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海外に興味のなかった私が海外に魅了されて英語教師に〜自分のワクワクを信じて探す理想の働きかたとは

一緒にカフェにいるような、カジュアルな対談企画。
第二弾は、英語が嫌いだったのに初めて行った海外をきっかけに英語教師になるほど海外に魅了されたシオリさんにインタビューしました。

【プロフィール】
幼い頃から憧れていた教師を仕事としている。担当教科は英語。趣味は読書やドラマ鑑賞。海外旅行も好きで中学時代から海外に行き、これまでに12カ国の渡航経験がある。書くことや話すことも好きで、興味のあることに対しての探究心は強い。

2024.12月インタビュー当時

英語は海外を知るためのツールのひとつ

ー現在の職業を教えてください。

英語教師をしています。

帰国子女で英語を武器に英語教師になる人もいますが、私は帰国子女ではありません。ワーホリで長期滞在した経験もなく、むしろ英語は苦手でした。

海外に行ってたくさんのことを吸収するためのコミュニケーションツールとして、英語は必要だと思っています。そのため、「言語ができないと海外でコミュニケーションをとるのは大変だよ」と言うのを切り口にして、英語を教えています。

ー英語があまり好きではないのに英語の先生になった理由は?

今でも“教えるための英語”を勉強しながら教師をしています。生徒と同じ内容の英語ではありませんが、一緒に勉強しているような特殊なタイプですね。

中学生の頃は「国語は分かるけど、どうして英語を勉強しなければいけないの?」と、ずっと思っていました。自分で海外に行きたいと思ったり、ドラマを見て海外の雰囲気に憧れたりすることもありませんでした。

ー初めての海外へ行ったのはいつでしたか?

中学がたまたま外国語教育に力をいれている学校でした。プログラムで海外の研修に必修で参加しなければいけなかったのです。当時は、前日まで飛行機が飛ばなければいいのにと思うくらい、行きたくありませんでした。

本当にイヤイヤ海外に行くような中学生だったため、英語についても勉強していませんでした。研修期間だけなんとかやり過ごせられればいいと思っていたくらいです。そんなマインドだから、海外に行く楽しみもまったくありません。ノリとは違うけれど、必修だから勢いで行ったような感じですね。

ー行ってみてどうでしたか?

強制的ではありましたが、実際に行ってみたら海外に対する思いがすごく変わりました。空港に降り立って最初に見た景色が日本と全然違っていて!

自分が今まで見ていた景色なんて、本当に一部だったんだなと感じました。小さな世界の中で、私って何をやっていたんだろう......と、自分が情けない気持ちにもなりました。

しかし、海外で感じる非日常的な雰囲気が好きで、それを味わいに海外に行きたいと思っています。

ワクワクが止まらなかった初めての海外生活

ーニュージーランドの生活はどうでしたか?

プログラムでいくつもの学校に行きましたが、本当に毎日たくさんのことがありました。日本で暮らしていたら絶対に起こらないようなことが毎日起こり、目まぐるしさに圧倒されていましたね。この土地で起きていることをもっと知りたいし、そんな日々にワクワクしている自分もいて。

英語でコミュニケーションが取れないため、知りたい情報が分からないし、会話をしたいと思っても英語が聞き取れないんです。結局、目で見た情報だけしか知れることも無く「すごい」としか伝えられない。そんな日々に歯がゆさを感じ、英語を勉強しようと思いました。

ーそこから英語を勉強をされたのですか?

英語の勉強は本当にスロースターターでした。中学1年生で英語の授業をまじめに受けていたら、中学3年生にはそれなりの英語力があるかもしれません。当時の私にはそこまでなく、普通より下くらいの英語力だったと思います。

それでもニュージーランドのたった1カ国だけで、こんなにも違う世界があると知りました。他の国のことも知りたいと興味が強くなりましたね。もっといろんな国に行きたいと、ワクワクしたんです。勉強に対して向き合う姿勢が変わるきっかけだったと思います。

ー初海外をきっかけに頻繁に海外へ行かれたんですか?

