最近のTwitter保守系垢に思うこと 前編

大量の陰謀論が飛び交った2020年の米大統領選の頃、私は現在よりもっと保守的な政治的考えを持っていた。

虎8は毎日のように視聴していたし、TwitterのアカウントのFF達も、名前に日の丸を付けている人がとても多かった。

当然、周囲は陰謀論に染まってしまっている人だらけだったが、私はその辺りは少し距離を置いていた。だが、周囲とは少し違う形で、私も勘違いをしてしまっていた。

GPS機能付投票用紙や、フランクフルトの銃撃戦のような話には飛び付いていなかったが、不正選挙の証拠があると「トランプ大統領自身」が主張していることが、どうしても頭を離れなかった。

トランプは高い知能指数で知られる人物であるし、周囲も当然、頭のいい人間ばかりだろう。証拠も無いのに不正選挙を主張したりすれば、それが明らかになったとき非常に大きなリスクを彼ら自身が背負うことになるであろうし、そんな馬鹿なことをトランプ大統領とその優秀なスタッフが仕出かすとはとても思えなかったのだ(私は、アメリカ政治にそれほど詳しいわけではないので、トランプがかなりメチャクチャな人物であることは、そのときは知らなかった)。

そこで私は「トランプは不正選挙の証拠を握ってはいるが、それが(スパイ活動などの)非合法的な活動で入手したものであるために、公けにできないのではないか?」といった感じの大きな勘違いをしていた。

そして周囲は陰謀論に夢中になっていたが、「この熱狂も1月6日(米議会による投票結果認定の日)になれば終わるだろう」と思っていた(そして、それは大きな間違いだった)。

このように私は、陰謀論者達に囲まれながら、それとは別の少し変わった勘違いをしていた男だった、ということになる。

もっと深く考えていれば、自分の間違いにもっと早く気づけたかもしれない。だが、周囲ほどには深く大統領選について考えていなかった怠惰な私は、結局、2021年1月6日まで、完全には自分の勘違いを払拭できなかった。

しかし怠惰な私にも、「トランプは何の証拠も持っていないのではないか?」と疑念を持つことはあった。大統領選挙後、美貌で知られたケイリー・マケナニー報道官は明らかにナイーブになっていた。そして、それは「嘘を吐いている人」の表情だったのだ。

そして、私がトランプに対して持っていた疑念が、それまでとは段違いのレベルに跳ね上がったのは、米議会による投票結果認定の日である2021年1月6日を目前にして、トランプ大統領が、上院議長であるペンス副大統領に対して「選挙結果を認めるな」と依頼したことを知ったときだった。

私はアメリカの選挙制度に詳しいわけでは全くない。だが上院議長というたった一人の人間が、アメリカ全土で行われた大統領選の選挙結果を否定するなど、普通に考えても有り得ないこととしか言いようがない。

トランプがよくTweetしていた「Law and Order !」とも真逆のことだろう。

そしてあの1月6日、、、私は酔って寝てしまっていたのだが、日本時間1月7日の深夜に目を覚ましてTwitterをチェックして、議事堂襲撃が始まっていたことを知った。

トランプが何かしらの証拠を持っているのなら、この土壇場で出さない意味はない(もし、公けにはできない非合法に得た情報であったとしても、何かしらその存在を匂わせるやり方があるだろう)。「ああ、証拠はなかったんだな」と私は悟り、沈んだ気持ちのまま、もう一度、寝てしまった。

朝になって目を覚まし、再びTwitterをチェックしたとき、私はトランプに対してだけでなく、日本のトランプ応援団に対しても大きな勘違いをしていたことを悟ることになった。

1月6日が過ぎれば陰謀論のことなど忘れて冷静になるだろうと思っていた彼らは、ますます陰謀論に熱狂していた。そのことだけでも非常な驚きであったが、もっと驚いたのはペンス副大統領が「裏切り者扱い」されていたことだ。

ペンス副大統領は選挙結果を認めることによって、アメリカの民主主義を守ったと言っていいはずの存在だ。その彼を「裏切り者」と呼ぶなど非常識に過ぎる。

さらにはリン・ウッド。彼は「銃殺隊を招集しろ。最初はペンスだ」という恐ろしいTweetをしていた。

私は以前からリン・ウッドのことは「ヤバい奴」という印象を持っていて、彼のことをスターのように扱うトランプ応援団が多いことを苦々しく思っていたが、リン・ウッドがこれほどまでに分かりやすく、自身が超危険人物であることを曝け出したTweetをした後だったというのに、トランプ応援団の多くにとってこの危険な弁護士は英雄のままだった。

もうとてもついて行けないと思ったが、そこはTwitter上とはいえ付き合いのある人たちだ。彼らのことを全く案じないわけにもいかなかった。

その頃のFFの中に、よりによって篠原常一郎さんにハマっている方がいた。篠原さんがYouTubeやTwitterなどで「情報収集」を行っては妄言を垂れ流していた頃だ(篠原氏をご存じない方のために説明しておくと、彼はジャーナリストでありながら、アメリカ大統領選の際、YouTubeやTwitterなどで「情報」を集めるという、信じ難いことをやっていた。彼のいう「情報」の中には、当然、再生数稼ぎのためのデマなどが多く含まれていた)。

私はそのFFに対して、「機密というのは基本的に国が持っているもので、YouTubeやTwitterに転がっているものじゃないですよ」と伝えたのだが、全く響いてくれなかった。彼は私がリン・ウッドを批判するTweetをすると決定的に機嫌を損ね、その後、今度は私が篠原氏を批判すると、私をブロックして去っていった。

そして、彼以上に私にショックを与えたFFがいた。

その方は元官僚で内閣参事官も務めたことのある人物だった。当然、深い知識を持ち、また強い正義感と誠実さを持っていらっしゃったので、私はその方を尊敬していた。

そんな尊敬する人物がなんとTweetの中で「トランプアメリカ共和国大統領」と述べていたのだ。

さすがにそのFFはリン・ウッドを支持するような発言などは決してしなかったが、信じられないほど稚拙な陰謀論にハマってしまっていたのだ。

尊敬する人物に、「あなたは陰謀論にハマっています」などとはとても指摘できなかったし、また彼が陰謀論にハマってしまっていることが分かった以上、陰謀論批判のTweetをしたら、それを彼に見られてしまうということを想像するだけでも辛かった。

もう耐えきれないと思った私は、それまでのアカウントを消すことにした。

そして、以前は音楽情報を収集するアカウントとして使っていたものをメインアカウントにして、それまでよりは大きく中道寄りに立ち位置を変えてやり直すことにしたのだ。

しかし、しばらくすると立ち位置の近いアカウントに対して、新たな不満を持つようになってきた。


ということで、ここで前編終了です。

次回は後編として、「新たな不満」について述べていこうと思います。

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