているところがある。
この曲は聴きどころが冬の時期に限定される。汎用性がないという意味ではよろしくない。ピアノのパターンから作っているが、その時点でもうそれっぽい雰囲気が出ていた。ギターを入れたら本当に牧歌的なものになって、そのイメージから逃げられなくなってしまったのでもうそれでいいやって事で。終盤はちょっと抵抗しているが、賑やかになったくらいであまり変化はない。
ちょっと前に本気でその仕様にしたのだが、そうじゃないバージョンも冬の日曜の朝感があった。
クリーンギターの音の影響か、空気が冷たく澄んでいるイメージが浮かぶ。使っているギターのボディがアルミ製のためか、ピックアップをリアにしてクリーンを弾くと、とても冷たい音がする。そこにアコースティックシミュレーターをかましているのだが、アコギっぽく出ない音になっていて良い。
終盤は同じフレーズをちょっとずつずらしながら輪唱のように違う楽器で弾いて回している。こういうことはよくするのだが、Gentle Giant の On Reflection が元ネタかもしれない。
5.Two (Think Blue Count Two、2019)
Think Blue Count Two に収録されていた曲で、細かい話はそちらを参照されたし。そちらでも触れたけれど、この曲は2コードで作っていたものに、ベースを追加したことで曲に広がり、奥行きができた。アルペジエータさえあれば生演奏もできるのでは?と思っている。
6.家路 (Instrumentals 8)
この曲は前にも蛇足を書いたので、そちらを参照されたし。
もともとはHelios みたいな曲を作ろうとして失敗した曲。ただ、何となく郷愁を誘う空気がある。
ゴリゴリにギターを弾こうと思ったのだがあまりにも酷かったのでいろいろと加工した後に、もう一本あまり動かないようなフレーズを入れている。空間系エフェクトをバシバシに効かせているので、郷愁の原因はそれかもしれない。スネアにかかっているリバーブがとても心地よい。
7.暁光〜Dawn (Instrumentals 9)
Calm の系統の曲を何曲か増やしたいなと思って作った。
Dawnはシンセでメロディを弾いている。本当はギターで弾くためのメロディ確認用にとりあえず弾いたものだった。挿し替える予定だったんだが、これでもいいか、となった。たぶん時間が無くて、めんどくさくなったんだな。
使用しているのはファミシンセというフリーソフト。三角波であればなんでもよかったのかもしれないけど、あまり設定するところがないのと、サンポーニャみたいな音に聞こえなくもないという理由でこれにしていた気がする。ちょっと長くなってしまっているのは明確に作ったメロディと、その場のノリで作っていったメロディとがあるからだ。ブレイクとか入れて中弛みしないようにしてみたが、どうだろう。この曲も2コードでできている。
暁光は実は後から作った。フリッパトロニクスのシミュレーター(というかテープディレイ?)を使ってギターを多重録音した曲。それがフェイドアウトしていって、ギターのコードストロークが入ってDawnが始まるという構成にした。
初出時はトラックを分けていたが、今回はまとめた。分けているとランダムで再生している時に変な感じになるからだ。
8.渚 (Instrumentals 8)
これは蛇足を書いているので、制作についてはそちらを参照されたし。
PCを新調していちばん大変だったのはピアノの強弱の調整だった。これはソフトウェアの問題かもしれない。それ以前のソフトではそこまで細かく設定できなかったので、あまり強弱のコントラストはきっちり調整してはいなかったのだが、新しいものでは厳密にというかこれまでよりも細かく設定できるぶん、調整も細かくしなければいけなくなった。この曲のピアノはほぼ一発録りなので、調整しなくてはいけないパラメータが増えて、他の音とバランスを取るのが難しかった。なるべく元の感じには戻せたと思う。あとついでに、けっこうテンポからずれていた音の頭も揃えた。
9.KYO (Instrumentals 10)
この曲も蛇足があるので話すことはあまりない。
Instrumentals 10は、珍しく、作った分が当日中に全て無くなった。在庫もなく、したがってこの曲を聴いてもらう機会がない。そういうわけでこの曲を持ってきた。締めにはいい曲だと思う。Dawnは明け方だが、この曲は夕暮れ感がある。
この曲も2コードで作っている。
いちばん直近の曲だったのでミックスやバランス自体も大きくは変えていない。変えたのは後半に出てきたトランペットの音で、アンプシミュレーターを使って少し歪ませている。シンセ音源のトランペットは、もちろんいい音なのだが、クラシックのトランペットを想定しているような、澄んだ、悪くいえばのっぺりした音色だった。それも悪くないのだが、みんなでわいわいソロを回しているようなイメージで作っているので、どちらかというとジャズ系(というかMOONRIDERS の武川雅寛さん)のトランペットのイメージで鳴らしたかった。
これまでに制作したインストゥルメンタル曲のうち、このアルバムに収録していないものは、また後日にまとめる予定があるので、そちらの方も気にかけていただければ幸いです。