2カ国目はアメリカに3週間行きました。当時はまだ高校生だったため、親に頼み、夏休みなどの長期期間で行けるプログラムで行かせてもらいました。

大学生になってからは、自分でアルバイトをして貯めたお金で海外に行くようにしました。イギリスに1ヶ月とマルタに3ヶ月です。

初めての日本人として、マルタで感じた特別な体験

【マルタ共和国】
首都: ヴァレッタ (Valletta)
マルタ島、ゴゾ島、コミノ島 総面積: 316㎢
人口: 51万人(2021年5月現在)
政治:共和制(2004年よりEU加盟) ミリアム・スピテリ・デボノ大統領(Myriam Spiteri Debono)
公用語: マルタ語、英語
宗教: ローマン・カトリック

マルタ観光局ホームページ

ーマルタの決め手はなんですか?

英語を学びたい思いもありましたが、せっかく行くならメジャーな国には行きたくありませんでした。他の人と同じことをやるのがあまり好きじゃないんですよ。おもしろくないじゃないですか。

だから、知らない国に行ってみたいと考えていました。日本人があまり行かなくて、知名度も低そうな国で希望条件を絞るとマルタだけでした。

イタリアの先、シチリア島のすぐ下の地中海にマルタはあります。海もキレイなため、ヨーロッパのリゾート地としても人気です。だからヨーロッパの留学生もたくさんいるのかなと思い、多文化に触れられそうなのも魅力的でした。

一人で行くため治安面も調べましたね。銃を持っていなさそうで、安心できるなと。人口も多くないため、ゆっくりとした時間が流れて心地よく暮らせそうだなと勘で決めました。

ー実際にマルタでの生活はどうでしたか?

毎日興奮の連続でした。私、海外の人にとって“初めての日本人”になりたいんですよね。マルタの人から見た私は“知らない日本人の観光客”ですが、そうやって見られる感覚におもしろさを感じます。

マルタでは日本人を見慣れていない人が多く、珍しそうに見られている感覚がありました。アジア人の見分けがつかないのも当たり前でしたね。もっと言えば、“中国という国の中にある日本という地名”だと思われているくらいです。日本という国を知らないし、初めて見た日本人が私。この感覚がすごくおもしろかったです。珍しいですかね(笑)。

ー多くの人にとって「初めての日本人」となれたのではないでしょうか

彼らにとっては私が日本人のイメージになってしまうと考えたら、嬉しいと同時に責任も感じ少し怖い気もしました。逆に考えればいいイメージを与えられるかもしれないし、その結果、日本に興味を持ってもらえるかもしれない。それはワクワクするなとも思っていました。

私でも誰かの初めてになれるのが嬉しいし、きっかけを与えられたと考えるとすごいことですよね。

ー現地の人とも交流はされていたのですか?

積極的に交流をしたい気持ちは強く、どんな些細なことでも話すきっかけが欲しいと思っていました。私は身長も低く童顔のため、高校生くらいのアジア人が一人で歩いてると思われます。そうなると、現地の人からも話しかけてもらいやすく、ガイドブックに載っていないようなローカルな情報を教えてもらいました。

一人で飲食店に入っても、海外の場合だと店員さんがわりと話しかけてくれます。店内にいる他のお客さんでも、気になる人を見かけたら積極的に話しかけていましたね。

日本人を見かけたら「なにしてるんですか?現地で学ばれてますか?旅行ですか?」と話しかけることもありました。いきなり話しかけるのはちょっと怪しい人ですね。海外に行くと人が変わるみたいで、誰も私のことを知らないから開放的になるんですよね。

海外でのカルチャーショックから見えた、自由な時間への憧れ

ー日本ではそこまで開放的になれていないと感じていますか?

日本ではなにをするにも「すみません」と言い、多方面に気を使っている感覚があります。私自身が気にしすぎな性格だからかもしれません。

周りからどう思われているか、迷惑かけていたら悪いなという思いが強いです。だから海外の開放的な人たちに憧れるし、幸せそうに感じ羨ましいと思っています。

ー自然の多い海外でのびのび自由な感じが好きですか?

