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【FORMOSA!!ー空想世界の歩き方ー】梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで観てきました。

2024年12月6日のことです。梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで
西洋奇譚「FORMOSA!!ー空想世界の歩き方ー」を観てきました。
(以降「フォルモサ!!」と略記しますね)


感謝

最初に。
たった1枚のチケットを手に入れるという
困難なミッションを果たしてくれたくじ運のいい友達に、
心からの感謝を捧げます。


久しぶりの梅田

本題に入る前に、ちょっとだけ個人的な記録を確認しておきます。

大阪には出張で頻繁に訪れていたのですが、梅田には縁がなかった。「阪急イングス」など、目印にしていた建物がなくてびっくり。 でも、建物は変われども、線路と道の骨格は変わらず、でした。


この劇場には、およそ30年ぶりの再訪です。

大震災の直前1995年1月7日(土) のソワレと1月8日(日)のマチ・ソワで、
月組公演「ル・ミストラル」(いずれも久世星佳さん主演バージョン)を
観劇して以来になります。予想外に長くなってしまった歳月でした。

兵庫県宝塚市の宝塚大劇場にも梅田芸術劇場(梅芸)にも、行けてない。

サラリーマンとしての仕事が忙しくなってしまったこともありますが、
関西での観劇は、気持ち的にできなくなっていたのです。


ようやく今年になって、4月19日に大劇場で月組公演を観劇し、
そして今回12月6日に、梅芸にも戻ってくることができました。



どうにも記憶が混乱しています。

ひび割れた「花の道」のビジュアルの記憶があるのです。

でも、テレビで見た画像が記憶と混在してしまっている可能性もあります。

ここまでが、個人的な述懐です。

下りエスカレーターに乗っかって地下に降りて振り向くと、劇場入口です。

梅芸ドラマシティで過ごしたのは、およそ3時間。

自分自身がここで現実を生きているのか、よくわからないような、
そんな時間でした。


「フォルモサ!!」を観た!!


劇場ロビーにて撮影。縣くんの額に当たっているラインは、天井灯の映り込みです。

2024年12月6日(金)新幹線の新大阪駅から御堂筋線に乗り換えて梅田で降車。
ついに「フォルモサ!!」を観ました。

実際の偽書の日本語訳を読んで予習したときに、
ふと、その存在を身近に感じた、
”「ジョルジュ・サルマナザール」を名乗っていた青年”が、
舞台上に息づいていました。


もちろん、それを体感するためにたっぷり予習してから、
(wikiをはじめ、本以外にも色々チェックしました)
劇場に足を運んだわけですが、
的の真ん中にぶち当たった感じ(射抜かれた感じ)です。


お芝居は、こんな構造で組み立てられていました。

 苛酷な生い立ちの中で、
 自分の精神の健全さと、命を守るために、
 苦闘し続けた少年。
 修道院で学びに没頭し、語学の才能を磨いて、
 分厚い空想の世界をひとりで織りあげた、若いジャン。

 類い稀なる頭の回転の良さで、
 人生を突破していく青年へと成長する。

 彼のスタート地点には、
 自分という唯一無二の存在を、
 せめて認識して欲しいという、
 踏みつけにされている者としての切望があった。


(史料にサルマナザールの本名は残っていません)
(お芝居では、彼にジャン、という名前が与えられていました)


たぶん、仮に史実と比べることができたとしても、
大差ないでしょう。そう思えました。


ジャンをネタに金を巻き上げようとする者。
騙されてしまう人たち。
敵対する人たち。
アン女王の宮廷。
当時のロンドンの得体のしれない人々。
そっち側にうごめく怪しい登場人物たちの動きは、
お芝居ならでは味わうことのできる格別な楽しさでした。

ファクトとフェイクの識別問題をもう少し突っ込んだら、
強烈な社会風刺になったはずですが、
そこは、観客がそれぞれに受け止めれば良いことです。
少なくともこの日のわたしには、
その論点に振り向けるために余っている力は、無かったです。


一方で、物語にはきちんと酸素が供給されます。

騙り(かたり)が成立して、
作り上げたニセモノの世界が肥大化して、
ついに足元がおぼつかなくなったときに、
「サルマナザール」の殻を破るための一撃を喰らわせてくれる存在。

