記憶の玉手箱
私が持っている、大切ないくつかの箱。
子どもの頃、祖母に買ってもらった、オルゴールの箱。
蓋を開くと「赤とんぼ」のメロディが流れ出す箱。
蝶番は錆びてしまっているし、もうオルゴールを鳴らすこともないのだけれど、
箱は内側に赤いフェルトが張られた小さな箱になっていて、
クリスマスにだけ身につけるブローチを入れてあります。
引っ越しのたびに大切なものとして携えてきたボール紙の箱。
小学生の時にもらった小さなトロフィーが入っています。
トロフィーの脇に、クラスメイトがくれた鉛筆書きの手紙も入っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720770323456-pHuYBDkN97.jpg?width=1200)
色とりどりのマニュキアの小瓶が入っている箱。
シャーペンの芯やホチキスの針を保管してある箱。
録画した番組をダビングしたDVDを詰め込んだ箱。
映画やお芝居やコンサートの半券の入った箱。
遠くから、声が聞こえます。
そういう箱に入っているモノたちは、
もう用が済んでいて、もう要らないモノなのだから、
箱ごと捨てておしまいなさい。
でもね、私はそれを開けてみたいの。
仕舞い込んだまま、忘れてしまったものを、
消えてしまう前に、もう一度とり出して、そっと手のひらに載せてみたいの。
浦島太郎やパンドラが箱を開けちゃった時のように、
何か不思議な困ったモノたちが、たちのぼってきそうな気がします。
蓋を開けたら、あっという間に色褪せて戻せなくなるのかもしれないけど。
消えてしまう前に、もう一度とり出して、そっと手のひらに載せてみたいの。
ってなわけで、ちょっとずつ、書き始めますね。