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DIC川村記念美術館が1月下旬に休館する、というニュースに衝撃を受けて、考えました。

8月28日の夕方頃、複数の友達からLINEやメッセージが次々に入ってきて知った「DIC川村記念美術館が1月下旬に休館」のニュース。
何人もの友達の怒りと落胆の声。私にも、悲しみと共に意見が湧き上がってきました。何かに遠慮することなく自分の意見を言葉にしたい、という初心に照らして、
一気呵成に書こうと思います。タイトル画像は公式HPからお借りしたものです。



報道されたことの一例

普段は有料記事が多くてシェアしづらい「美術手帖」の記事が読めます。
このニュースのインパクトの大きさを語っていると思います。


Yahoo!ニュース、誰でも読める記事。投資案件なのでブルームバーグの記事で。


日経新聞の記事。これも、有料会員限定記事ではなく誰でも読めるようです。


「価値共創委員会」

DIC川村記念美術館が「価値共創委員会」という外部組織から、企業価値の向上のために規模の縮小または運営中止を助言されたのを受け、2025年1月下旬から休館することを決定した、というニュースです。

2024年8月27日付でDIC株式会社が対外公表した文書そのものを、
読むことができます。↓
pdf文章なのでサムネイルが出てきませんが、これが会社側の言い分です。

https://pdf.irpocket.com/C4631/Rhyn/DBJg/TKxD.pdf

価値共創委員会による「美術館運営」に関する助言並びにそれに対する当社取締役会の協議内容と今後の対応についての中間報告

DIC株式会社ホームページ「株主・投資家情報」サイトより

「価値共創委員会」とは、長期的な企業価値向上のため外部の視点から取締役会に助言する機関なのだそうです。
日経の記事をよく読むと、外国の投資ファンドが親会社に対してあれこれ要望しているようだなと推察できます。

資産効率の観点から運営方法の見直しが必要だと判断したのだそうです。このまま美術館運営を続けると、保有資産の資本効率の面から株主に対する説明責任を果たせない、のだそうです。

考えても、考えても、私には、
このような考え方に、納得できる理由を見つけることができません。

ここで言われている「企業価値」とは何でしょうか。

  印象として株主が受け取る利益を中心に捉えられているようです。

  美術館が「社会に美を提供する機能」の価値を、
     不当に低く評価しているようだと感じられます。

「価値共創委員会」にとっては美術館とは目覚ましい利益を計上することのできない厄介な資産なので、収蔵品を動産として売却して価格を確定させてしまえば資産効率を上げられるのだ、と認識しているのかもしれませんが、
社会に美術館を提供するという「企業価値」は、
保有資産として帳簿に書き込む数字をはるかに凌駕する高純度の輝きを放っている
ということについて、思いを巡らせていただきたいものです。

しかも、DIC川村記念美術館は、美意識のレベルの高い素晴らしいコレクションを擁した、世界的美術館と優に比肩できる水準の、非常に価値のある存在なのです。


私はDIC川村記念美術館が大好きです

繰り返します。
DIC川村記念美術館は、美意識のレベルの高い素晴らしいコレクションを擁した、世界的美術館と優に比肩できる水準の、非常に価値のある存在です。

美術愛好家を自認する一個人として、断言します。

レンブラントの素晴らしい自画像があります。
ジョゼフ・コーネルマーク・ロスコブランクーシ、などを、
確固とした意思と高い審美眼で収集した、錚々たるコレクションがあります。
庭園に配置されているフランク・ステラの「リュネヴィル」という巨大な作品の
緊張感、美しさも、特筆すべきです。
美術品だけでなく、緑の木々の中の空間そのものが、静謐で芳醇な存在です。
観る人の心に、意外な驚きと、美術と向き合う喜びが届く、
そんな作品に、時間に、体験に、きっと出会える美術館なのです。
それらと心ゆくまで対峙し、比類なき環境で堪能することのできる場なのです。
際立って美しい美術館なのです。

前段で、社会に美術館を提供するという「企業価値」と書きましたが、
このDIC川村記念美術館が提供している美のパワーは、
極めて高いエネルギーを持っているのです。行って体験してみれば、わかります。

この美術館には、訪れた人の心に、湿度と弾力を甦らせる癒しの力があります。
不安な世界にとって、今こそ必要な場所なのだと信じています。

だから、規模縮小または運営中止、その準備のため休館などということは、
断じてやめてほしい。
代替案としては、軽食提供施設を強化してインフラを整え、広報活動を活発化させてインバウンドにアピールして集客力を高めることが現実的だと思います。
極東の辺境の地にある行きづらい美術館として世界的な評判を高めるのです。
高速バスで成田に行く途中に立ち寄れるコースを作ってみてはどうでしょうか。
世界的に有力な資産家にバックアップを依頼しても良いのではないでしょうか。

美術を愛することのできない社会は、貧しい。

美術を蔑ろにして求める企業価値など、虚しい。

企業が企業活動として運営しているからには、最終的な目標は利益の確保であり、
財務諸表を立て直すことが何よりも優先されるのだ、
と反論されるのだとしたら、
そのような考えを声高に言うことで世の中が蝕まれてきた、
その悪影響について責任を取れるのか、と問い返したい。

素晴らしい美術館を保有していることで企業価値が損なわれるとは思えません。

あの美術館が失われてしまうかと思うと、
その取り返しのつかない喪失の大きさに、呆然とするしかありません。

DIC川村記念美術館の公式H Pです。

このHPの中に掲載されている、格調高い文章で綴られた
「DIC川村記念美術館について」↓を読んで、思わず涙ぐんでしまいました。
関係者の無念は如何ばかりでしょう。


フランク・ステラの「リュネヴィル」を探していたら巡り合った、アーティスト赤井太郎さんの情報サイト『アート×現場』の記事です。↓

DIC川村記念美術館の魅力の本質を、熱く、的確に語っていらっしゃると感じられました。「リュネヴィル」を撮影したショットも掲載されていますので、ぜひアクセスして、リアル作品の持つ迫力を想像してみてください。

この記事には2008年5月の様子が書かれているのですが、今回色々調べていたら、2013年10月にバーネット・ニューマンの「アンナの光」が103億円で売却されていたという情報を知りました。うう。今更ながらショックです。
ロスコ→ニューマン「赤の壁ドン2連発体験」(壁に対してドンするのではなく、壁からドンされる)は、すでに失われてしまっていたのですね。
思い出のよすがに「アンナの光」の絵葉書を買ったことも、悲しい思い出になってしまいました。


オンライン署名のご紹介

この投稿をここまで読んでくださった方にお願いします。

「DIC川村記念美術館の移転、閉館に反対します」
というオンライン署名が立ち上がっています。

このオンライン署名へのご参加を、是非ともご検討ください。



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