ジャンを救いだしてくれる存在。

そこから、
ジャンの魂のピュアな部分が蘇生していくプロセスが、
強く心に迫ります。


物語は、勧善懲悪の二項対立でもなく、
最後にとにかく愛が勝つ、例のパターンでもない。

ある青年が、自分の本質を探しあて、
望む未来に続く生き方を歩き始める、というテーマ

ファンタジックに展開されます。

いまの、伸び盛りの、悩み盛りの、縣くんに、
まさにぴったりの物語だったと感じました。


29人の、比較的若いタカラジェンヌたちが、
900人規模の劇場で、力いっぱいその情熱を発揮させていた。

この舞台を観ることができて、本当に良かったです。


舞台裏を妄想

会報誌「歌劇」の最新号(12月号)の記事「絵と文」を読むと、
「フォルモサ!!」の集合日は10月24日だったことが推定できます。
思わず指折り数えて日数を確認してしまった。

台本を渡されてから6週間で、このレベルの舞台ができるんですね。

その集中力を思うと、じーんと来てしまいます。


舞台を告知するビジュアルは、9月下旬には公開されていて、
本番の舞台でも、この衣装を使っていました。
メイクやヘアスタイルも基本的にはポスターと同じ、こんな感じでした。

ポスター撮影のために、間に合わせの衣装を使ったりしないで、
きちんと時間をかけて作り込んだのね、と、思いました。

ポスター撮影の時期は、おそらく、
縣くんがアンドレ役に身も心も捧げていたと思われる時期です。
制作側のスタッフの誠実な仕事ぶりを察して、嬉しく感じました。


作品の紹介文には「コミカルに描く」と表記されていましたが、
それは違いました。

笑いを解さないヤツと言われるかもしれませんが、
いや、あれは、コミカルなミュージカルではない。
事件は大きくて、主人公たちはコンプラ的に問題な行動に主体的に関与した。
それに伴う苦悩も大きかった。
向日性のある爽やかな作品でしたが、
コミカルな作品だと受け取るには、無理がありました。

多分、お芝居を作り上げていく過程で、
登場人物の心の動きに強く光が当てられるうちに、
必然的にシリアス方向に振れていったんだろうなと想像しています。



ジャンのクレド

第1幕幕切れと第2幕冒頭に歌われたアリアの歌詞を、
うろ覚えして帰ってきました。

12月8日(日)に配信を見ながら、そのうろ覚えのメモを修正しました。

言わば、ジャンのクレドです。
    ※クレド(Credo: ラテン語で、志、約束、信条)。
こんな歌詞でした。(ディクテーション間違ってたらごめんなさい)


  僕は雑草じゃない
  人目を惹く 花になりたい
  僕は、花を咲かせたい
  僕はここに生きているんだ 
  僕はここに生きているんだ

  綺麗な花じゃなくていい
  変わった花を咲かせたい
  必ず咲かせてやる
  その花を 僕は



歌が、セリフと、見事に混ざり合っていました。

主人公の心の大きな揺らぎと強さとを、しっかりと乗せた歌でした。


縣くんが舞台で発する言葉は、
聴く者の心の奥まで、まっすぐに貫いてきます。
意味を胸に届けるだけの力を持っている、そんな声です。
それは、力強い声を、10年かけて身につけてきたからなのだと思います。

女の子らしい可愛らしい声が出る声帯を持つ、縣くん。

「カッコいい男役」を目指して、
きっとものすごくたくさん努力しているに違いないです。

一心不乱に見つめてきたスターたちの背中から、
身近な先輩たちの姿から、
多くを学んできたのだと思います。

縣くんのために作られた、とてもチャーミングな歌でした。


拍手喝采です。


お芝居が終わって見上げた、梅田の空。


この記事は、予習をしながら妄想を膨らませていた記録です。
「どうしても読む必要があって、通読しました」と、書いてある。
予習してよかったです。翌々日に配信で復習できたことも幸せなことでした。



新幹線で戻ってきました。ただ、お芝居を観てきただけの、シンプルに幸せな一日でした。

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