Endnote21とEndnote Webは現時点でどうなのか
Clarivateの策略に完全に嵌っている件
最近EndnoteのSyncにエラーメッセージが出るなと思いつつしばらく放置していたが、その原因に気が付いた。Endnote20についてきていた無制限クラウドストレージの期限が、2年(?)経過して切れたのだ(いや、もうちょっとわかりやすいエラーメッセージ出してくれよ。)そのままでも2GBのストレージは維持されるが、私の論文は12GBもあったのでだいぶ超えている。
ここで一般的なクラウドストレージなら「とりあえず容量買い足すか」となるのが普通だがそうはならないのがEndnoteである。容量を買い足すだけのオプションは存在しない。新しいバージョンのEndnote(Endnote 21)を購入すれば3年間は無制限ストレージがついてくるらしい。うわー、なんちゅう商売してるんや。サブスクじゃないですよっていう顔をしてやってることはサブスク商売と一緒やんけ。
ちなみにすでにEndnoteを持っている場合はアップグレード版が購入できるので、新規購入の半額で買える。3年のストレージに5万超は高すぎると思ったが、その半額ならまあギリギリ耐えないこともない、サブスクあるあるの微妙な金額。
そもそも1端末でしかEndnoteを使わないならこの同期機能は要らないが私はノートPCとデスクトップの2台体制なのでわりとないと困る。12GBものpdfを全部Endnoteで管理する必要があるのかといわれるとたぶんないのだが、だからといってどう論文pdfを切り分けて整理して管理していくのかを考えるのは簡単ではない。(前もそういう記事を書いた。)ていうかオープンアクセスの時代が本当に到来したらこのストレージの必要性はあんまりなくなるが、うちの分野にそんなにすぐ来る気配はないしな。
アップグレード版を購入するか、頑張ってストレージを減らして論文pdfを別の方法で管理するか悩んだが、いろいろ考えた結果、結局購入してしまった。いやただこれ毎回こうやって買い続けることになるのはあんまりうれしくないなあ。
購入に至った理由の1つに、Endnote 21の新機能であるEndnote Webに興味を持ったからというのがある。これまでもEndnoteは、Endnote clickやらEndnote onlineといった各種ツールをオファーしてきてはいるが、これらは全くと言っていいほど使い物にならない代物であった。それが、この新バージョンからは、購入者限定で、デスクトップ版にかなり近い使用感のサービスを提供するということで使ってみたくなったのだ。もしこれがよいものなら、組織のPC等、ソフトを自由にインストールできないPCや、現時点でEndnoteアプリが存在しないAndroidスマホでもEndnoteが使えるかもしれないということで、気になった。新しいものを試したいという好奇心で、購入してしまった形だ。
見切り発車のEndnote Web
Endnote21自体は、Endnote20と大きく使用感は変わらないので、今のところ特にこれといった感想はない。アップグレードはスムーズで、データ移行なども特に必要なかった。21からの新機能のタグは、うまく使いこなせればいいと思う。さて問題のEndnote Webである。
まずそもそも購入前から思っていたことだが、ネーミングセンスがなさすぎる。Endnote onlineとEndnote webが別のサービスだとは普通は思わんだろう。(もっとも、公式としてはonlineのほうを「classic」とつけて区別しているもよう。)Endnote webを使い始めても、Endnote onlineは使い続けることができる。
Endnote WebのUIは確かにデスクトップ版とよく似ていて、デスクトップ版を使っていれば最初につまづくことはあまりない。裏をかえせば、つまづくほどたくさんの機能もない印象である。また、スマホのブラウザでも確かに開くことができ、不具合は存在はするものの、Endnoteの大きな課題であったAndroidスマホで論文読めない問題が一応解決されたことはよいことだと思う。
現時点で少し使ってみて不便だなと感じたのは以下の点である。
デスクトップ版で右クリックでできる操作が基本的にはできない。右クリックしたら普通にブラウザのメニューが出てくる。
ブラウザ拡張機能はなく、Endnote clickと連携しているわけでもないので、ブラウザで論文を読んでいて、その追加が簡単にできるわけではない(
そもそもEndnote clickがゴミなのが悪い)。文献情報だけでいいならdoiを張り付けて情報更新するのが楽。pdfもつけたいなら一度ダウンロードしてからアップロードすることになる(!?)若干動作が重い。
Advanced searchができない。
スマホ版は、サイドメニューのスクロールができないのが意味不明すぎる。
最大の問題はこのEndnote Webがまだ開発途上にあることであり、今後どんな機能が追加されるかまったく不明なことだ。Endnote購入者へのあの手厚い日本語サポートで知られるユサコさんが、公式日本語操作ガイドでのEndnote Webの説明を行わず、全ての情報をユサコウェブサイトで更新していることからも、このEndnote Webがいかに見切り発車であったかを理解することができる。Clarivateさん、今までの無料サービスなら適当でも許されたかもしれないけど、Endnote webは課金サービスなわけなので、もうちょっと頑張ったほうがいいんじゃないですかね?(それともまた3年くらいでサービス自体を使い捨てにする気なのか?)
ただ私としては、EndnoteやClarivateが悪いのではなく、このような非常に複雑なソフトウェアを必要とする作業を要求する一部のアカデミアの慣習が悪いのであり、Endnoteのようなソフトウェアはこれらの慣習をうまくこなすのを助けてくれているという認識でいる。現に、引用文献の書式がそこまで厳しくない分野や、オープンアクセス、プレプリント公開が進んでいる分野の友人はEndnoteのようなソフトウェアを必要としていない。結局、高いお金を払ってEndnoteを買うのは、ソフトウェアやサービスがスマートだからというよりかは、個々のジャーナルに引用スタイルを合わせるといった誰もやりたくない作業を外注するというニュアンスが強いのである。