雑食と言うのか、行き先としては観光都市も自然の多い都市も気にしてはいないです。都会に魅力を感じないわけではありませんが、自分にとって心地いいのかと考えると、都会は違うかなと思います。

ニューヨークやロンドン、東京など都会にいる人は1分1秒を気にして歩いているイメージなんですね。そのセカセカしている感じが私の肌には合わないのかなって思っています。

旅行目的で短期間なら楽しめるかもしれませんが、長期間過ごして生活する場所としては、あまり魅力を感じないですね。

ー日本での生活はどうですか?

学生時代から常に時間を気にしていました。なぜかずっと時間がない感覚だったんですよね、24時間はみんな平等なのに。つねに時間に追われ、セカセカした感じが染み付いているんです。

もう、学生ではないけれど、職業柄決まったスケジュールの中で働いているからですね。

ー海外のちょっと時間にルーズな感じがいいと思ったのでしょうか?

本当にそうだと思います。

ニュージーランドは公共の場所にある時計が壊れて止まっているのに直そうとせず、時計自体を誰も見ていないんです。

バスだって時間通りに着かないのが当たり前。それなのに誰も遅れていることに怒っていないし、もはや気にしていないんです。それが衝撃的でした。

初めて触れた日本以外の感覚に、こんな世界があるんだと思ったと同時に、なんてみんなイキイキしているんだろうとも感じました。

建物もたくさんあるわけではないし、公共交通機関が発達していないからなのかもしれません。ニュージーランドの人って、ゆったり散歩している人が多いんですよね。

学校の始業は9時くらいでしたが、遅刻者を確認することなくゆるゆる始まります。当たり前に途中からくる人もいて、もうカルチャーショックでしたね。こんなにゆるい生活なのに不自由なく暮らしている生活が、とても楽しそうに見えました。

私よりも幸せそうに見えて、どうしてなんだろうなって......。こんな生活のほうが自分には向いているのかもしれないと思ったきっかけでもあります。

永住よりも期間限定の海外生活が理想

ーいずれは海外で生活したいと考えていますか?

それがそうでもないんです。海外の方が私の性にあっているから、移住して海外で暮らしたいと思っていそうですよね。でも、そこまでの勇気はありません。

3ヶ月や半年、1年など期間が決まっているなら海外で暮らしたいと思いますが、永住権をとってその地に骨を埋める覚悟まではないです。

海外で行ってみたい土地もたくさんあり、永住したい国が決まっているわけでもありません。たくさんの場所で海外の雰囲気を楽しみたいので、同じ場所にいるのも私の性格には合わないかなって思います。

ー行ってみたい国には、どんな国がありますか?

今のところコミュニケーションが取れる言語は英語だけで、もし言語に困らないのなら英語圏以外も行きたいです。

たとえば北欧にはすごく興味があります。幸福度ランキングもすごく高いし、フィンランドとかデンマーク、スウェーデンはいつも上位にいるため日本での生活と何が違うのか気になりますね。

現地の人たちがどんな仕組みで人々が満足しているのかは、現地に行かないと分からないと思います。だからいつかは行ってみたいです。しかし、今はまだ、英語圏以外に言語の壁を大きく感じてしまいますね。

ー言語の壁がなくなれば、次に行きたい国は北欧の国ですか?

手段や目的、今まで行ったことない国とか関係ないのなら、もう一度ニュージーランドに行きたいです。最初に行ってから年月も経過しているし、海外で感じた原点を思い出したいですね。

ニュージーランドの中でも、もっといくつもの地域に行きたいです。ニュージーランドを一周して、現地の人とも深くゆっくり交流したいですね。

ほかにもデンマークのコペンハーゲンに行ってみたいです。行ったことない国ですし、まとまった休みが取れたら行きたいと思っています。

この2カ国は、時期や行ける期間によって変わるため順位はつけられませんね。

仕事と時間のバランスを求めながら、教師という職業を楽しむ

ー今の仕事はまとまった休みもとりにくそうですが、今後も教師は続ける予定ですか?

