「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」展へ
東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を鑑賞してきました。
国内では約6年ぶりとなる大規模個展。
きっかけになった写真がこちら。
淡い光に照らされた子どもたちの姿に、文字通り釘づけになったのです。川内倫子さんのまなざしを追体験したいと思いまして、個展に向かいました。
思いがけず生と死を直視する機会となったのです。
また映像作品では日常の瞬間が連続的に映し出されます。儚さを深く感じ取じとられ、内省するよい機会となりました。
本展示の一部を、かんたんにご紹介しますね。
〈4%〉
球体や宇宙をイメージさせる被写体が、白を貴重とした空間に展示されています。
球体とは?
あえてearthではなくsphereとの表記されているのは?生命の循環や無限の広がりを表現していたのでしょうか。疑問をもったまま、私たちは展示の先へ進みます。
後の《M/E》へのイントロダクション。
〈 An interlinking〉
6×6の正方形フォーマットで撮られた作品。
プリントのサイズは大きく、真正面から没入し向き合うことができます。
そこに展示されているのは、ちいさな生命の姿。おだやかな日常の景色。
〈Illuminance〉~映像作品~
二つの画面で『Illuminance』の映像作品を同時に鑑賞できます。まるで写真集のページをめくるかのような錯覚。
少しずつ再生時間をずらしており、その再生時間はおよそ1時間!
映像を見て、はっとしました。
ついさっき鑑賞したシリーズ〈 An interlinking〉の写真は、めんめんと続く日常のいとなみをきりとった作品であったと気づくのです。
例えば、女の子が道を下方へと歩いて行く写真。
同じ映像作品の中で、二度、同じ構図の写真が映し出されます。女の子はすでに下方へ消え去り、映されてされた写真は道路だけ。
写真の前後に「物語」がある、と気づきます。
この映像作品を鑑賞したあと、もう一度入口に戻って本個展を鑑賞しなおしました。
もう一度、映像に映された景色を追体験するために。
流れさった日常を、もう一度目にやきつけるために。
切り取られたモチーフ〈Illuminance〉より
ゆらめくカーテン
雲にかかる虹
逆光に光るすすき
揺れる木々
打ち上げ花火
ランニング大会のランナー
蝉やカマキリの亡きがら
川のせせらぎ
たなびく雲と満月
ドライブの車窓
地面に降りそそがれるあられ
空高くのびる、ひこうき雲
さばかれる魚
空に放たれたシャボン玉
木々とこもれ陽
寄せてはかえす波
皆既日食の一部始終
しんしんと降る雪
スクランブル交差点
満開の桜
雨とマーガレット
金魚すくいの屋台
飛び立つ鳥
料理人の手さばき
揺れる洗濯物
海遊する魚
わたあめ
空に舞うゴミ袋
新生児の寝顔
蝉の抜け殻
きえゆく花火
ろうそくの炎
〈M/E〉
大自然の原風景と、日常の風景が交差する空間。
どちらも母なる地球上の出来事であることを思い出させてくれる作品です。
映像作品〈Illuminance〉を鑑賞した後だったので、すでに日常と非日常を行き来している錯覚。
そこに展示されていた作品は、絶えることのない人間のいとなみと大自然のいとなみ。
かわいらしい子どものしぐさから、何万年もの年月をかけてつくられた氷河の有り様まで。
分けへだてられることなく、そこに存在していました。私たちの意識の中でつながっていくように感じられます。
まとめ
川内倫子さんの個展を鑑賞し、その一瞬を切り取った作品に深く感銘を受けました。彼女の作品は、日常の儚さや命の循環をテーマに、とても繊細に描かれています。展示された作品群は、生と死、身近なモチーフと大自然、そして生命の偉大さを表現しており、その美しさに圧倒されました。
特に、母親のまなざしを通して撮影された子どもの作品は、幸せに溢れていて、見る人にとても温かい気持ちを抱かせました。この作品を見たことで、帰宅後も日常の中に希望を見いだす良い機会となりました。
写真作品と、連続的に映し出される映像作品の両方に癒やされ、心穏やかになりました。ありがとうございました。
*******
2022年12月18日(日)まで開催中。
事前予約は不要です。
当日に直接東京オペラシティ アートギャラリーへどうぞ。
アート鑑賞を通して、リフレッシュできますように。