(未完の物語)オープンバッジの社会的意義を考える
先日、こんな画期的なプレスリリースが出されました。一般社団法人デジタル認証サービス機構が出した『TEACHER PRIDE』というキャンペーンです。
みなさんは、オープンバッジってご存知ですか?
オープンバッジとは?
実はみんな何かしらの認証を受けている
みなさんは、いろいろな証明書をお持ちですよね?身近なところでは、運転免許証とか卒業証書とか。資格をお持ちの方もいるでしょうし、もしかしたらラジオ体操の参加スタンプを思い出した人もいるかもしれません。
私たちは、自分の能力・スキルを証明するために、さまざまな認証制度を利用しています。それだけではなく、活動の記録としてスタンプや参加証などを使うこともあるでしょう。
紙の証明書とのちがい
オープンバッジは、さまざまな認証を、紙ではなく、デジタルデータとして保管します。紙の証明書は紛失の危険性もあり、またいつでも持ち歩くとは限りません。また紙の証明書は数が多いと視認性が低く、探す手間がかかります。
それをデジタルのバッジにすることで、視認性・検索性が高まり、またそのバッジの詳細や発行団体についても、クリックするだけで確認することができます。
ブロックチェーン技術の下支え
また、ブロックチェーン技術を使えば、改ざんリスクをあまり気にしなくてすみます。
詳細は、ぜひ、上記URLからプレスリリース文で確認してください。
認証発行の任意性
これまでは紙の証明書という物理的制限や活用範囲の狭さから、よほど大事な資格や証明書ではないかぎり、能力の証明をわざわざ行うことは少なかったと思います。司法試験などのその職に就くために証明書が必要な場合とか、学習に関しては英検・漢検などの検定試験や学歴を証明する卒業証書などですが、いちいちそれを確認することも日常ではありませんし、いざと言うときに提出できれば良い、くらいの気持ちで管理していると思います。
しかしオープンバッジは気軽に発行・管理ができます。スマホの画面にバッジがたくさん並んでいて、その中で、就職の際に必要なものを並べ替える・・・など、自身のスキル証明がより情報量多く、簡単に行えます。
このことによって、社会の中での「証明」「認証」の役割が徐々に変わってくると期待しています。
学習の「活動」についても、より気軽にバッジが発行できます。
たとえば「セミナーに参加した」ということです。大きな資格はあまり持っていなくても、常日頃、セミナーや勉強会に参加している向上心あふれる方の活動がバッジで残せたらどうでしょうか?
つまり、学歴や資格という次元ではなく、「学習体験歴」「学習歴」ということがもっと解像度よく確認される社会になる可能性があります。
たとえば、定期検診で虫歯がない状態に毎回バッジが発行されたら、意識が変わる人は一定数いると思います。
教員免許のオープンバッジの意味するところ
さて、冒頭の一般社団法人デジタル認証サービス機構が出した『TEACHER PRIDE』というキャンペーンについて話題を戻します。
これは、我々ELPA(英語運用能力評価協会)も協賛しています。
教員は意外と複数の免許を持っている人が多い
よく学校では「A先生は英語の先生だ」という表現がされます。つまり、現在、英語の授業担当であればその科目の先生だと思われています。しかし、高校英語の教員免許を持ちながら、情報の免許も持ち、社会科の免許も持っている・・・なんて先生も意外と多くいるのです。
つまり、複数の免許を持っていること自体が周囲の方々に認識されていない場合があるのです。
現在教員でなくても、教員免許は持っている人も多くいる
上記プレスリリース文中でも触れられていますが、日本には100万人の教員がおり、570万人の教員免許保持者がいます。
もちろん、大学教職員や専門学校や塾の教職員で、教員免許を持っていながら学校では教えていないという方々もおられると思います。
しかし、何らかの事情で今は教壇に立っていなくとも、後々、教育現場に復帰する方もおられるかもしれません。
このキャンペーンを契機に、自らの資格を改めて見つめ直していただけるとありがたいなと思います。
オープンバッジは社会を変えるのか?
さて先日もこんな質問が来ました。
ELPAはなぜこの取り組みに協賛するのか?
それは、ELPAが進める、教育・学習が促進されるために必要な「評価」としてのテスト開発および実際の評価と、「認証」ということが非常に相性が良いからです。
評価されること、それを記録として残すこと、視認性を高めること・・・一つの流れになっていくでしょう。これまでは、評価というと「教室」「学校」など閉じた空間で多くなされ、それが学習者自身のものとして記録され残っていくということが多くありませんでした。一部の資格だけが社会のなかでもてはやされていたのです。
生徒会が頑張ったのであれば、バッジが発行される。それも良いと思います。
学外の勉強会や博物館に足繁く通ったらバッジが発行される。それも良いと思います。
私たちELPAも、従来の「ペーパーテスト」という枠を超えて、社会に寄与する能力評価のあり方を考えていくフェーズになっていると考えています。
ただ、この物語はこれから・・・
またこんな質問もよく寄せられます。
「オープンバッジは社会を変えるのか?」ということです。
断定的なことは言えません。定着するかどうかも、10年後、20年後はどうなのか、よくわかりません。
ただ、新しい技術や仕組みができたら、安易に飛びつくのも危険ですし、よく知らないからといって遠ざけるのも愚かです。
ただ、誰かが推進すべきことというのがあります。もしそれが失敗であれば、失敗であることを社会に示し、改善を求め、また進んでいくだけです。
みなさんは、オープンバッジの可能性について、どう思いますか?
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「まずは知ってみよう!」という方がおられましたら、2024年7月22日に開催したELPA教育セミナー『学びとキャリアのオーナーシップを高めるオープンバッジの活用』のアーカイブ視聴会を期間限定で行います。
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