教師という職業には、楽しさも難しさも半々くらい感じています。現在はフルタイム勤務のため、働き方も変えたいと思っています。

私のキャパシティでは、仕事に100%尽くせないんです。がんばり過ぎてメンタル不調に悩まされたこともあります。同じことを繰り返さないために、来年度の1年間は非常勤で働く予定です。

ー非常勤になると変わる部分も多いのでしょうか?

非常勤は教科だけを教えるため、会議や部活指導もなくなります。業務も軽減されてしまいますが、空いた時間が増えます。その時間をなにに使おうかなって今は考えているところです。

生徒との関わりも教科だけになるため、その分きっと教師としてのやりがいも半減しますね。収入も減ってしまいますが、教師の仕事をしながら自分の時間を捻出するにはと考えると非常勤が理想と考えました。

まずは1年間試してみてから、今後の働き方も考えようと思います。それに、非常勤になったら副業もできるようになります。コミュニティの運営など興味あることに挑戦したいです。

ー憧れの自由な時間で、まずはなにをしたいですか?

なにをしようかなってずっと考えていますね......。なんでしょう?

私、本が好きなのですが、当たり前過ぎて自分が本好きだってことに最近気がつきました。

1ヶ月に10冊の本を読む人に対して、私は5冊読んだだけなら「本が好き」って言ってはいけない気持ちもありました。最近、友人にその話をした際に「自分が好きなら何冊でもよくない?」と言われたんです。その言葉にたしかにと自分でも思い、本が好きと言えるようになりました。

ー本を読んで知識を深めたり気分転換したりですか?

教師という仕事をしているのもあり、子どもたちにもっと読書して欲しいと思っています。活字離れをすごい感じるのです。「すごい」「やばい」「うざい」「だるい」で完結してしまうのが悲しいですね。語彙力を増やしてもっと自分について言って欲しいし、言葉をつむいで欲しいため、そんな普及活動もやりたいです。

日常的に本を読むようになったら、絶対に4つのボキャブラリーだけでは完結しないと思うんですよ。もっと自分の思いを言語化しやすいはずなのに、自由さが奪われている気がしてしまって。それを子どもたちに伝えたいですね。

ー英語の勉強でも読書でも、子どもに未来を切り開くきっかけを与えたい思いを感じました。

先生という職業は捨てがたいけれど、時間に縛られる働き方は性格には合わないから難しいですよね。一番困っているところです。どこで折り合いをつけられるのか模索しています。

実際にワクワクするのは、学校の先生という働き方です。「先生」でよければ色々働き方もあるかもしれません。だけど私は、生徒一人ひとりを見たいし、変化を見ていきたい思いがあります。英語を教えている以上、これから英語を使ってどう変わっていくのかも知りたいですね。

自分の好きな職業をしながら、自分のために使える時間を見つけたいーそんな理想をこれからも探していきます。

ーーーあとがき

インタビューをされたいと言っていたシオリさん。インタビュー後には「自分の思いを言語化されるのっていいな」と言っていました。

シオリさんの中で、基準となる「ワクワク」の気持ち。何かを感じたときや決めるときいつも自分の気持ちに目を向けて、直感に正直に決めてきたんだろうなと感じました。内省が好きだということもあり、自身のこともすごく分かっているんだろうなと思います。

次にいつ会えるか分からないから話したいと思ったら、すぐに話しかけに行ってしまうという行動力。衝動的すぎると反省していましたが、その行動力が一人で海外に行けるのだろうなとも感じます。

海外に行って感じた気持ちを多くの生徒に伝えていって欲しいなと思いました。

英語教師としてのシオリさんと、時間に追われず自由をシオリさん。海外と日本を楽しみながら、ワクワクした生活を探究し続けて欲しいと思います。



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