情景
「知ってるか…?上層では”外”が見えるらしいぜ。」
下層ではこんな会話は珍しい。下層は他層からの情報が限られているからだ。
「なんでもフタ?みたいなのがぐいーんって開いてよぉ…」
「いやいや、俺が聞いたのは透過液晶らしくて…」
「ちがうよ!大きい穴みたいなのがどかーんって…」
…
ここ最近、下層への情報流出が増えている気がする。
ウソかホントかは別として。
悪いことではないけども、ここまで大規模だと誰かが情報を流しているような気がする。
「…あとで情報統制の強化を広報課に投げておきましょうか。」
あの人なら喜々としてやってくれそうだなと思いつつ、ふと
「そういえば、”外”って意識して見たことなかったな。」
ヴィルーパ全土を覆う巨大な天蓋。
ヴィルーパ都市部を覆う半球状の天蓋と、天蓋内面のディスプレイで構成されている。
なぜそのようなものが建造されたのか、どうやって惑星サイズのものを建造したのか。
その理由を知る人物は果たしているのだろうか。
そんな考えを巡らせながら上層行きの中央エレベーターに観測者のパスを使って乗る。
「”外”ねぇ…そんなに見たいものかしら。」
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